帰省時の必須アイテム「東京土産」の種類が30年間で格段に増えたワケ

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帰省時の必須アイテム「東京土産」の種類が30年間で格段に増えたワケ

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犬神瞳子

フリーライター

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東京から帰省する際の楽しみといえば、お土産選びです。その歴史について、フリーライターの犬神瞳子さんが解説します。

最近のトレンドとは?

 地方出身者が帰省する際、土産は欠かせません。なるべく東京らしく、でも凡庸ではないものを選ぼう――と、頭を悩ます人は少なくないはずです。

 東京土産の定番といえば、東京ひよこ(台東区上野)の「名菓ひよ子」をはじめとして
・東京ばな奈(グレープストーン)
・錦豊琳かりんとう(丸井スズキ)
・芋ようかん(舟和本店)

など、さまざまです。

土産菓子のイメージ(画像:写真AC)



 今回、そのなかのベスト商品を調べようとしたのですが、残念ながらデータが存在しませんでした。雑誌では1990年代まで、場所ごとに最も売り上げた商品を紹介していましたが、近年ではそうした記事やデータが公表されていません。インターネットで「東京土産 ランキング」と検索すると、さまざまなサイトが表示されるものの、当てになるとはいいにくい状況です。

 ということで過去の雑誌記事を調べたところ、戦後の長い時期において東京土産の「選択肢」はさほど多くなく、名菓ひよ子を筆頭に人形焼きや雷おこしなどが定番となっていました。

定番と流行品の戦い

 東京土産の選択肢が増加したのは1990年代でした。

 きっかけは1992(平成4)年に発売された「東京ばな奈」です。今では多くの人が「東京ばな奈 = スポンジケーキにバナナクリームが入った洋菓子」と知っていますが、発売当初はそのユニークなネーミングに引かれて購入する人が多かったのです。これを期にネーミングにアイデアを凝らした東京土産が次第に増加していきます。

 また、土産に生ものが売られるようになったのも1990年代でした。それまで土産は

・帰郷するまでの時間
・相手に渡すまでの時間

を考慮して、日持ちすることが絶対条件でした。

土産菓子のイメージ(画像:写真AC)



 ここに保冷バッグを投入して新たな時代を切り開いたのが、洋菓子のトップス(港区赤坂)です。同社は1993(平成5)年、羽田空港に店舗をオープンした際、冷却が6時間持続する保冷バッグを採用。この生ケーキは人気となり、土産は日持ちが当たり前という常識を過去のものとしたのです。

 ただ、革新的な土産の登場によって市場に劇的な変化が起きたわけではなく、わりとジワジワしたものだったようです。

『東京新聞』1998年3月4日付の記事によると、東京ばな奈や「ハローキティ人形焼」が定番をしのぐ勢いで売れているとしているものの、この記事で紹介された東京駅と羽田空港の東京土産のランキングでは、次のようになっています。

●東京駅
・1位:名菓ひよこ(東京ひよ子)
・2位:人形焼き(常磐堂雷おこし本舗)
・3位:東京しゅうび餡(つるた屋)
・4位:銀座こまち(東京ひよ子)
・5位:文明堂カステラ(文明堂)

●羽田空港
・1位:東京ばな奈(グレープストーン)
・2位:空飛ぶでかドラ(グレープストーン)
・3位:名菓ひよ子(東京ひよ子)
・4位:ドゥーブルショコラオレ(ヨックモック)
・5位:羊かん(虎屋)

 現在はランキング調査が報じられていないため動向は不明ですが、名菓ひよ子など定番品は今でも売り場でよく見かけるため、定番は揺るがず、その後ろで時代ごとの人気土産が現れては消えるを繰り返していると考えられます。

2010年代に起きた変化

 こうして東京土産の選択肢は1990年代に増えたわけですが、次の変化は、東京駅や羽田空港の店舗がにぎやかになった2010年代と考えられます。

千代田区丸の内にある大丸東京店(画像:(C)Google)



 例えば、東京駅に隣接する大丸東京店(千代田区丸の内)は2012年の改装で弁当と土産売り場を大幅に増床しています。さらに、この年の東京駅周辺の売り場動向を見ると、八重洲側地下に江崎グリコや森永製菓などのアンテナショップから構成される「東京おかしランド」がオープンしています。

 また羽田空港では、これより前の2010年に国内線第2ターミナルの拡張などが実施され、土産売り場もより目立つようになっています。

 こうしたインフラ面の変化を経て、選択肢はさらに増加しました。ただそれでも定番が過去のものにならないのは、もはや商品名や箱のデザインだけで東京らしさを象徴するからかもしれません。

 確かに、近年の流行品を選んで「東京でしか売ってないものを買ってきた」と実家にアピールするのも楽しいのですが、定番を山のように抱えて帰るのも、ある意味、楽しいのではないでしょうか。

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