鬼滅風からブランド物まで いつの間にマスクは「おしゃれを楽しむ」モノになったのか
渋谷センター街に専門店が誕生 春も夏も秋も冬も。老若男女、街を行く誰もがこれほどマスクを着けた年はかつて無かったでしょう。 新型コロナウイルスの感染拡大で2020年、マスクはすっかり生活の必需品となりました。とはいえ国別で見ればやはり温度差があって、欧米などでは着用を嫌がる人が少なからずおり、そのことが感染拡大につながったと見る向きもあるよう。 かたや私たちが住む日本・東京は、街でマスクをしていない人を見つける方が難しいほどの徹底ぶり。春から夏にかけてはあらゆる店頭からマスク在庫が消え右往左往したことも記憶に新しいでしょう。 政府が全国民に配布した通称アベノマスク、頑張って自作した布マスクなどをへて、市場に再び不織布マスクが出回るようになって以降も、 「どうせ着けるならもう楽しんだ方が良くない?」 というムードが醸成され、季節に合わせた色・柄ものまで登場するようになりました。 アパレルブランドが「2020年秋冬コレクション」などと銘打って新商品を投入するなど、飛沫(ひまつ)防止という当初の目的を超え、今やマスクはファッションアイテムのひとつに昇華されたもようです。 2020年12月11日(金)には、若者の街・渋谷センター街にマスク専門店「MASK CLUB」(渋谷区宇田川町)までオープンしました。 若い世代にとって今、マスクはどのような位置付けのアイテムとなっているのでしょうか。広報担当の坂口絵美子さんに話を聞きました。 「マスクを楽しもう」ブランド新設「マスクを楽しもう」ブランド新設「MASK CLUB」は2020年7月に卸売・小売のエンドレス(台東区柳橋)が立ち上げたマスク専門ブランドです。 同社はもともと手作りアクセサリーのためのビーズやパーツ類を扱う会社。 新型コロナの影響でマスク不足となった春頃にハンドメイド品の一環としてマスクの手作りキットを製作。さらに手作りが苦手な人に向けて完成品も販売したのが、マスクを取り扱うようになったきっかけだといいます。 色、柄、デザイン。豊富な種類を取りそろえる、「MASK CLUB」のマスクいろいろ(画像:エンドレス) 当面は続く見通しのマスク需要に乗って自社製品を広くアピールしようと、7月にMASK CLUBのオンラインストアを開設。 秋頃からは駅構内などで期間限定ポップアップストアを展開し、このたび初の常設店として渋谷のお店をオープンさせたといいます。まさにコロナ禍だからこそ生まれた新業態。 今や立派なファッションアイテムに 白無地の使い捨て不織布タイプばかりだったマスクは、いつしか色も素材も多様で個性的なものに――。 東京の街を歩けば、若い女性を中心に実にさまざまなマスク姿の人を見掛けます。 「これまで必要に迫られ義務的に着けていたマスクが、洋服やアクセサリーを選ぶような感覚で着けられるようになってきています」と、坂口さんは現状を話します。 MASK CLUBでも、ブランド立ち上げ以降に発売したマスクはすでに100種類以上。カラーバリエーションまで数えると、その数はさらに増えるといいます。 真冬の今ならブラウンやベージュといった暖かみのあるカラーや、ファッションのトレンドでもあるパープル系やタータンチェック柄が人気。親子でおそろいコーデができるよう、子ども用サイズの商品も展開しているのだとか。 機能面も実にバラエティー豊か機能面も実にバラエティー豊か こうしたマスクの多様化は、デザインだけにとどまりません。 ご存じの通り、夏には肌に当たる部分が冷たく感じるクールマスクが、冬には触れると暖かくなるヒートマスクが。空気が乾燥する季節に合わせて、肌の保湿効果をうたうものまで登場しています。 これらのマスクがごく安価で売られていることも、マスクのファッションアイテム化を推し進めた要因のひとつ。 例えばMASK CLUBでは1袋およそ300円から。立体縫製で呼吸がしやすい同店一番人気の「快適マスク」も、3枚セットで300円というコスパの良さです。 靴下やタイツ、ハンカチよりも安い価格相場。気に入ったものをいくつもそろえて、その日の気分や服装コーディネート、さらにはシチュエーションに合わせて、まさにファッション感覚で選べるアイテムへと、マスクはこの半年で急激に進化を遂げていました。 秋冬ファッションとの相性も抜群。コーデュロイ素材のカラーマスク(画像:ギャレリアインターナショナル) 充実の商品展開は当然ながらMASK CLUBだけに限らず、例えば秋冬ファッションにぴったりなコーデュロイ素材のマスクは、カラーバリエーションもワインレッドやグレーベージュと完全に秋冬仕様(ギャレリアインターナショナル、渋谷区渋谷)。 38色のカラーバリエーションを誇るコットンマスクは、発売1か月で累計20万枚を売り上げた人気ぶりです(三和、墨田区業平)。 ハンドメイド用品の企画開発を行うKAWAGUCHI(中央区日本橋室町)は、マスクに絵を描けるペン計15色を発売。イラストを描いて楽しんだり、自分専用の目印を描いて人のものと区別したりと多彩な活用方法をアピールしています。 マスクの進化に見る日本人のたくましさマスクの進化に見る日本人のたくましさ ちなみに、長時間マスクを着けたときの不快感のひとつとして挙げられる、ゴムひもが耳の後ろに食い込んで痛くなる現象。あの悩みを解消するアイテムまでもが、今やかわいらしいアクセサリーとして発売されています。 両端にフックが付いた、リボンやパールのあしらわれたチェーン。これにマスクの左右のゴムひもを引っかけて後頭部にセットすれば、まるでヘアアクセサリーのような見た目に。耳が痛くならないばかりか後ろ姿を華やかに見せてくれる効果まで備えています。 ヘアアクセサリーを着けているみたい? 耳が痛くならない、おしゃれなマスク関連アイテムも(画像:エンドレス) 2020年、マスクをしなければ外に出られない状況になるなんて、誰も予想だにしませんでした。しかし反面、コロナがなければここまでマスクの種類が増えることもなく、マスクが進化を遂げることなどおそらくなかったでしょう。 この先もまだまだマスクを手放せない状況は続きます。 嫌だなあ、面倒だなあ、と悲観的になるのではなく、「この際もう楽しむしかない!」と開き直り、状況を受け入れるばかりか芸の細かいアイテムを次々と生み出す日本人。そのたくましさにあらためて感服せずにいられない、2020年のコロナ禍マスク進化論です。
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