金町駅北口、大型再開発で「タワマン」建設へ――「都内唯一のあの施設」はどうなる?
常磐線などが乗り入れる金町駅の北口には、50年近く続く「都内唯一」の名物施設があります。金町駅周辺の大型再開発とその名物施設の行方について、都市商業研究所の若杉優貴さんが解説します。金町駅北口の大型再開発始動――姿を変える「理科大学通り」 古くは鎌倉街道の要衝として栄え、江戸時代には水戸街道の川関所が置かれたことで栄えた金町。 近年、金町駅南口周辺では再開発が進み、街並みが大きく変化しつつあった一方、北口は昔ながらの商店街が残る街として知られ、また2013年の東京理科大学葛飾キャンパス開設以降は学生向けの店舗も増えつつありました。 近く大型再開発が着工される金町駅前商店街・理科大学通り。(開発地域は写真左側) 古くからの商店街として知られ、近年は学生向けの店も増えています。 その金町駅北口が「東金町一丁目西地区再開発」により大きく生まれ変わろうとしています。果たしてどう変わるのか、そして「都内唯一」のあの名物施設はどうなるのか――。 再開発で消える老舗ヨーカドー、屋上にある「都内唯一」とは? 今回、再開発が行われるのは駅北口の西側で、金町駅前商店街・金町銀座商店街の一角を形成する「理科大学通り」にある「イトーヨーカドー金町店」とその周辺エリア。再開発面積は約3ヘクタールと広大です。 再開発エリアの多くを占めるイトーヨーカドー金町店は1973年7月に開店。23区内に現存するイトーヨーカドーの総合スーパーとしては屈指の老舗店舗でした。2008年にはセブンアイグループのホームセンター実験店「セブンホームセンター」の1号店が出店したことでも話題を呼びましたが、現在は普通の総合スーパー業態に戻っています。 イトーヨーカドー金町店。再開発のため閉店する予定。 イトーヨーカドー金町店の店内は至って「普通のスーパー」ではあるものの、普通ではないのはその屋上。常磐線の車内からも看板が見えるためご存知の人も多いと思いますが、このイトーヨーカドー金町店は屋上全体に「自動車学校の教習コース」が設けられているのです。 実は、この自動車学校「金町自動車教習所」はイトーヨーカドー出店前からあったもので、1960年代の航空写真ではこの地の「地面」に自動車学校のコースが設けられていることが確認できます。その後、自動車学校は1973年のイトーヨーカドー開業に伴ってイトーヨーカドーの3階に移動。「日本初の屋上自動車学校」となりました。東京都内では、スーパーの屋上にある自動車学校はここが唯一です。 イトーヨーカドーの屋上は「自動車学校」だった! この看板の下付近にはかつてあった貨物線の痕跡も残されています。 ちなみに、こうした「商業施設の屋上に設けられた自動車学校」はその後全国各地に設けられ、現在も札幌市、横須賀市、福岡市などで見ることができますが、いずれも狭く限られた敷地を利用しているため「免許を取るのが難しい」と噂されるものも。筆者はイトーヨーカドー金町店の屋上部分に入ったことはありませんが、難コースに悩まされた卒業生もいるのではないでしょうか。 また、駅北口には2003年まで葛飾区新宿(にいじゅく)の三菱製紙中川工場に至る貨物専用線があり、イトーヨーカドーの裏側には未活用の廃線跡も残っていますが、これも再開発により「見納め」となりそう。ちなみに、現在この三菱製紙跡は東京理科大学葛飾キャンパスや公園などとして活用されています。 「タワーマンション」核の建物に――ヨーカドーと自動車学校はどうなる?「タワーマンション」核の建物に――ヨーカドーと自動車学校はどうなる? それでは、再開発によって金町駅北口はどう生まれ変わるのでしょうか。 「東金町一丁目西地区再開発」の中核事業者である三菱地所グループと三井不動産グループによると、再開発は1期と2期に分けて行われ、まず最初に1期部分としてヨーカドー西側にある平面駐車場付近に地上5階・地下2階の低層棟を建設。その後、2期部分として現在のイトーヨーカドー周辺に地上40階・地下2階、高さ約150メートルの高層タワーマンション(約860戸規模)を建設する計画。着工は2022年度中、総事業費は約700億円で、すべての完成は2030年度を予定しています。 「東金町一丁目西地区再開発」地区周辺のまちづくり図(三井不動産レジデンシャル)。 イトーヨーカドー金町店は、この再開発に先駆けて2022年9月4日での閉店を発表。そして、金町名物ともいえる都内唯一の屋上自動車学校も再開発で見納めになる…かと思いきや、実は再開発計画によると自動車学校は低層棟の屋上に「復活」する予定。今後は日本唯一「タワーマンションの付け根にある屋上自動車学校」と呼ばれることになるかも知れません。 「東金町一丁目西地区再開発」イメージ図(三井不動産レジデンシャル)。 屋上自動車学校は新たなかたちで復活を遂げる予定。 一方、この低層棟には商業施設が設けられることも決まっているものの、イトーヨーカドーが再出店するかなどといった具体的な店舗構成については2022年4月時点では発表されていません。 商業施設部分について、三菱地所グループと三井不動産グループは「大型店や専門店からなるモールを整備する」としており、金町地区では最大規模の商業施設となる計画。商業施設運営を得意とする事業者だけに、完成後には地域の新たな大型ショッピングスポットとして話題を呼ぶことになるでしょう。 イトーヨーカドー金町店は49年もの長い歴史に幕を下ろすことに。(撮影:藤井瑞起)。 金町駅周辺では、イトーヨーカドー周辺地区以外においても大型再開発が検討されている街区があります。庶民的な商店街で知られる街も、近い将来にはその姿が一変するかも知れません。 庶民的な商店街や団地が並ぶ金町駅北口。
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