どこのレジャー施設に行っても、なぜか「インスタ映えフード」に出くわすワケ
レジャー施設には、キャラクターを模したフードなどが多く販売されています。いったいなぜでしょうか。文殊リサーチワークス・リサーチャー&プランナーの中村圭さんが解説します。レジャー施設はインスタ映えフードの宝庫 インターネット上は今や、インスタ映えする画像で溢れています。ところで皆さんは、テーマパークや動物園、水族館といったレジャー施設がインスタ映えフードの宝庫ということをご存知でしょうか。 当社(文殊リサーチワークス)が首都圏居住者を対象に毎年実施しているインターネットアンケート(サンプル数900)で、レジャー施設の土産物やテイクアウトフード、レストランメニューで、特に面白く、印象に残ったものや、インスタ映えフードをヒアリングしています。今回、その中からいくつか興味深いフードをご紹介します。 テーマパークは入場者の規模が大きいこともあり、アンケートに答えた多くの人からインスタ映えフードが挙げられました。テーマパークには可愛いキャラクターが存在し、昔からキャラクターの形を模したものや、キャラクターが描かれたフードがたくさんありますが、よりインパクトのある色で、シンプルで可愛いものが挙げられています。 リトルグリーンまん。360円。スーベニアケース付き980円(画像:東京ディズニーランド ソフトランディング、パン・ギャラクティック・ピザ・ポート、東京ディズニーシー マンマ・ビスコッティーズ・ベーカリー cDisney/Pixar) 東京ディズニーランド(千葉県浦安市)の「リトルグリーンまん」はディズニー映画「トイ・ストーリー」に登場する宇宙人「リトル・グリーン・メン」をイメージした緑色の饅頭。中のクリームはカスタード、ストロベリー、チョコレート味の3種類で、通常のカップ販売もありますが、スーベニア(記念品)付きにすると劇中のクレーンゲーム型のケースが付いてきます。 「マイクメロンパン」は同じくディズニー映画「モンスターズインク」の人気キャラクター「マイク・ワゾウスキ」の顔をイメージしたメロンパン。大きな目玉に半月型の切れ込みが入って、マイクのチャーミングな笑顔になっています。そのほかにも、東京ディズニーシー(同)のエビのすり身が入ったドナルドダックの「うきわまん」もシンプルな可愛さで人気です。 サンリオピューロランド(多摩市落合)も、インスタ映えする印象的なフードが多いテーマパークです。7月12日(金)からは、肉とデザートをテーマにした、「ピューロ夏フェス2019」の限定メニューが始まっています。「シナモンのとり天☆空カレー」は空で遊んでいるシナモロールをイメージした青いカレー。夏空に浮かんでいるのはふんわりとしたとり天の雲です。 「こぎみゅんとお肉仲間のなかよしカレー」はピンク色のカレーで、コギムコ族のからあげ兄弟、ぎょうざくん、エビちゃん付き。いずれもインパクト大です。また、通常メニューの「ぐでたまのローストビーフ丼」は、生卵の黄身にぐでたまの顔が書いてあり、ローストビーフを幾重にもまとって、まさに「ぐでたま状態」になっています。 コミュニケーションツール化する「食」コミュニケーションツール化する「食」 動物園・水族館も、小さい子ども連れファミリーの定番レジャー施設として親しまれてきたため、お土産やテイクアウトフードに、子どもにもわかりやすく可愛いものが多い傾向にあります。 そもそも、動物園や水族館は人気者の生き物が多数存在し、そのような生き物をモチーフにしてインパクトのあるテイクアウトフードをつくれば、当然ながらインスタ映えするものが生まれてくるでしょう。 新江ノ島水族館(神奈川県藤沢市)では可愛い生き物のパンが注目です。「カメロンパン」はカメを模したメロンパンで、メロンパンのクッキー生地でカメの甲羅を表現。生地はプレーン、抹茶、いちごの三色。 グソクムシパン。260円(画像:新江ノ島水族館 オーシャンカフェ)「グソクムシパン」は人気のグソクムシをイメージ。ゴマを練り込んだ生地をかぶせた黒いパンで、中にはゴマあんが入っています。その他にも「カレイの形のカレーぱん」などさまざまで、いずれも思わずインスタグラムに上げたくなるような可愛さです。 食はSNSに取り上げられやすい特徴があります。インスタグラムを見れば、「自撮り」以外は食べ物の画像が多いことが分かるでしょう。食には「おいしい」「身体に良い」と言った価値観がありますが、近年そのいずれにも属さない新たな価値観が生まれています。 それはSNSの普及や高度化する参加・体験ニーズを背景に、食をコミュニケーションツールとするものです。「味わう」ことよりも「体験する」ことに意味があり、その体験を記録し、発信・共有することが目的となっています。この行動原理はレジャーや観光のそれに近いと言えるでしょう。食はまさに参加・体験型エンターテインメントと位置づけられるのです。 そのような視点で見ると、食は参加・体験ニーズに非常に適しています。工作や運動は能力によって個人差が出ることもありますが、食を体験すること、すなわち食事をすることは、子どもから老人まで誰にもできることであり、特別な技術や体力を必要としません。その分、間口が広いと言えるでしょう。 食は誰にとっても身近で、それぞれに関心のあるものです。また、食は味覚、視覚、嗅覚、触覚など、さまざまな感覚を使って体験することができ、より深い理解、共感を得られます。 食はレジャー施設と親和性が高い食はレジャー施設と親和性が高い 可愛いフードや奇妙なフードといった、インパクトのある「食」には非日常性があり、体験することはSNS上の話題として価値があります。さらに今回挙げた事例でも見られるように、自分で調理したり、オリジナルにアレンジしたりと楽しみ方の幅も広がっていきます。 食を参加・体験型エンターテイメントとして位置づければ、それはレジャー施設と親和性の高いものと言えるでしょう。インスタ映えと言う言葉が生まれる以前から、レジャー施設においてはインパクトのある食による成功事例がいくつか見られます。 山形県の鶴岡市立加茂水族館では、「クラゲソフトクリーム」がテレビなどのマスコミに取り上げられたことで、クラゲの水族館として全国に知られることとなりました。 また上野動物園などの動物園は、土産物として販売された甘納豆菓子「ゴリラの鼻くそ」が、そのキャッチーなネーミングとビジュアルから話題になり、動物園に来園する動機の拡大に繋がりました。この現象を受けて全国の動物園や水族館で、さまざまな生き物の「鼻くそ」や「うんこフード」が拡大しました。 テーマパークや動物園、水族館などのレジャー施設において、このようなフードを開発することで話題性の拡大、ブランディングの向上が期待できます。特にレジャー施設のメインターゲットである若い層や女性へのアピール度が高く、ネット上で情報拡散しやすいため、積極的に商品開発する方向性にあります。 今後も施設の特色を活かした、可愛くて面白いインスタ映えフードが次々に登場することでしょう。2019年の夏、レジャー施設に遊びに行く際は、このような食を探してみてはいかがでしょうか。
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