新宿からわずか13kmの桃源郷 森と水田に囲まれた調布市「深大寺エリア」の知られざる魅力とは
2021年12月26日
知る!TOKYO新宿駅からわずか13kmの場所に残る「武蔵野の原風景」。それが調布市の深大寺エリアです。その詳しい魅力について、ライターの野村宏平さんが解説します。
エアポケットのような水田と里山風景
神代農場の南側、歩道橋の下から脇道に入り、谷間に広がる農場を眼下に眺めながら進み、住宅街を抜けると、やがて中央自動車道をまたぐ池の上橋という陸橋が行く手に見えてきます。
この橋を渡らずに手前にある砂利道を左に折れてみましょう。私道のような細い道なので気が引けますが、ここは東京都が選定した「雑木林のみち」のコースにもなっています。
少し進むと道幅はさらに細くなり、両側を金網越しの樹木に挟まれた下りの急坂になります。山道のような丸太の階段を下りていくと、谷底の広場に到達します。

深大寺自然広場(深大寺南町)と名付けられた公園の北端部です。木々で囲まれた広場の脇には、隣接する神代農場から湧き出たマセ口(ませくち)川という小川が流れています。
奥には中央道の高架橋が横切っており、車の騒音に興をそがれますが、その下をくぐり抜けると、約300種類1万本以上の野草が生い茂る野草園の入り口があります。開園期間は3月1日から10月31日までなので冬季は入園できませんが、金網越しになかを垣間見ることはできます。
野草園の東側には「ひきずり坂」と呼ばれる舗装道が通っています。その由来については諸説あるようですが、調布市教育委員会発行の『調布市文化財報告書 調布の古道・坂道・水路・橋』では、「上部はかなり急で、また距離が長いので、荷車のときは加速を押さえるため後ろをひきずるようにしながら下ったことによる名らしい」とされています。
ひきずり坂の向こう側にも深大寺自然広場が続いていますが、こちらは「カニ山」と呼ばれる里山エリアです。麓を流れるマセ口川にかつてサワガニがたくさんいたため、この名前がついたそうです。
山といっても国分寺崖線の一部なのですが、自然が豊かで、奥には雑木林に囲まれた広場やかまど・水洗場を備えたデーキャンプ場(予約制)も設けられています。のんびりと散策したり森林浴をしたりするには最適の場所といっていいでしょう。
カニ山からひきずり坂に戻り、樹木に覆われた坂道を下りきると視界がひらけ、すばらしい風景が目の前にあらわれます。都内ではいまや珍しくなった水田が残っているのです。
水田越しに望む里山はまさに武蔵野の原風景。視線を少し横にずらせば住宅が立ち並んでいるのですが、この一画だけはまるでときが止まってしまったかのようです。新宿駅から直線距離にしてわずか13kmの近郊住宅街のなかに、こんな場所がエアポケットのように残っているのは奇跡といってもいいでしょう。景色を眺めているだけで心が癒やされる場所です。
おすすめ

New Article
新着記事
Weekly Ranking
ランキング
- 知る!
TOKYO - お出かけ
- ライフ
- オリジナル
漫画