「疲れるために行くホテル」とは? 多彩に進化し続ける都内注目ホテルの数々

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「疲れるために行くホテル」とは? 多彩に進化し続ける都内注目ホテルの数々

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シカマアキ

旅行ジャーナリスト、フォトグラファー

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ホテルはもはや、ただ寝泊まりするための場所ではなくプラスアルファの体験や楽しみを提供する施設へと進化を遂げています。都内の最新事情について、ジャーナリストのシカマアキさんがリポートします。

宿泊にプラスアルファの楽しみを

 ホテルが今、ただ寝泊まりするだけの場所にとどまらず“プラスアルファ”の楽しみを提供する場として進化を続けています。

さまざまな形で進化を遂げる、都内ホテルの最新事情とは(画像:BnA)



 特に東京には、世界のホテル業界をリードする取り組みを行うホテルが次々開業。デザインにこだわるだけのホテルから、「お茶」「漫画」といったテーマに特化したホテルまであり、都内に続々登場しています。

 観光庁の「宿泊旅行統計調査」によると、東京都の宿泊施設数は2020(令和2年)年12月時点で3267施設。10年前の2010年12月が1780施設だったので、2倍近くも増えています。

 2010年から新型コロナ禍の直前までインバウンド効果で外国人観光客が増加し続け、ホテル客室不足が深刻化して価格も高騰。東京五輪の開催も決まり、さらに観光地としての魅力も上がると外資系ホテルチェーンが次々と進出しました。

 コロナ禍の影響も少なからずありましたが、アフターコロナを見据えて、2020年以降も国内のホテルやデザイナーらによる個性的なホテルが東京に開業しています。

 ひとりでもカップルでもグループでも、旅行だけでなく近場のステイケーションにも。世界の最先端を行く、東京の「ホテル」最新事情を紹介します。

従来のイメージをくつがえすホテル

●墨田区「KAIKA 東京」

 ちょっといいホテルと言えば「洗練されたデザイン空間」というイメージを抱きがち。この考えをくつがえすかのようなホテルが今、次々と開業しています。

 まず、洗練さとほぼ真逆の発想でデザインされたかのような異空間の体験が味わえるのが、2020年7月オープンの「KAIKA 東京 by THE SHARE HOTELS」(墨田区本所)です。

 浅草に近い場所にある築50年余りの倉庫ビルをリノベーション。これまで異色ともいえる、アート作品を公開保管する収蔵庫とホテルが融合しました。

 ホテル名は「開架」「開化」「開花」という意味を持ち、墨田区の文化発信拠点としての一面も。客室はモダンかつシンプルで、まるでバックヤードに泊まる気分が体験できます。

●日本橋「BnA_WALL」

 ホテルで疲れを癒やすのと逆に、「疲れに行くホテル」のキャッチコピーで話題なのが、2021年2月開業の東京・日本橋「BnA_WALL」(中央区日本橋大伝馬町)です。

キャッチコピーは「疲れに行くホテル」だという「BnA_WALL」(画像:BnA)



 客室26室の「アートルーム」は23組のアーティストが手掛け、内装から家具まですべて異なるデザイン。宿泊費の一部がアーティストに還元されるパトロン方式も、ホテル業界では斬新と言えます。

 館内には、日々描き変わる巨大壁画、地下には工房も。滞在するだけで刺激を受け、活力が得られるホテルです。

「ラグジュアリーライフスタイルホテル」とは?

 近年、世界に名だたるホテルチェーンの東京進出が続いています。その中でも最近は、デザインやコンセプト、そして滞在にこだわったカテゴリー「ラグジュアリーライフスタイルホテル」の開業が目立っています。

 その理由は、数年前から増え続ける訪日客に対し、東京ではホテル不足が顕著化。特に、中高価格帯のホテルが少なく、ホテル不足が顕著化した当時、すでに東京五輪の開催も決まっていました。そのため、外資系ホテルチェーンが次々と東京進出したことが背景にあります。

「ラグジュアリーライフスタイルホテル」とは、デザイン性の高い空間に、宿泊以外の付加価値をつけ、さらにラグジュアリー(高級感)を加味したカテゴリーのホテルを指します。

●港区「東京エディション虎ノ門」 

 2020年10月、マリオット・インターナショナルのラグジュアリーライフスタイルホテルブランドである「エディション」日本1号店として「東京エディション虎ノ門」(港区虎ノ門)がオープン。

ラグジュアリーなホテルのひとつ「東京エディション虎ノ門」(画像:マリオット・インターナショナル)



 伝説のナイトクラブ「スタジオ54」の仕掛人であるイアン・シュレーガー氏がデザインを手掛け、そのイメージを著名建築家の隈研吾氏が具現化したことで知られます。

 ホテルの共有スペースは「仏寺」をモチーフとし、日本伝統の板張り技術「大和張り」や空中に浮かぶかのような庭園やテラス付きレストランなど、どれも豪華かつスタイリッシュ。施設の中だけで「東京」が堪能できるのも、このホテルの魅力です。

●新宿区「キンプトン新宿東京」 

 同じく2020年10月に日本初上陸した「キンプトン新宿東京」(新宿区西新宿)は、こちらもラグジュアリーライフスタイルホテルとして70以上のホテルを世界展開するブランド。

 世界最先端ニューヨークのアートシーンからインスピレーションを受けた、ユニークかつ個性的で楽しいデザインの客室で、快適なホテルライフが満喫できます。

 フレンドリーなスタッフ、これも日本初上陸「バーチコーