豪華船でディナー、ヘリで夜景満喫! バブル期の「クリスマス」は想像以上に勢いがあった!

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豪華船でディナー、ヘリで夜景満喫! バブル期の「クリスマス」は想像以上に勢いがあった!

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星野正子

20世紀研究家

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80年代のクリスマスは現在とは比較にならないほど豪華でした。カップルたちはいったい何を楽しんでいたのでしょうか。20世紀研究家の星野正子さんが解説します。

華やかすぎるクリスマス

 本日はクリスマスイブ――都内にはいくつものクリスマスツリーが飾られ、街角を彩っています。恋人や家族などがいる・いないに限らず、その楽しみ方は年々多様化しています。

 クリスマスイブやクリスマスが、1年に1度の「自らをかけるイベント」になったのは1980年代に入ってから。とりわけバブル時代には、クリスマスイブの夜に高価なホテルを予約し、恋人とロマンチックに過ごすことが「至高」とされました。

 クリスマスイブがとりわけ盛り上がったのは、1988(昭和63)年です。この年は土曜日とイブが重なり、仕事を気にすることなく楽しめたからです。

 そんなこともあり、人気ホテルの部屋を巡る争奪戦は何か月も前から始まっていました。都内の多くホテルでは予約は1~2か月前でいっぱいになりましたが、人気のホテルでは秋を待つことなくいっぱいになっていたのです。

クリスマスのカップルのイメージ(画像:写真AC)



 ウオーターフロントの夜景が楽しめることで人気だった東京ベイヒルトン(現・ヒルトン東京ベイ)は9月に予約満了、それに輪をかけて人気だったのが東京ディズニーリゾート内にあるシェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテル&タワーズ(現・シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテル。ともに千葉県浦安市)でした。

 ホテルのオープンは1988年4月でしたが、オープン前の3月頃から予約が入り始め、お盆過ぎには予約満了に。当時の部屋数は780室。単純計算で1560人の男女がディズニーランドを楽しんだ後、夜景を見ながらロマンチックな夜を過ごしたというわけです。

レストラン船、ヘリコプターという演出

 さて、このすてきなクリスマスを楽しむためには、いったいどれくらいのお金が必要だったのでしょうか? 簡単な概算ですが、当時の相場は

・東京ディズニーランド:1万円強
・ディナー:約3万円
・宿泊費:約3万5000円

程度でした。ふたりで合計約8万円。高いのか安いのか微妙ですが、21世紀の今、話のタネにできると思えば妥当な価格といえるかもしれません。

 シェラトン・グランデ・トーキョーベイが人気だったのは、ディズニーランドとセットで楽しめるため、「失敗が少ない」ことにありました。これが都心のホテルとなれば、○○で夜景を楽しみ、△△で……と移動が自然と多くなり、予想外のトラブルが発生する可能性がありました。それを抑えられたのです。

 そのため、恋愛経験は豊富ではないが「意中の人とロマンチックな夜を過ごしたい」と考える人がこの場所を選んだというわけです。

 翌1989年は「ホテルでディナー」がいささか凡庸になり、それを超える新たなイブの過ごし方が登場しました。その代表格が、東京湾をクルーズする豪華なレストラン船でした。

豪華なレストラン船のイメージ(画像:写真AC)



 当時、東京では3隻のレストラン船が就航していました。元祖とされる「ロイヤルウイング」、はとバスと提携して知名度がアップした「シンフォニー」、船内の見晴らしのよさで知られた「ヴァンテアン」です。

 これらのレストラン船が人気となったのは、料金が「一流ホテルで1泊」よりもリーズナブルであり、若年カップルの受け皿になったからです。

 例えば、ヴァンテアンはフランス料理を楽しめるというふれ込みで、ナイトクルーズは乗船料金2500円、ディナーは6000~1万5000円でした。なるほど、一流ホテルと比べてお手頃です(こちらはひとり分の料金)。

 こうしたクリスマス需要は、年を追うごとに新たな形態になっていきます。

 1990(平成2)年には、羽田空港~横浜みなとみらい間で定期ヘリコプターを就航させていたシティ・エアリンクが、クリスマスの臨時便を実施。値段はふたりで1万1000円。上空からクリスマスイブの大都会を楽しめるのは確かにロマンチックですが、ヘリコプターのため搭乗時間はわずか10分程度。ロマンチックな気分を味わうには、少し短かったのかもしれません。

80年代流「クリスマスの過ごし方」とは

 こうした嗜好は深く浸透しつつも、バブルの崩壊で退潮に転じました。1992(平成4)年には、不況の風が一段と厳しくなり、ホテルの予約は激減。一方、家でのクリスマス需要は高まり、クリスマスツリーなどは売れ行きが好調となりました。

 といっても当時は、まだまだ「クリスマス = カップルで過ごす」が当然な時代。そんななかで相手に恵まれなかった人はどうしていたのでしょうか。

 資料を探すと『朝日新聞』1989年12月19日付朝刊では「男一人の楽しいクリスマスの過ごし方」という記者のコラムが掲載されています。ここで推奨された過ごし方とは、次のようなものでした。

「一番好きな酒を1本用意し、気にいった音楽を部屋中に流す。「ジャック・ダニエルズ」に坂本龍一の「ビュウティ」なんか、どうだろうか。それでも、元気が出ない時は、上野千鶴子の「女遊び」を読むというのもいい」

ウイスキーのイメージ(画像:写真AC)



 ウイスキーを片手に、おしゃれなBGM。かたわらには社会学者のエッセイ……なんとも時代を感じさせるチョイスです。あなたにはどんな思い出がありますか?

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