なぜ地価は上下するのか? 2021年都道府県調査を基に考える

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なぜ地価は上下するのか? 2021年都道府県調査を基に考える

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逆瀬川勇造

不動産ライター

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毎年発表される都道府県地価調査。そこには自宅購入や資産形成に役立てられるヒントが眠っています。不動産ライターの逆瀬川勇造さんが解説します。

都道府県地価調査とは何か

 日本で地価が一番高い土地や、高くなる理由を知りたい人は意外と多いのではないでしょうか。本記事では2021年9月に公表された都道府県地価調査結果や、ランキングトップの土地について詳しくご紹介します。

 地価が高くなる理由がわかれば、自宅購入や資産形成にも役立てられるはず。ぜひ、最後まで読んで将来設計に役立ててみてください。

※ ※ ※

 2021年9月に都道府県地価調査の結果が発表されました。そもそも「都道府県地価調査」とはどのようなものなのかご存じない人も多いでしょう。まずは、都道府県地価調査についてご紹介します。

 都道府県地価調査とは国土利用計画法施行令に基づき、各都道府県知事が毎年7月1日時点での基準地1平方メートル当たりの土地価格を調査、公表しているものです。2021年の都道府県地価調査では、全国で約2万1400地点を対象に実施されています。

銀座四丁目交差点(画像:写真AC)



 土地評価において代表的なものといえば、公示地価があげられます。公示地価とは地価公示法に基づき、国土交通省が毎年3月に全国にある標準地の土地価格(1月1日時点)を公示しているものです。

 公示地価は一般的な土地取引価格の指標として活用されていますが、その年の年末に土地を売買しようと思った場合、社会情勢の変化によって公示地価が適正であるか判断がつかない場合も考えられます。

 こうしたとき、都道府県地価調査によって公表される「基準地価」であれば、7月1日時点での土地評価を表しているため、より実勢に近い土地価格として参照できます。コロナ禍における最新の土地価格として参照できる点からも重要な指標であり、地価公示を補完する役割を持つ指標といえます。

コロナ禍で東京圏の地価はどうなった?

 2021年9月に公表された都道府県地価調査の結果は、一体どのようなものだったのでしょうか。

 全国平均で見ると、全用途平均では下落率は縮小したものの、2年連続で下落する結果という結果になりました。新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響等で、全国の地価動向は下落が続いているのが現状のようです。

都内の空き地イメージ(画像:写真AC)

 東京圏に関しては、住宅地は2020年の変動率0.2%の下落に対して、2021年は0.1%の上昇へ転じています。商業地においても変動率0.1%上昇と、都心部に関しては安定的な需要があり、再開発地域は上昇の傾向にあるようです。

 国内外における観光客の減少など、ホテル需要で上昇してきた地域や飲食店の多い地域については下落が継続しています。結果を見る限りでは、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響がいかに大きいかがわかる結果となった、といえるでしょう。

2021年全国基準地価ランキングを見る

 ここまでは、都道府県地価調査の概要をご紹介しました。

 では、2021年都道府県地価調査の全国基準地価ランキングはどうなっているのでしょうか。「全国基準地価ランキングトップ5」を見てみましょう。

第1位:東京都中央区銀座2-6-7(明治屋銀座ビル)3950万円
第2位:東京都中央区銀座6-8-3(銀座尾張町TOWER)2850万円
第3位:東京都港区北青山3-5-30(ア二ヴェルセル表参道)2700万円
第4位:東京都千代田区丸の内3-3-1(新東京ビル)2690万円
第5位:東京都千代田区大手町1-8-1(KDDI大手町ビル)2560万円

 ランキングトップ5のすべてが東京都心部であり、全国と比較しても群を抜いて地価が高い状況となっています。

 しかしながら2020年と比較すると、全国地価最高額である明治屋銀座ビルも変動率はマイナス3.7%となっており、ここでもコロナ禍の影響がうかがえる結果となったといえます。

「明治屋銀座ビル」ってどんなところ?

 ランキングトップの「明治屋銀座ビル」は、1971(昭和46)年6月に完成したテナントビルです。

中央区銀座にある「明治屋銀座ビル」(画像:(C)Google)



 2021年の基準地価は平方メートル当たり3950万円となっています。コロナ禍の影響もあって昨年と比較して3.7%の下落となりましたが、2位以下に1000万円以上の差をつけています。基準地価調査においては1981年から調査対象となっており、1990(平成2)年と1991年には平方メートル単価3800万円を記録。

 バブル崩壊後は大手町や丸の内のビジネス街が首位となり、一時的にはランキングトップではなくなりました。しかし2006年に再びトップに返り咲いてから、16年連続で基準地価トップの座を守り続けています。

 明治屋銀座ビルのある銀座周辺は、日本有数の繁華街として世界的にも有名です。歴史ある企業や海外のハイブランド旗艦店、高級デパート、高級クラブなどが立ち並び、日本のトレンド発信地として長い歴史を持っているのが特徴といえます。

そもそもなぜ地価が高いのか

 明治屋銀座ビルを始めとした銀座周辺はなぜこんなにも土地が高いのでしょうか。その理由を端的に述べると「銀座」だからです。

 古くから銀座は日本の高級ブランド街として世界的にも有名であり、日本のトレンド発信地として長い歴史を誇っています。そのため、歴史ある企業やブランド重視の業界ほど銀座のブランドを利用して、自社のイメージアップにつなげたいと考えるでしょう。

 こうした考えから銀座への出店を希望する企業が多くなり、結果として地価の上昇につながっているのです。

 今後、明治屋銀座ビルを始めとして、銀座周辺の地価はどのように推移していくでしょうか。

 コロナ禍の影響もあって、明治屋銀座ビルの地価は前年と比較して基準地価は下落しています。今後もコロナの影響が継続するようであれば、基準地価が下落する可能性は考えられるでしょう。

 しかし、世界的に見ても「銀座」のブランド力は高く、一定の需要は十分に見込まれます。今後も日本一地価の高い場所としては、君臨し続けるのではないでしょうか。

地価の把握は資産形成に役立つ

 本記事では、2021年9月に発表された都道府県地価調査結果やランキングトップの土地についてご紹介してきました。

 現在、新型コロナウイルスによる先行き不透明感も強く、全国的に見ると2年連続で地価は下落しています。一方で、東京圏では変動率が上昇するなど、地域差が見られるのが現状です。

大都会・東京(画像:写真AC)



 新型コロナウイルス感染症という未曽有の危機によって私たちの生活や働き方にも変化が見られる時代となってきました。こうした変化のなかで、自宅購入や資産形成を図っていくためには、土地の価格がどのように決まっていくかを理解しておく必要があるのです。

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