【搭乗ルポ】羽田発「国際線」 コロナ禍で乗客まばら、機内は厳戒態勢……と思いきや実態は?

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【搭乗ルポ】羽田発「国際線」 コロナ禍で乗客まばら、機内は厳戒態勢……と思いきや実態は?

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鳴海汐

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新型コロナウイルスの感染拡大により、国内旅行にも慎重な人が少なくない現状、海外へと飛ぶ空の便はどうなっているのでしょうか。2020年8月に仕事で羽田空港から渡英したライターの鳴海汐さんが、機内での様子などをリポートします。

今、海外渡航できるのか

 2020年7月22日(水)にスタートした「Go To トラベルキャンペーン」は、約1か月間で延べ420万人が利用したと政府が発表しました。

 マイカーなどを使った近場への旅行が中心とのことで、公共交通機関による国内での移動にも慎重な人がまだ少なくないご時世。ましてや海外へ行くのは何年先になるかといった雰囲気です。

 日本ではようやく厳しい水際対策が緩まろうとしているところで、まだほぼ“鎖国状態”です。今は海外、特にヨーロッパには渡航できないものだと思っている人は多いかと思いますが、仕事の都合で8月中旬に渡英した筆者が見た、国際線フライトの現状をお伝えしたいと思います。

欧州へは「渡航中止勧告」

 なお、英政府は2020年7月10日(金)以降、日本など59か所および在外英領14か所からイングランドに到着する場合には「2週間の自己隔離は不要」と発表しています。

 しかし日本の外務省のホームページに掲載の「国・地域別の海外安全情報」では、英国を含むヨーロッパ全域を「レベル3 渡航は止めてください(渡航中止勧告)」としています。

 外務省は、「このホームページに掲載する海外安全情報は、法的な強制力をもって皆様の渡航を禁止したり、退避を命令したりするものではありません。同様に旅行会社の主催する旅行を中止させる効力もありません」と説明しています。

 そのためか、渡航中止勧告であっても2020年8月現在、例えば日本の留学エージェントは英国への語学留学のあっせんを行っていて、クレジットカード付帯の海外旅行保険は利用可能という状態です。

 とはいえ渡航を推奨する意図は決してなく、純粋に現状がどうなっているかをお伝えするのが本稿の目的です。

航空会社選びに難航

 フライトの状況をお伝えする前に、航空会社選びもトリッキー(ややこしい)でしたので、そのお話をしたいと思います。

 筆者はもともと2020年3月に渡英する予定でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大でキャンセルになったという経緯があります。

 その際に搭乗予定だったエミレーツ航空(アラブ首長国連邦)のチケットを同額分のクーポンとして保管していたので、それを利用しようと考えていました。これはドバイ経由の乗り継ぎ便になります。

 しかしアラブ首長国連邦は英政府発表の自己隔離免除国には入っておらず、さらに乗り継ぎであってもドバイでは陰性証明の持参が求められたため、検討の末に使用を断念しました。

 乗る側としては、陰性証明を持った乗客だらけの方が安心と言えば安心ですが、1日たてば結果が陽性になるかもしれないものなので、検査に4万円ほどかける意味が見いだせなかったからです。

 英国自体は、入国者全員に検査を行っているわけではなく、自己隔離が免除であっても14日間の滞在先を事前にネットで知らせることになっているというのが、入国に関する唯一のコロナ対策です。

 直行便は価格が高いので乗り継ぎ便にしたのですが、経由国は感染傾向が落ち着いていそうなトルコを選びました。スペインやフランスなど、次々に英国の自己隔離免除リストから外れていったので、日本とトルコがいつ外されるかとひやひやしながら毎日確認していました。

羽田はガラ空きなのか

 フライトは23時近くで、オンラインチェックインがストップしていたため2時間前に空港に向かいました。21時前の東京国際空港空港(大田区羽田空港)行きの京急線はガラガラ。降車時点で同じ車両にもうひとりいたかどうかくらいです。

 空港内のカウンターもガラガラかと思いきや、列ができています。列が折れ曲がって、数十人はいます。

 ぱっと見、若い人が多い印象です。20代、30代あたりの男女が中心だったでしょうか。日本人のほか、アジア系の外国人らしき人と欧州系の外国人がそれぞれ同比率くらいいました。ビジネスや帰国、留学で動く人が多いせいか、一様に荷物が多いのが特徴です。

 利用したターキッシュエアラインズ(トルコ)では、新型コロナ感染対策として、混雑緩和のため機内持ち込みの荷物を4kgまでとしています。その分、機内持ち込みの予定だった残り8kg分を、預け荷物として預けられる形を取っていました。

