ハチ公のそばで30年以上開催! 渋谷のオフィシャルイベント「渋谷パラダイス」とは

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ハチ公のそばで30年以上開催! 渋谷のオフィシャルイベント「渋谷パラダイス」とは

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渋谷の街のオフィシャルイベント「渋谷パラダイス」。昭和後期に始まり、2019年の開催で49回目を数えるといいます。そんな同イベントや、変わりゆく渋谷への思いを、渋谷商店街にゆかりのある人に聞きました。

変わりゆく街で昭和から続く、商店街主催のイベント

 変わりゆく街、渋谷。1970年代には、「パルコ」「東急ハンズ」「109」が続々とオープンし、「若者の街」と呼ばれるようになりました。1990年代に社会現象を巻き起こした「コギャル」の聖地だったと記憶している人も多いことでしょう。

 近年では、世界的な観光地へと飛躍。スクランブル交差点の撮影を楽しむ訪日外国人が多く見受けられます。待ち合わせスポットとして名高い「ハチ公像」は、今やフォトスポットも「兼務」しており、撮影のための行列ができる時間帯も。加えて、この街は「100年に1度の大改造」といわれる、4つの大規模開発の真っ只中でもあります。

2018年の「渋谷パラダイス」の壇上で踊るアーティスト(画像:渋谷パラダイス実行委員会)



 そんな渋谷で、30年以上にわたり、地元商店街と警察などの行政とが力を合わせ、存続してきた「お祭り」をご存知でしょうか。その名は「渋谷パラダイス」。会場は、渋谷のランドマークのひとつ、ハチ公像のある「ハチ公前広場」。絶好のロケーションのもと、ゴールデンウィークに開催されます。

 東急百貨店 東横店の前に設置されたステージでは主にアーティストライブを実施。ここにも、街の特異性がひしひしと感じられます。

 かつて壇上にのぼったアーティストのなかに、現在の大スターがいるのも特徴のひとつで、今後壇上に上がるアーティストのなかにも、未来の大スターが誕生する可能性がありそうです。

 そのほか、ステージでは、お笑いや対談企画なども実施されます。

 そんな「渋谷パラダイス」、昭和のころから続いていますが、始まった当初は、今とは全く異なる形態であり、渋谷駅前の姿もまた今とは違ったといいます。

イベントは、商店街らしい「ガラポン抽選会」からスタートしていた

「昔はハチ公の位置も違ってたし、池もあった。僕もまだ青年会長だったよね」と笑いながら話してくれたのは大西賢治さん。渋谷道玄坂商店街振興組合の理事長を務めるほか、渋谷区商店会連合会や、渋谷区商店街振興組合連合会の会長を務めており、いわば渋谷商店街の「代表」といえる存在です。

大西賢治さん(高橋亜矢子撮影)



 イベントは、ガラポン(当たり玉を引く抽選器)を使用した商店街らしい抽選イベントからスタート。その後、ミスコン実施などを経て、形を変えながら、毎年1回、年によっては春と秋の2回開催されてきました。発足当時は、渋谷道玄坂商店街振興組合の単独イベントだったといいますが、現在では渋谷駅周辺の5つの商店街(渋谷道玄坂商店街振興組合、渋谷地下商店街振興組合、渋谷宮益商店街振興組合、東急本店前商店会、渋谷中央街)が連携し、実施しているというのが特筆すべき点です。

「昔は、商店街が一緒になってやるイベントは、なかったんだよね。お互いに良い意味での競争相手だったから。例えば、公園通りに人が沢山行っている様子を見て、自分のところ(道玄坂)にも、もっと呼ばなくては、と考えたり。

 だけどお客さんは、ここが道玄坂、ここがセンター街、というようにハッキリと区別して歩いているわけではないじゃないですか。多くの人は、複数の商店街の領域をまたがって散策し、『渋谷周辺』を巡ったと感じるでしょう」(大西さん)

 だからこそ、「オール渋谷」という考えのもと、渋谷区内の商店街同士で協力し合い、イベント以外の部分でも、連携を図っているといいます。ちなみに、渋谷の商店街の数は極めて多く、駅周辺だけで13、区全体では59にものぼるとのこと。

「良い知見は、みんなで共有しようとしています。例えば今、訪日インバウンド客が増えているので、英語のメニューを作ってやってみようとか」

 そんな商店街同士の連携の良さこそが、イベント継続の原動力と話す大西さん。さらに、行政による後押しの重要性も強調します。同イベントには、渋谷区や渋谷警察署がバックアップを行っているのです。

