新幹線vs飛行機 「東京~大阪」の移動はどちらが便利でオトク? 徹底比較してみた
出張や旅行などで多くの人が移動する東京~大阪間。その移動の際、新幹線と飛行機、どちらがオトクなのでしょうか。ジャーナリストのシカマアキさんが解説します。価格競争「新幹線vs飛行機」 東京と大阪は、今も昔も人の移動がとても多い区間です。 東海道新幹線の出発駅である東京駅(画像:シカマアキ) 実際のところ、なんとなく新幹線が便利というイメージが強い一方で、 「絶対に飛行機」 という人も少なからず存在します。 近年登場した格安航空会社(LCC))は高速バス並みの運賃で、かつ移動時間が短いため、話題となりました。 結局、この区間の移動はどの交通機関が便利なのでしょうか。東京と大阪を20年以上移動し続ける筆者(シカマアキ、ジャーナリスト)がデータと自らの経験を交え、それぞれのメリットを紹介します。 利用者数は新幹線の圧勝 まずは、新幹線と飛行機の利用者数比較から。実際にどのくらいの人が利用し、どちらの割合のほうが多いのでしょうか。 JR東海が公表する「ファクトシート」2021年版で、東海道新幹線のマーケットシェア(対航空)が公表されています。このマーケットシェアは、国土交通省の令和元(2019)年度旅客地域流動調査をもとに、JR東海が算出したデータです。 ・鉄道:86%(1日あたり250本、臨時列車除く) ・航空:14%(1日あたり98便) 東海道新幹線のマーケットシェア。対航空(画像:JR東海) つまり、全体の約9割の人が東京と大阪の移動に新幹線を利用していることが分かります。飛行機は1割強。数字だけを見れば、圧倒的に新幹線の利用者が多いのです。 なお、東京圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、茨城県)から大阪圏(大阪府、京都府、兵庫県、奈良県)までの移動人数は1日あたり14万9000人となっています。 移動時間は飛行機が圧倒的に速いが……移動時間は飛行機が圧倒的に速いが…… 次に、東京 = 大阪間の移動時間は、新幹線と飛行機でどのくらい違うのかを比べます。 ・新幹線:2時間21分 ・飛行機:1時間5分(約2時間40分) これもJR東海「ファクトシート2021」によると、最短の移動時間が上記のように公表されています。ただし、飛行機には「市中空港間のアクセス時間等を含む時間」も併記しています。 京都駅の新幹線ホーム。新大阪でなく京都を利用する大阪府民も多い(画像:シカマアキ) 新幹線は、東京駅や品川駅から切符を買って改札を通過し、ホームに降りると、すぐ来た新幹線にそのまま乗ることができます。京都駅や新大阪駅などでも同様です。 一方、飛行機は ・空港までの移動時間 ・搭乗手続き(預け手荷物がない時は省略できることも) ・保安検査 などがあります。実際に乗っている時間は短くても、その前後でのさまざまな時間や費用も加わります。 ちなみに、東海道新幹線が開業した1964(昭和39)年当時、東京~新大阪間は4時間かかりました。 運賃が一律の新幹線と変動する飛行機 今度は、東京 = 大阪間における、新幹線と飛行機の運賃を比較します。LCCと高速バスも、参考までに載せます。 ・新幹線:1万4720円(のぞみ普通車指定席)/1万700円(ぷらっとこだま普通車指定席) ・飛行機:2万5700円(大人普通運賃)/1万6250円(ビジネスきっぷ)/7700円~(ウルトラ先得) ※JAL、通常期 ・LCC:3590~1万8390円(シンプルピーチ) ※peach 東京(成田) = 大阪(関西)線 ・高速バス 3900円~ 新幹線は、当日でもこの運賃です。のぞみより時間がかかるこだまの割引運賃などもあります。ただ、全体的に飛行機の早期割引ほど安くなりません。 飛行機は普通運賃がとても高いです。しかし、この普通運賃で乗る人はほぼ皆無。