中国の現地感満載な「ビーフン」が錦糸町で食べられる! 揚げゆで卵トッピングで気分はもう海外旅行気分だった【連載】ガチ中華をたずねて三千里(2)
さまざまな食を楽しめる大都会東京――。そんななかで近年注目を浴びているのが、現地さながらの庶民的価格な「中国料理」です(中華料理ではありません)。当連載ではそれを「町中華」ならぬ「ガチ中華」と呼び、都内の新店・珍店・奇店を巡ります。辛くて有名な湖南料理 東京の街には、中国のさまざま地域の「ガチ中華」が増加しています。なかでも、今注目されつつあるのが湖南料理です。 日本ではまだメジャーとはいいにくいですが、湖南料理は中国八大料理のひとつとして挙げられ、主に湖南省で食べられるものをいいます。その特徴は辛さにあります。 中国の辛い料理といえば、唐辛子を使った真っ赤な四川料理が有名です。湖南料理も同じく唐辛子を使っており、その辛さは四川料理を越えるといわれています。 しかし、辛さの性質は大きく異なります。四川料理が麻辣(マーラー)といわれる花椒(ホァジャオ)由来のしびれる辛さなのに対して、湖南料理は酸辣(スーラー)、すなわち酸っぱい辛さが特徴です。 しかし辛さだけを追求しても、料理の真の魅力にはたどり着けません。なぜなら辛さに引きずられて、肝心の味を味わえないからです。筆者もあちこちの「ガチ中華」で、 「現地と同じ味付けにしてほしい」 と伝えますが、ときどき「やめたほうがいい」と止められるのもこのためです。 今回の店は錦糸町 ならばほどよく現地感を味わいつつ、最後までおいしく食べることができる店はないものかと思っていたところ、たどり着いたのが今回やってきた「李湘潭 湘菜館」(墨田区錦糸)。錦糸町駅から約徒歩3分の店です。 墨田区錦糸にある「李湘潭 湘菜館」(画像:オンステージ高志) 現地に到着してまず気付いたのは、入りやすそうな店構えです。池袋や高田馬場で密集している「ガチ中華」は、ビルの2階以上に入居しているところが多く、どうしても 「ちょっと話題になっている料理を試してみようか」 と興味を持ち始めた初心者にはハードルの高いです。対してこの店は、少し本格的な匂いのする街場の店といった雰囲気です。 昨今の感染対策で、店内には消毒用アルコールだけでなく、カメラタイプの体温計も設置され、清潔感があります。訪問した際にも家族連れで料理を楽しんでいるグループがいて、「ガチ中華」では極めて入りやすい店といえます。 メニューが運ばれてきた瞬間……メニューが運ばれてきた瞬間…… 湖南料理のメニューが並ぶこの店ですが、足を運んだきっかけは「ミーフンが人気」と聞いたからです。 ミーフンとは漢字で「米粉」と書く麺で、日本では「ビーフン(台湾語などの発音由来)」として知られています。ビーフンは日本では炒める印象が強いですが、湖南料理では温かい汁につけたものなど、さまざまなスタイルがあるそうです。 この麺料理は朝昼の食事メニューとして、中国西南部や南部ではごく一般的な食べられているようです。日本でいえば、立ち食いそばのような立ち位置でしょうか。 読めない漢字が並ぶ凝った料理もいいですが、現地でありふれた料理を楽しむことで、コロナ禍の今、現地に行った気分を味わえます。 店内の様子(画像:オンステージ高志) 今回セレクトしたメニューは「牛筋ミーフン」。これに、湖南省名物の揚げゆで卵をトッピングします。ちなみに、この店は日本語が通じます。 店員さんからパクチーの有無を聞かれたので、すかさずOKの返答。ちなみにほかの「ガチ中華」では中国語で有無を聞かれることもあるので、ご注意ください。 メニューが運ばれてきた瞬間…… さて10分ほどしてやってきた料理。匂いだけで「これは当たりだ!」と確信しました。中国に行ったことがある人はわかると思いますが、街を歩いていると香ってくる香辛料のあの香りです。それが鼻孔をくすぐり、食欲を猛烈にかきたてます。 注文した「牛筋ミーフン」(画像:オンステージ高志) 牛筋ミーフンは辛いメニューではないので、スープは出汁の効いた優しい味です。それが米粉の麺によく絡みます。トッピングされているザーサイと一緒に口のなかで味わうと、おいしさがさらに増します。小麦の麺と違って米粉の麺はどこか形を変えた米のご飯という感じで、日本人によくマッチするのかもしれません。 不思議なおいしさだったのが、揚げゆで卵です。これは茶葉蛋(チャーイエダン。ゆで卵の殻にひびを入れてから茶葉や醤油で似た物)を揚げたものですが、衣の部分が魚のすり身のような食感で、卵のうまみが詰まったおいしさです。 麺の量がしっかりしているのもポイント。これ一杯で満腹になれます。それでいて、スルスルと食べてしまえるから驚きです。 テイクアウトも充実テイクアウトも充実 この店はコロナ禍ということもあり、テイクアウトやデリバリーが充実している様子。訪問したのはお昼過ぎでしたが、利用者がひっきりなしでした。 充実のテイクアウトメニュー(画像:オンステージ高志) 筆者は牛筋ミーフンで既におなかいっぱいだったので、「毛沢東が愛した角煮」をテイクアウトで注文しました。これは「紅焼肉(ホンシャオロウ)」と呼ばれる料理で、中国ではメジャーなもの。毛沢東は湖南省出身なので、湖南料理の紅焼肉が本場といえます。 そんな「毛沢東が愛した角煮」ですが、自宅で食べる前に写真を撮るべきでしたが、あまりのおいしさにすっかり忘れてしまいました。すいません。 さて「李湘潭 湘菜館」ですが、メインとなる料理は日本人の口になじみやすくアレンジしていますが、プラス100円程度で現地向けの味付けにも変更できます。 なじみやすさの一方で、現地の「常食」であるミーフンがさまざまなスタイルで楽しめる店は東京でもレア。辛すぎる料理や強烈な現地感は苦手だけど、おいしい「ガチ中華」を味わいたい人には全力でお勧めしたい店です。
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