 無料の預け荷物はエコノミーの場合23kgまでのものをふたつなので、三つまでを無料で預けられることになるのですが、それ以上の荷物をカートに載せている人が多い印象でした。

 荷物を確認する保安検査、出国検査は再びガラガラ。通り抜けた先では免税店が1か所開いていましたが、ひと気がなくて見たことのないような静けさです。

 搭乗時間となりました。

 新型コロナ感染対策としては、搭乗口で体温チェックがあったのと、混雑防止で後方の席から区切って搭乗の案内がありました。そして飛行機に乗り込むときに、サージカルマスク、拭き取り用の布、アルコールジェルのキットが並んでいるのをひとりひとつずつ取っていくシステムです。

サージカルマスク使用を徹底

 驚いたのは、機内では3列席の真ん中、いわゆるミドルシートの1席分だけ間をおいて、席が埋まったことでした。通路を隔てたすぐ隣にも人がいます。 筆者は、機内では乗客がとびとびに座る程度の搭乗率をイメージしていたので、こんなに多いものかと思いました。

 フライトアテンダントは防護服を着ているイメージでしたが、普段の制服にサージカルマスクをするのみでした。

海外へ飛ぶ国際線。コロナ禍とはいえ、ターキッシュ エアラインズの機内には多くの乗客がいた(画像:写真AC)



 このマスク装着に関してトルコ人スタッフは厳しく、布のマスクをしている人には、サージカルマスクに交換するよう個別に呼びかけがありました。マスクを顎にずらして寝ている人の肩をたたいて起こし、マスクのずれを直させるほど。

 これは、日本人の感覚ではなかなかできないことではないでしょうか。

 カタログや機内誌がないのがいつもと違いますが、子どもの声がするせいもあって、結構和やかな雰囲気です。もっと緊張感があるものかと思っていた予想が裏切られました。

 機内食は、温かいメニューは一切なく、水、ジュース、そしてビニール袋に入ったサンドイッチとマフィン。直接手に触れることなく、ビニール袋ごしに持てる仕様でした。

 乗ったときとは反対に、降りるときは皆出口に急ぎ、かなり「密」になっていたのが、ある意味いつも通りでした。

乗り継ぎ便の様子は

 到着したトルコのイスタンブール空港では、朝6時前から免税のブランドショップが開いています。羽田では昼間でも長期休業中のブランドショップが多いのと対象的なにぎやかさです。まるで別世界に来たような感がありました。

乗り継ぎのイスタンブール空港では、早朝から免税ショップが店を開けていた(画像:写真AC)



 とはいえ、搭乗口近くの待合室では、椅子をひとつ離して座るようになっていて、やはりコロナ対策はしています。そのほか搭乗時に体温チェックがあります。

 乗り継ぎの機内でも当然、ひとつ席が空いているのだろうと思っていたのですが、隣の席に人が座ってきました。

 隣の人に失礼を承知で、フライトアテンダントに「ソーシャルディスタンスが保たれた席はありませんか」と聞きましたが、「いやー、でも、満席なんです」と言われました。実際、どこにこんなに人がいたのかというくらい、席がみるみる間に埋まりました。

 筆者の隣に座ったのは、イスラム教徒らしきいでたちだったのでトルコ人かと思ったのですが、マレーシアに一時帰国していた英国在住の初老の男性でした。ついついおしゃべりもしてしまいました。

 彼の隣はすいていたので、できたら席を移動してひとつ間を空けてほしいと思っていたら、食事が出てきた際に移動してくれました。

全員マスク着用で感染は数千分の1

 機内は空気が2~3分ごとに入れ替わっているし、新型コロナウイルスのしぶきを吸着する高性能エアフィルターがあるので安全と聞いたことがある人も多いでしょう。それでも、満席に近いと焦りを覚えます。

 これは4時間のフライトでしたが、2時間のフライトにおける感染確率についての興味深い記事が最近出ています。

 マサチューセッツ工科大学のスローン経営大学院の統計学教授であるアーノルド・バーネット氏によれば、全員がマスクを着用している場合、満席では感染可能性は4300分の1です。1席ミドルシートを空けた場合、7700分の1になります(2020年8月20日付『CNN travel』)。

 これを多いと見るか、少ないと見るか。

トルコから英国へ渡る乗り継ぎ便では、アジア人とみられる乗客は筆者だけだった(画像:写真AC)



 乗り継ぎの機内は、見たところアジア人は筆者だけで、中東っぽい人ばかりでした。入国審査の列に並ぶ人をみても、日本人はおらず、最初に飛行機が一緒だった日本人たちは、違う国に行ったようです。

 ウィズコロナの時代、東京でも人が動いているのは事実ですが、世界はそれ以上に動いているという印象を持たざるを得ないフライト体験でした。

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