早めに予約するほど安い運賃か、出発1日前まで買える「特割1」などを購入する人が多いです。 また「ビジネスきっぷ」はJALとANAともに同じ運賃で、往復分同時購入やカード会員のみなどの制限はあるものの、出発当日でも買えるため、出張で使う人に便利です。 LCCは徒歩での搭乗など、大手航空会社を利用する際と違う点が多々(画像:シカマアキ) 一方、LCCは飛行機でありながら運賃はとても安いです。ただし利用空港が、羽田ではなく成田、伊丹ではなく関西(関空)であり、東京都内あるいは大阪市内への移動時間と費用が余分に必要。高速バスも安いですが、所要約8~9時間かかります。 「すぐ乗れる」メリットが大きい新幹線「すぐ乗れる」メリットが大きい新幹線 ここまでいくつかのデータを比較しましたが、新幹線のメリットはとにかく 「すぐに乗れる」 こと。 一般的な鉄道と同じ感覚で切符を券売機や窓口で買い、改札を通過して乗ることができます。特に東海道新幹線の場合、朝や夕方ののぞみは非常に本数が多く、ホームに立つと列車がどんどんやってきます。 もし指定席で乗り遅れても、切符を変更せずにその後の自由席に乗ることも可能です。近年ではスマートフォンで自ら列車や座席の変更もできるなど、便利になりました。 東海道新幹線の普通席指定席。平日朝夕はビジネスパーソンの利用が大半(画像:シカマアキ) 乗り遅れた場合にすぐ列車があるのも、新幹線の大きなメリット。飛行機の場合は多いと言ってもJALとANAそれぞれ1時間に1便程度です。しかも早期割引の運賃の場合、当日変更は不可。航空券の当日購入はとても高く、しかも満席だと乗ることができません。フットワークの軽さは、新幹線のほうがはるかに上です。 また新幹線は地上を走るため、窓の風景が楽しめます。晴れた日中なら富士山もきれいです。移動時間が2時間以上あるので、お弁当を食べたり、ちょっと寝たりするのにもちょうどよく、車内で誰でも利用できる無料Wi-Fi、電源のある座席もあります。 新幹線にない飛行機のメリット 一方、飛行機を利用するメリットもあります。 まず、 「乗っている時間が短い」 ことです。 例えば、隣に騒々しい人が座っても1時間ほど我慢すれば開放されます。機内には無料のドリンクサービスがあるほか、上級クラスでは食事のサービスが付いていることも。なお、新幹線ではグリーン車でもドリンクは“自腹”です。 大手航空会社では普通席でも無料のドリンクサービスがある(画像:シカマアキ) また、飛行機に乗ると「マイル」がたまります。特に東京 = 大阪間は、多くの利用客が出張でこの区間を移動しています。航空会社では頻繁に搭乗する人向けに「上級会員」という世界共通のサービス制度が存在します。会員ランクが上がるにつれ、空港のラウンジが利用できたり、空港のカウンターや保安検査での優先レーン、優先搭乗、マイルの加算率が上がったりします。 ちなみに、ANAやJALのラウンジではビールが無料で飲み放題、これがビジネスパーソンに人気です。 月曜朝や金曜夜などは特に人気 最近、飛行機でも上空で無料Wi-Fiが利用できたり、普通席でも電源やUSBポートがあったり、座席モニターで映画や音楽などが楽しめたりする最新機材が、東京(羽田) = 大阪(伊丹)線によく投入されています。 忙しいビジネス利用に対応し、移動時間を少なくしようと、他の路線と比べて、搭乗ゲートが出入り口から最も近いのもこの路線の特徴。月曜朝や金曜夜などは特に人気で、座席数が多い機材でも数日前から満席になることも。 JAL国内線の最新「787」は全席に個人モニター付き(画像:シカマアキ) 飛行機には、上級会員のようないわゆる固定客が一定数います。新幹線が着々と所要時間を短縮していても、飛行機を利用する割合は大幅には減っていません。リニア新幹線が開業するまでは、この割合が続くと考えられます。
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