今さら聞けない? 新交通システム「ゆりかもめ」「日暮里・舎人ライナー」のメリットとは結局何なのか
都内には「ゆりかもめ」「日暮里・舎人ライナー」というふたつの新交通システムが走っています。その画期性について、フリーライターの小林拓矢さんが解説します。新交通システムのなにが画期的か? 地下鉄は小回りが利かない、バスだと運べる人数がちょっと少ない、路面電車を現代に走らせるには余裕がない――そんな人たちの移動を確保するには、どのような交通機関がいいのでしょうか。 筆者(小林拓矢、フリーライター)は以前、勾配・曲線をもろともしない公共交通機関として、多摩都市モノレールをアーバンライフメトロで取り上げたことがあります。ただ、モノレールは運転士が必要な乗り物で、運行そのものを自動化することは簡単ではありません。モノレール自体も以前からある規格であり、ある程度大ががりな設備を必要とします。 もっと簡単な設備で適切な人数を運べる交通システムはないものか、となったところで登場するのが新交通システムです。 標準的な新交通システムの仕様として、 ・無人運転もしくはワンマン運転が行われる というものがあります。またホームドアが設置されている路線も多く、そういった省人化が行われているのも特徴でしょう。 また、新交通システムは「中量交通機関」と呼ばれるように、一般の鉄道ほどの人数ではないにせよ、それなりの人数を運べるようにできており、車体こそ小さくても複数両の編成を組んでいます。 東京ビッグサイトの駅をめざす「ゆりかもめ」(画像:小林拓矢) 東京には、 1.ゆりかもめ 2.日暮里・舎人ライナー のふたつの新交通システムがあります。どちらも無人運転を行っており、ゆりかもめは6両編成、日暮里・舎人ライナーは5両編成と、バスよりもはるかに多い輸送力を誇っています。 ちなみにどちらの新交通システムも、開業時から駅にはフルスクリーンのホームドアが設置されており、人がホームに降りることができないようになっています。安全性の高い、かつそんなに長距離を走るのではない交通機関としてはちょうどいいものです。 では、どんなものなのかちょっと乗ってみましょう。 臨海副都心エリアをこまめに停車する「ゆりかもめ」臨海副都心エリアをこまめに停車する「ゆりかもめ」 新橋から豊洲を結ぶゆりかもめはこの2区間を結ぶというより、臨海副都心エリアと都心や豊洲、あるいは臨海副都心エリア内を移動するのに便利な交通機関として営業しています。新橋から有明まで開通したのが1995(平成7)年11月、有明から豊洲まで開通したのは2006年3月です。 この路線で興味深いのは、臨海副都心エリアへのアクセスを確保するため、通常ではありえないほど遠回りをし、細かくいろんなところに寄っていることです。 早速、新橋から乗ります。土曜の午後に乗った際には、臨海副都心エリアへ遊びに行く人が多い印象でした。途中竹芝では伊豆諸島方面へ向かう船が出発する竹芝ふ頭に連絡します。ふ頭や倉庫が集まるエリアを通過しながら、平日にはこのあたりへの通勤アクセスにも利用されるということを想像します。そしてループ線。いよいよレインボーブリッジを渡ります。 最初の駅はお台場海浜公園。ここから南西へと進みます。台場はフジテレビの最寄り駅です。 ここから方向を変えて、南東へ。休業中の船の科学館が近くにあるのは、東京国際クルーズターミナル。また方向を90度変えて、テレコムセンター。このあたりは通信関係のオフィスなどの拠点が充実しています。平日の利用客も多いのでしょう。方向を2回変えて、巨大商業施設・ヴィーナスフォートがある青海へ。なお、ヴィーナスフォートは近く閉館し、新しい商業施設ができる予定です。 東京ビッグサイトは、東京ビッグサイトの最寄り駅。コロナ禍に、東京ビックサイトでコミックマーケットが行われた際には、「ゆりかもめ」を大増発し、自動運転の特性を生かした運行が行われました。 有明をすぎると比較的新しい区間に入ります。車窓を見ると東京オリンピックの会場だったのでは、という感じのところが多く見られます。堂々たる豊洲市場が近づくと、市場前。豊洲市場へのアクセスとしても「ゆりかもめ」は使用されています。そして豊洲へ。タワーマンションが林立する地域であり、駅近くの公園では子どもたちが遊んでいます。 豊洲では東京メトロと接続する(画像:小林拓矢) この間、乗客が乗ったり降りたりを繰り返し、地域への便利なアクセス交通機関として使用されていることがわかります。駅の設定も、一般の鉄道に比較すると細かな設定が可能であり、それゆえに利便性も高まります。近くを走る「りんかい線」が臨海副都心エリアでは3駅しかなく、直線で走っていることを考えると、小回りが利いていて優れた交通機関だと考えられます。 もう一つの新交通システムは、住宅地の利便性のためにつくられました。 バスの混雑を解消するための「日暮里・舎人ライナー」バスの混雑を解消するための「日暮里・舎人ライナー」 足立区を中心としたエリアでは、鉄道網が不足しており、いったんは駅までバスで行かなくてはならない状況にあります。「日暮里・舎人ライナー」の沿線も、そういったエリアでした。バス便は多く、常に混雑している状況でした。 1970年代には鉄道誘致運動が始まり、80年代には計画が出てきました。2008年3月になってようやく開業しました。 この「日暮里・舎人ライナー」の特徴として、北へと住宅街を一直線に進むというものがあります。大きな商業施設などはありません。しかし、現実には混雑が問題となっています。それだけ、住民の多い地域なのです。地域の人にとっては待望の交通機関だったのでしょう。 「日暮里・舎人ライナー」の特徴としては、車両によっては全席ロングシートではなく、一部に進行方向向きの座席の車両があることです。ただ、混雑が激しいと全車両ロングシートになることが予想されます。 日暮里を出ると、住宅地を高架でどんどん進んでいます。下には道路があります。乗客も多く、立っている人も多く見られます。先頭で前面展望を楽しんでいる子どもたちもたくさんいます。 路線の性質上、日暮里から遠く離れていくと少しずつ人が降りていきます。筆者も、いったんは舎人公園の駅で降ります。 舎人公園の駅に停車する「日暮里・舎人ライナー」(画像:小林拓矢) この舎人公園は、陸上競技場などもそなえた大きな公園で、地域の人のいこいの場となっています。近くには足立トラックターミナルや北足立市場もあり、こちらへの通勤客も多いと思います。舎人公園の地下には、「日暮里・舎人ライナー」の車両基地もあります。 残るは2駅。さらに北へと向かいます。終点の見沼代親水公園は、埼玉県との県境近くで、歩いて容易に県境を越えられます。 広がる東京の住宅街。その交通の難題を解決するために、「日暮里・舎人ライナー」は生まれたのでした。 東京の新交通システムは、車体の小ささと連結する両数で、カーブの多さやアップダウンの連続にも対応でき、また駅を細かく設定することで利用者の利便性を確保しています。一見違うようなこの2路線でも、新交通システムの特徴とメリットを十分に生かしているのは、共通しているものと考えられます。特に自動運転は、混雑する時間帯に本数を増やせるという利便性に貢献していると思われます。
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