大使館で「真のヨガ」体験、1回わずか360円 インド人講師は「反ビール系」の本格派

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大使館で「真のヨガ」体験、1回わずか360円 インド人講師は「反ビール系」の本格派

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インド大使館の運営する「ヴィヴェーカナンダ文化センター」では、5種類のカルチャー講座を実施しています。そのひとつに、世界的ブームのヨガもあり、インド人講師の教える本格的なレッスンですが受講料が格安。その目的と内容を聞きにインド大使館を訪れました。

半年間、週2回で18000円

 九段下の千鳥ヶ淵に面して建つインド大使館(千代田区九段南)。大使館というと、一般的にはビザの申請に行くことの多い場所ですが、ここにレッスンに通う人たちがいます。

 同大使館は10年前に文化センターを開設。のちにモディ現首相により「ヴィヴェーカナンダ文化センター」と名付けられたそうです。インドの伝統や文化に触れる5種類のカルチャー講座を実施しています。

 そのひとつに、ヨガのクラスがあります。驚くべきはその受講料で、半年間週2回の受講が18000円、週1回は15000円と格安。最初、「ルピー(インドの通貨)」の間違いではないかと疑い(それでも30000円台ですが…)、問い合わせてみたらやはり「円」でした。

 しかも、インドからヨガ講師を招聘(しょうへい)して行うという本格的なもの。半年間週2回通うとするとレッスンの回数は50回程度で、1回約360円という計算になります。「本場インドのヨガに触れてもらうためなので」と同文化センター担当者。

 インドではもとより、ヨガは「悟り」の境地に至るための宗教修行でした。それが、ストレッチのようなエクササイズとして世界中で定着し、さらにはホットヨガなどのような新しいものもさまざまに生まれています。

 そのなかで、日本でもっと伝統的なインドのヨガを普及させたいとの想いがあってのことと前出の担当者はいいます。そのヨガ教室がどんな内容なのか、授業見学に訪れました。

インド大使館「ヴィヴェーカナンダ文化センター」上級クラスでのヨガの模様。写真の講師は、インド中央部に位置するマディヤ・プラデーシュ州出身のリータ・シャルマさん(2019年4月3日、宮崎佳代子撮影)



 見学したのは上級クラス(アドバンスドクラス)で、講師はインドのマディヤ・プラデーシュ州出身のリータ・シャルマさん。壁一面の窓から北の丸公園を望む、明るいスタジオに生徒は10人程度、全員女性でした。

 レッスンは英語ですが、シャルマさんが見本を示しながら教えてくれるためか、上級クラスなので慣れているからか、さほど戸惑うことなく指示通りのポーズをとっていきます。

 シャルマさんは、ポーズや呼吸のタイミングを説明したり、それが身体にどんな効果をもたらすかを話しながら、レッスンを進行。インドでヨガをかじったことのある記者は、これが伝統ヨガで決められたポーズであり、呼吸を深め、酸素を体内に効果的に取り入れる呼吸法を習得する「プラーナヤーマ」であることがわかりました。

 かなり難易度の高いポーズで呼吸を深めてゆくため、受講生のなかには頰が紅潮している人や、息を切らす人も少なくありませんでした。シャルマさんは、しなるように柔軟にそれらのポーズをとり、皆に示します。

目にした“ビールヨガ”に唖然、シャルマさんの言いたいこと

 レッスン終了後、シャルマさんに伝統ヨガについて詳しく話を聞きました。

「ヨガはストレッチのようなエクササイズと思われがちですが、インド伝承のヨガには8つの段階があります。まず行いを正し、肉体の鍛錬によって精神をコントロールし、さらに五感をひとところに集中させ、瞑想によって無心となり、魂をより崇高なものにするのです」(シャルマさん)

上級クラスでのレッスンの様子(2019年4月3日、宮崎佳代子撮影)



 インドでもヨガの流派は色々あるそうですが、シャルマさんの教える伝統ヨガの8段階を順に説明すると、日常の行いを清いものにする「ヤーマ」と「ニヤーマ」、坐法(基本姿勢)を学ぶ「アーサナ」、正しい姿勢での呼吸法を習得する「プラーナヤーマ」、五感を外から内側に向けて感覚を研ぎ澄ます「プラティアハーラ」、ひとところに意識を集中させる「タハールナ」、瞑想を行う「ディヤーナ」、悟りを開く最終ステージの「サマーディ」となります。
 
「ストレッチはアーサナの部分で、ヨガの一部分にすぎません。無理なく正しい瞑想の姿勢を取れるようにならなければ、痛みや違和感で気が散ってしまい、意識や感覚をひとところに集中できないためです」

「アーサナ」や「プラーナヤーマ」は、精神統一の手法であるほかに血液の循環をよくしたり、病気の改善や予防効果などがあるとして、インドでも宗教と関係なく健康法のひとつとして行っている人も少なくありません。

 しかし、今のヨガブームは、商業目的にその部分だけがひとり歩きし、ストレッチ=ヨガとしていたり、全く異なるスタイルをヨガとして教えていたりするものも見受けられることをシャルマさんは指摘。

「イギリスにいた時、テレビで“ビールヨガ”というものを目にしました。それは、ストレッチやダンスをしながら、ビールを飲むもので驚きました。私が言いたいのは、インドの伝統ヨガは、神々の教育のために行われた崇高なものということです。それがどういうものなのかを普及させることを目的に、ここでヨガを教えています」

 ビールヨガの発祥元は定かでなく(一説ではドイツ)、ヨガのポーズをとるなどのエクササイズをしながらビールを飲むもので、日本でも広がりを見せています。

 シャルマさんが教えるのは、段階的に肉体と精神を健全にひとところに結びつけて自分自身を高めるもの。同文化センターの目的は、ビジネスではなく、インド発祥の真のヨガの普及なのです。

 ヴィヴェーカナンダ文化センターは、5月末に7月開講の受講生(新規)の登録を開始する予定です。定員に達し次第、受付を終了するとしています。

※受講料は、新規又は1学期以上休学していた場合は、5000円の登録料が別途必要です。

●インド大使館 ヴィヴェーカナンダ文化センター
・住所:東京都千代田区九段南2-2-11
・受付時間:10:00〜12:00、14:00〜17:00
・定休日:土日祝
・アクセス:各線「九段下駅」2番出口から徒歩約5分

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