八王子の住宅街に突如出現! かつての「田町遊郭」とは何か【連載】東京色街探訪(11)
2022年1月10日
お出かけかつて養蚕が盛んだった、東京都西部の八王子市。そんな同市にかつてあった遊廓の跡を、紀行ライターのカベルナリア吉田さんが歩きました。
突然の大通りは田町遊郭跡
かつてここに遊郭がありました。1897(明治30)年の火災で、甲州街道にあった遊郭は、ここ田町に移転した。
すぐ北を浅川が流れる、田んぼばかりの寂しい場所に突然、吉原風の遊郭が誕生。大通りの両側に、20軒ほど貸座敷が並んでいたそうです。
呆気(あっけ)にとられつつ、大通りを歩いてみます。広い道の片側に、八王子食糧倉庫の建物がそびえ、中規模サイズの業務用スーパー(遊郭の跡地だそうです)があり、後は普通に住宅が並ぶだけです。

――よく見ると、そう普通でもない家があります。ジャングルのように生い茂る木々に覆われた、年季の入った木造家屋。それも数か所にあります。
格子板を縦横に、細かく張り巡らせた木造の壁。1階の部屋を目隠しのように囲む、目の細かい格子塀――かつての遊郭の建物が、今も残っているようです。
足を留め、木造家屋の1軒を眺めていると――視線を感じました。道行く高齢の男性が、不審者でも見るように、僕を眺めています。その場を離れ、大通りを進むと丁字路に突き当たり、そこから先は細い路地だけが延びています。大通り、遊郭跡はたぶんここまで。大通りは短くて、長さ200mくらいでしょうか。
狭い道が入り組み、家々が密集するなかに、唐突に残る広い道の遊郭跡。突然、時空のはざまに迷い込んだような、奇妙な感覚に襲われました。
大通りの北に行くと、浅川のほとりに出ました。川べりにススキが茂り、風に揺れている。川は緩やかに流れ、上流のほうに山々の稜線(りょうせん)が見えます。
これが本来の、桑都・八王子の風景なのでしょう。テナントビルだらけの、今の駅前ではなくて。
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