人気ベーカリー「HOKUO」が今月、全店閉店へ! そこには“出店場所”ゆえの苦悩があった
新宿や池袋など、首都圏の駅ナカまたは駅近くに39店舗を構える人気の手作りパン専門店「HOKUO」が2022年2月をもって、全店閉店となります。いったい、なぜでしょうか。「HOKUO」は新宿や池袋でも人気のパン屋 小田急電鉄は2021年12月、完全子会社の北欧トーキョー(本社:神奈川県)が運営するパン販売店「HOKUO」全39店舗を、2022年2月末に閉店することを発表しました。 HOKUOは本社のある神奈川県を中心に、東京、埼玉に展開しているベーカリー。都内では、新宿ミロード店(小田急線新宿駅新宿ミロード1階)や池袋西口店(池袋駅西口メトロポリタンホテル前)、エキュート立川店(JR立川駅東改札内)など、 人通りの多い立地の店舗が多いため、買ったことはなくとも、目にしたことがある人は多いのではないでしょうか。 手軽でおいしいことから朝食に人気のパン(画像:写真AC) さくさくのメロンパンや創業当時からの定番商品であるハムロール、甘ずっぱいリンゴの風味がたまらないアップルパイなど、お店には常時、約100種類ものおいしそうなパンが並び、特に駅の利用客から好評を博しています。 そんな人気のベーカリーがなぜ、全店閉店という事態になったのでしょうか。 “北海道のパン屋”が“駅の人気ベーカリー”に そもそも、HOKUOを展開する北欧トーキョーは、札幌市のベーカリー「北欧」と小田急グループの合弁会社として創業した会社です。 北欧は、バブル真っただ中の1980年代から1990年ごろにかけて、北欧ブランドを冠したベーカリーを次々と出店。しかし、バブル崩壊で経営が悪化し、ついに経営破綻。事業を大幅に縮小せざるを得なくなってしまいました。 その後は、北欧の遺志を受け継ぎ、北欧トーキョーが小田急グループの子会社として、HOKUOの店舗網を拡大。自社沿線の駅ナカに限らず、JR東日本や東京メトロの駅、またはそれらが運営する商業施設にも店舗を展開するなど、首都圏の“駅の人気ベーカリー”として親しまれるようになりました。 駅ナカの店舗や改札を出てすぐの店舗は通勤客をはじめ、駅の利用客に人気(画像:写真AC) もともとは北海道発のベーカリーであることを知っている人は少ないのではないでしょうか。ちなみに、筆者の北海道出身の友人は「地元で人気だった北欧(HOKUO)を新宿で見つけた!」と大変感激しておりました。 “駅にある”ことがあだとなり…“駅にある”ことがあだとなり… 駅の人気ベーカリーとして一躍有名になったHOKUOにとって、2020年からのコロナ禍は完全に逆風となってしまいました。 リモートワークが推奨されたことにより、通勤客が減少、さらに外出自粛によって、通常の利用客も減少。駅を訪れる人が急激に減ったため、コロナ前は年間40億円台後半で推移していた売上高が、2020年には約22億円と半減してしまいます。その後、やや回復しましたが、売り上げは結果的にコロナ前の6割程度にとどまっているといいます。 利用者が激減し、閑散とした駅の様子(画像:写真AC) パン業界としてはもともと、コンビニなどの手軽で安価なパンの出現や昨今の高級食パンブームに代表されるような、他ベーカリーとの競争激化などがありました。そこにコロナが拍車をかけた形となり、HOKUOは売り上げが大きく落ち込んだことで、事業撤退に踏み切ることになったのです。 HOKUOの今後は HOKUOの全39店舗閉店後は、そのうち10店舗が大手ベーカリー「DONQ」を運営するドンク(本社:神戸市)に譲渡されることが決まっています。ドンクは2022年3月下旬以降、引き継いだ店舗の営業を開始。小田急はドンクと業務提携し、今後、小田急沿線の商業施設などへの出店を進めていくとしています。 かつての人気ベーカリーの未来は…?(画像:写真AC) 海老名店(小田急線海老名駅西口改札前)や本厚木ミロード店(小田急線本厚木駅東口改札前)など、10店舗 がDONQとして“再生”されることになりますが、そのほかの29店舗については現在未定とのこと。 いつかまた、東京のどこかで、懐かしのHOKUOに出会える日はやって来るのでしょうか。筆者の北海道出身の友人が、地元の懐かしい店と感動の再会を果たしたように。
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