ピンクの表紙が目印。女性視点から作成された「防災ブック」 大切な命、守るのはこの1冊から
日本を襲う災害があいつぐなか、防災の備えは誰にとっても大切なものですが、東京都は現在、「女性の防災」も重視していて、ハンドブックを無料配布したり、女性向けの防災セミナーを開いたりしています。「普段からの備え」女性目線でわかりやすく 地震や台風、集中豪雨など、あいついで日本を襲うさまざまな災害。それらに対する備えや被災時に役立つ知識などを女性目線でまとめた防災ハンドブックがあるのをご存知でしょうか? 東京都発行『東京くらし防災』の電子書籍版をスマートフォンで表示させたところ(ULM編集部撮影) それは、東京都が無料配布している「東京くらし防災」です。目印はピンク色の表紙で、コンパクトなB6判164ページの冊子です。東京都内の公共施設など約3700か所(2018年8月現在)に設置するほか、スマートフォンアプリ「東京都防災アプリ」(iOS、Android ともに無料)内でも閲覧可能。アマゾン「Kindle Store」などの電子書籍ストアでも無料でダウンロードできます。 内容はイラストや図をふんだんに使った親しみやすい構成。「普段からの備えが大切なことは分かるけれど、具体的にどうすればいいの?」といった疑問に応え、今すぐ簡単に始められる備えや、災害時に身を守るための知識などを分かりやすく解説しています。 冊子の冒頭で、「今すぐにできる防災」を15のポイントにまとめている(東京都発行『東京くらし防災』 12~13ページより) 例えば、「大判のストールはマスクや包帯代わりに、避難所では間仕切り代わりに使える」「普段からママバッグの中身を補充しておけば、そのまま赤ちゃんの非常袋として使える」「犯罪防止のため、避難所では単独行動を避ける」など、女性の視点に立った「防災」の知識がたくさん。 東日本大震災や熊本地震などの経験や被災者の声も紹介され、冊子を読み進めていくと「災害が起こるとどんな困り事が出てくるのか?」を知ることにもつながります。災害に対する想像力を働かせながら、備えの大切さを知る機会にもなるでしょう。 地震が起こった時にも安全なお部屋のレイアウトや食器の収納方法なども紹介(東京都発行『東京くらし防災』 34~35ページより)「東京くらし防災」は2018年3月に都内各所で設置開始。都民などから大きな反響があり、初版の100万部に加えて25万部を増刷したといいます。 防災は全ての人にとって「当たり前」 この「東京くらし防災」の作成にあたって、さまざまな分野で防災に携わる6人の女性委員からなる編集・検討委員会が開かれました。委員をつとめた、一般社団法人 防災ガールの田中美咲さんは次のように話しています。 「本来、災害や防災にセクシャリティは関係なく、全ての人にとって必要なものですが、女性は特に体力面や生理・妊娠といった体の変化が男性と比べて多いこともあり、『女性目線の防災』を冊子にまとめるのはとても良いことと思いました。この冊子には『防災に対して何をしたらいいんだろう?』と思った時にヒントになることが詰まっていると思います」 災害大国である日本では、次の災害はいつ来るか分かりません。「防災の重要度・緊急度が高まっているからこそ、『防災があたり前』の世の中をつくっていくことが大切です」と田中さんは強調します。 女性に「防災」を知ってもらう、その先にあるもの冊子の後半では、避難所で起こりうるトラブルなどについても詳しく紹介している(東京都発行『東京くらし防災』 136~137ページより) 東京都はこの「東京くらし防災」の配布とあわせて、女性の視点を防災活動に反映できる「女性の防災人材」を育成しようと、それぞれの自治体や企業などと連携しながら活動を進めています。 なぜ女性の防災人材が必要なのか? 東京都総務局総合防災部・事業調整担当課長の井上智美さんは次のように話します。 「過去の災害では、避難所運営などの意思決定の場に女性の声が届きにくく、避難所での着替えや授乳といったさまざまな場面で女性の視点やニーズが反映されないという課題がありました。防災活動のなかで女性の立場から声を上げていける人材が今こそ必要とされています」 東京は都心部に企業などが集中し、昼間に人口が多くなる特性があることから、女性の防災人材の育成には、「職場編」「地域生活編」のふたつの視点でさまざまなセミナーや研修会を開いていくといいます。 「まず基礎的な防災の知識を学ぶセミナーを開いていきます。そこから、職場や避難所などでの多様なニーズへの対応へとステップアップしていきます。数年をかけてしっかりと取り組んでいきたいと思います」(井上さん) 井上さんによると、女性の防災人材を育てる活動には、「防災に女性目線が必要だということを、男性にも知ってもらいたい」という思いも込められているといいます。 いつ来るかわからない防災への備えは待ったなし。誰でも気軽に手に入れられる「東京くらし防災」は、自分自身と自分の大切な人を守るために行動を始めるきっかけになるでしょう。 ●東京くらし防災 ・冊子版:東京都内の郵便局、銀行、消防署、図書館、児童館など約3700か所の各施設に設置。設置場所は「東京都防災ホームページ」で確認できます。 ・スマートフォンアプリ:iPhone、iPadは「App Store」、Androidは「Play ストア」から”東京都防災アプリ” で検索。 ・電子書籍版:Kindle Store、iBooks Store、Yahoo!ブックストア、dブック、Reader Store、楽天Koboなどの電子書籍ストアで無料ダウンロード可能。
- ライフ