小学校時代にタイムスリップできる「日本最大級」の裁縫の街とは!?

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小学校時代にタイムスリップできる「日本最大級」の裁縫の街とは!?

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日野京子

エデュケーショナルライター

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子どものころ誰もが小学校で習った裁縫。そんな裁縫を取り巻く環境は昔と今とでは違うようです。小学校の裁縫教育の歴史と、裁縫とともに発展した「あの街」の歴史についてエデュケーショナルライターの日野京子さんが解説します。

 現代では小学校で男女一緒に家庭科を学び、調理実習や裁縫を行っています。しかし、近代国家へと歩み始めた明治初期から長きにわたり、現在の家庭科に相当する「裁縫」「家事」は女子を対象とした教育という位置付けでした。

かつて家庭科は女子のみが受ける科目だった(画像:写真AC)



 1872(明治5)年に「学制」が公布された当時、「家庭内の炊事や裁縫は女子がするもの」という考えが根付いており、その考えが教育の場に反映されたといえます。

 その流れは戦後に大きく変わり、1947(昭和22)年に小学校5、6年生の男女を対象とした科目「家庭」が新設。現在の学校教育に受け継がれています。

 家庭科といえば、小学校で裁縫セットを買った経験を覚えている方も少なくないでしょう。大人になっても使用できるほど丈夫なプラスチック製の箱。昭和や平成初期に小学生だった方には馴染みのある形です。

 今の小学校で扱うセットは一見するとお裁縫セットには見えないお洒落なデザインのカバンやポーチタイプが主流です。しかも、男女別に複数種類が用意され、ひと昔前とは大きく変わっています。

 とはいえ、学ぶことは基本的に昔と同じように「針の使い方」「返し縫い」「玉結び」といった裁縫の基本から学びます。その後、「ナップザック」「ランチョンマット」といった昭和の頃と同じようなアイテムを児童たちは作っていきます。

日本最大級の繊維街・日暮里

 さて、家庭科の裁縫を学ぶ際に欠かせない「布」といった材料を扱う手芸店は、個人店も含め全国の街角に存在していました。今はインターネットや100均で手軽に材料を購入できるようになり、手芸の趣味を始めるのが手軽になった反面、専門店にとって苦しい時代になっています。
 
 しかし、多種多様な布から色味や手触りを直接確認しながら選ぶ醍醐味に敵うものはありません。

実際に手で触ってみないと分からないこともたくさんある(画像:写真AC)

 全国的に「街の手芸屋さん」が姿を消している中、手芸愛好家の聖地とも言える街が東京にあります。それが日本最大級の繊維街である日暮里です。

 日暮里駅東口から歩いて数分の場所にある「日暮里繊維街」は日暮里中央通りを中心に約90店舗が集結しています。どのお店も手芸品全般を扱っているわけではなく、得意な分野や専門分野がはっきりしているお店があるのも特徴的です。

 今では繊維の街として有名な日暮里ですが、当初「繊維の街」として名を馳せていたのは浅草でした。

 東京日暮里繊維卸協同組合のサイト「布の街 布の道 日暮里繊維街」によると大正初期、浅草方面で営業していた古繊維や栽落(たちおとし)業者が日暮里、 三河島周辺に集団移動し、繊維業者が集まる街となった経緯が記されています。

日暮里界隈は見どころ満載

 1923(大正12)年の関東大震災や大戦など激動の時代を駆け抜ける中でも「繊維の街」が消えることはありませんでした。

 戦後、平和な日常が訪れて服飾関係の材料を扱う日暮里の繊維街も安定して商いを行い、特色ある街に発展し現在に至ります。

 今では手芸愛好家が普通に買い物できますが、かつては取引先に品を納めるいわゆる問屋業、卸売りが基本の店がほとんどでした。現在のように小売りをしている店が増えてきたのは平成に入ってきてからで、大正初期から昭和は問屋街の性格が強かったのも嘘のようです。

 扱い品も様々で和洋装、ボタンや毛皮など取り扱う商品は幅広く、日暮里でしか出会えないデザイン性の高い布、海外製の商品や普段使いの材料を少量からでも購入できるのは嬉しい時代の変化です。

手芸店をはしごするのも楽しみの1つという手芸愛好家もいるのでは(画像:写真AC)



 また、愛好家やデザイナーといったプロ向けの商品ばかりが並んでいるわけではありません。裁縫道具も売られており、長くなったおうち時間を利用して「何か作ってみたい」と考えている初心者の方にも優しい街です。

 下町の雰囲気も手伝って、「最近手芸に興味がある」「裁縫するのは何十年ぶり」という軽い気持ちでも楽しく街歩きすることができます。

23区でありながら下町を感じる街

 日暮里は繊維の街として知られていますが、近隣は下町の風情を残した散策スポットとしても有名です。日暮里駅の西口方面には昭和の雰囲気が色濃く残る「谷中銀座」といった人気エリア「谷根千」(谷中・根津・千駄木)があります。

風情ある商店街は歩くだけでも楽しい(画像:写真AC)

 散歩コースとして完璧すぎるエリアとして全国的にも高い知名度を誇ります。東京メトロ千代田線の根津駅や千駄木駅から日暮里方面へ、またはその逆で日暮里から谷根千エリアを散策してみるのもおすすめです。

 隣接する谷根千エリアを含め、街歩きをしながら「昭和の下町」を体感でき、懐かしさを感じつつ童心にかえれる地域です。

 複数の鉄道会社の路線が通っておりアクセスも抜群です。ただし、日暮里の繊維街で想定以上に購入することもあります。リュックサックといった荷物を入れる装備をしてお出かけすることをお忘れないようにしてください。

・日暮里繊維街

JR山手線または京成本線日暮里駅東口より徒歩3分
日暮里・舎人ライナー日暮里駅より徒歩1分

参考

昭和教材株式会社ー裁縫セット
https://www.kyozai.co.jp/publics/index/109/

日暮里繊維街とは
https://www.nippori-senigai.com/about/

文部科学省 「我が国の教育経験についてー家庭科」
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kokusai/002/shiryou/020801ef.htm

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