グニュグニュした豚バラがたまらない 味のルーツは築地の名店 東日暮里「すずき」のニラそば【連載】東京レッツラGOGO! マグロ飯(5)
都内散歩と食べ歩きにくわしいフリーライターの下関マグロさんが、都内一押しの「マグロ飯」を紹介します。店内には所せましとカレンダーが 食べ歩きをしていると、「どんな飲食店がいいのか?」という質問をよく受けます。ポイントがいくつかあるのですが、ひとつは「その店でしか食べられないメニューがあること」です。オリジナルで、よそにはない味ならぜひ一度は行って食べてみたいですよね。 もうひとつは、「長く営業している店」です。長く営業しているというのは、必ずいい点があるので生き残っているわけです。目の前に新しめの店と古めの店があったら、筆者はいつも古めの方に入ることにしています。 そんなオリジナルメニューを出している「町中華」(中華料理などをはじめとする庶民価格のメニューがたくさんある食堂の総称)のなかで、今回は「すずき」(荒川区東日暮里)をご紹介しましょう。 ニラそば(750円)。大量のニラに片栗粉でコーティングされた豚バラ肉がユニークな食感(画像:下関マグロ) このお店は駅でいえばJR常磐線「三河島駅」が最寄り駅ですが、JR山手線の日暮里駅からも歩けます。ちなみにわが家からは歩いて25分。散歩しながらぶらぶらと出かけるにはちょうどいい距離です。 もともと南千住方面へ歩いているときに何度か見かけており、チェックはしていたのですがなかなか入る機会がなかったのです。ある夏の暑い日、やっとうかがいました。 住宅街の中に「すずき」はあります。店舗の外観はまさに「ザ・町中華」という感じで素敵。店に入ると、カウンターとテーブルが4つ。店内には所せましとカレンダーが貼ってあります。 なぜこんなにカレンダーがあるのかと店主の鈴木栄八さんにうかがうと、「いただいたカレンダーなので、選べないんですよ」とのこと。もらったカレンダーをすべて貼っているんですね。いやぁ、これだけで悪いお店じゃないっていうのがわかりますよ。町中華では鶏ガラや豚ガラなどを使ってスープをとりますが、いちばん重要なのが人ガラなのではないかと思います。 「湯飯」の読み方は?「湯飯」の読み方は? 大きなコップで氷と透明の液体が提供されました。あれ、酎ハイを注文したわけじゃないんだけどなと、飲んでみると水でした。なぜこんなに大きなコップで提供しているのでしょうか。 鈴木さんに聞いたことがあります。答えは「ひとりでやっているんで、いちいち水を注ぐのがたいへんでしょ、だから多めに入れているんですよ」とのこと。実際ひとりで切り盛りされているので、お客さんが多いときなど注文から提供まで時間がかかることがありますが、常連客のみなさんは、文句も言わずに待っています。 取材時は暑い日だったので、冷やし中華を最初に注文しました。大きな短冊になっているのが目に入ったからです。 住宅街の中にたたずむ「すずき」。その店舗ファサードはまさに「ザ・町中華」(画像:下関マグロ) とても丁寧につくられていて、とにかく美しい。冷やし中華を食べながら、あらためてメニューを眺めていると、「スタミナバツグン!」というキャッチコピーとともにあったのが、赤文字で書かれた「ピリカラ湯飯」(600円)に気がつきました。こ、これはオリジナルメニューじゃないですか。 次回はこれを注文しようと、再訪問をしました。が、「湯飯」ってどう読めばいいんでしょう。町中華なので湯麺(たんめん)と同じような感じで、湯飯(たんはん)なんでしょうか。わからないので、鈴木さんに聞いてみました。 「ああ、それは、ピリカラ“ゆめし”ですね」 とのこと。湯飯(ゆめし)、めちゃくちゃ和ですね。中華なのに。とにかくいただいてみました。 シューマイもお勧めシューマイもお勧め 提供されたピリカラ湯飯。当然ながら初めて見るビジュアルです。カラフルですね。肉や野菜も入っているのですが、ナルト、かまぼこ、カニカマなどが目を引きます。溶き卵も入っているので、いろいろな色がありますね。 スープをいただいてみると、塩味のスープ。まさにタンメンのようなかんじですが、ラー油が入っていて、これがピリカラ成分なんです。ご飯もたっぷりでボリューミーでした。 何度か通っていろいろなメニューをいただいたのですが、あるときかなり酔っぱらった常連客がいたので、こちらのお店のおすすめはなんですかと聞くと、「シューマイがお勧めですよ」とおっしゃる。 なるほど、さっそくシューマイを注文してみました。「ここのシューマイはね、ソースをかけて食べるとおいしいですよ」と教えてくれる常連客。たしかにシューマイとともにソースが提供されています。いただいてみると、たしかにおいしいです。 シューマイ(400円)。1個100円でテイクアウトも可能(画像:下関マグロ) 聞けば、鈴木さんは築地の名店「やじ満(やじま)」(現在は豊洲に移転)で22年間働いていたそうです。だからシューマイは「やじ満」さんとほとんど同じなんだそうです。 鈴木さんは2003(平成15)年に独立して、この場所で創業しました。店内には「やじ満」を辞めるときにお店の人たちによって書かれた寄せ書きの色紙があります。辞めていく鈴木さんに温かい言葉を綴っていて、彼がいかに店のスタッフに愛されていたのかがわかります。 ねっとで話題の「ニラそば」ねっとで話題の「ニラそば」 筆者は気に入った店には何度も通い、メニューをコンプリートするタイプなのですが、「すずき」のメニューもかなり食べてきました。あと、数品を残すところで鈴木さんが 「マグロさん、ニラそばはどうですか。今ね、ネットですごいことになっているんですよ」 とネットなど見ない鈴木さんが言うのです。それではいただいてみましょうか。 大量のニラにキクラゲなどが入っています。そしてなんともユニークなのが片栗粉でコーティングされた豚バラ肉です。グニュグニュした食感がホルモンのような味わいになっています。ボリューミーな一杯です。これもかなり、オリジナリティが高いメニューではないでしょうか。 実はこれも、かつて鈴木さんが働いていた「やじ満」のニラそばと同じような味だとネットで評判になったんだそうです。そのため、今はニラそばとシューマイをセットで注文する人が多くなっているのだそうです。 栃木県鹿沼市出身の鈴木栄八さんがひとりで切り盛りしている(画像:下関マグロ) ぜひ、散歩がてら「すずき」に行ってみてはいかがでしょう。また、筆者が「すずき」を見つけたように、あなたもぜひ歩いて行けるいい町中華を探してみるのもいいでしょう。
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