「渋谷は今、嬉しい悲鳴の最中」だからこそ、甘んじない

 とはいえども、継続に困難を感じたことはありませんか? と聞いてみたところ、バブル崩壊後に起こった「平成の大不況」が挙がりました。

「景気が悪い時は、なかなかスポンサーがつかないし、歩いている人の表情も、景気悪い感じになってしまうんだよね。でも、それでも続けたのは、商店街は毎日生きているからです。商売は『商い(あきない)』とも言うけど、やっぱり、飽き(あき)てはいけないから」

 そんな霜枯れの時代を経て、訪日外国人も増加した今の渋谷については、「うれしい悲鳴の最中じゃないですか」としつつも、それに甘んじていてはいけないと話します。

「イベントやって辛いのは、人が来ないことだけれども、渋谷は、おかげさまでちゃんと人が来てくれるんです。半端じゃないほど来るから。だからこそ我々は、『来てくれるからいいや。待っていたらいいや』じゃだめ。努力しなければいけない。イベントも、繰り返し繰り返し、やっていかないと」

ハロウィンやW杯。自発的に集まる人らへの見解は?

 ところで、近年の渋谷では、W杯、ハロウィン、カウントダウンなどで自発的に人が集まる傾向が散見され、問題視されることもありますが、大西さんはどのように考えているのでしょうか。

「(問題を起こす人は)人数でいえば、ごく一部の人なんだよね。本当はみんな楽しみたいだけだと思うんだけれども。人間の群衆心理というか、集まると、はっちゃけちゃう人が多いのかな。だけど、暴れたり壊したり、犯罪を起こすというのは、やってはいけないことだから。マナーを持って楽しむというのが、最低限のルールですよね。

 商店街と行政とが連携して、ルールを強化していきたいと考え、話し合いも進めています。せっかくなら、事故もなく、怪我もしないでやっていくのが1番だからね」(大西さん)

渋谷を象徴するもののひとつ、ハチ公像。2019年4月8日には、84回目の慰霊祭も開催された(高橋亜矢子撮影)



 さらに、渋谷の街で「正しく遊ぶ」ための、前向きな展望も。それは、訪日外国人の様子から思案したものでした。

「渋谷は、昼間は海外の人が多いんだけど、夜は少ないんだよね。この街には、夜遊べる場所が少ないのでは、と考えています。例えば、ニューヨークだと、24時間電車が動いてるから、街の人たちは、何時でも遊んでいる。それも、ブロードウェイのミュージカルを鑑賞するなど、『健全な遊び』ね。渋谷も、24時間何かやってるぞというイメージを作りたいんだけれども、まだそこまでは行けないんだよね。

 だから、将来的には、そういうところもしっかり『渋谷パラダイス』で発信していけたらいいなと思っているんだよね。今は、夕方17時くらいまでの開催だけれども、今後の展望としては、夜の部もやってみたいと考えています」

街がどんなに変わろうとも「イベントは存続させる」

 続々と進行する再開発については「渋谷の今の変わり様っていうのは、凄いと思うよ。でも、どんなに凄いものが建ったって、その外に出た時に、魅力を感じなかったら、お客さんは来なくなってしまう。だからこそ、周りの店を、どういうお店にするかを考えていく。それが我々商店街の仕事です」と話す大西さん。

 2019年11月には、渋谷エリアで最も高い、約230メートル(地上47階建て)の大規模複合施設「渋谷スクランブルスクエア第I期(東棟)」が完成予定。その屋上には、展望施設「SHIBUYA SKY(渋谷スカイ)」も登場し、街はますます変貌を遂げてゆくことでしょう。

 さらに、2027年には、渋谷駅街区の中央棟と西棟が完成予定。そのときには、ハチ公広場周辺の様相も大きく変化を遂げますが、周囲が変わろうとも、イベントは存続する――。「続けることが大事」と、何度も繰り返す大西さんの言葉からは、その強い決意が感じられました。

 超大型連休となる人も多い、2019年のゴールデンウィークですが、「渋谷パラダイス」は4月27日(土)から5月3日(金・祝)まで開催されます。渋谷の街のエネルギーを感じにぜひ、出かけてみて下さい。

●渋谷パラダイス
・開催場所:渋谷駅ハチ公前広場(東急百貨店 東横店の入り口付近)
・開催期間:2019年4月27日(土)~5月3日(金・祝)
・アクセス:JR「渋谷駅」ハチ公口すぐ、東京メトロ、東急各線「渋谷駅」から徒歩1分

※4月26日(金)には、清掃イベントを開催予定。
※不可抗力により、急遽イベントを一時中断する可能性があります。

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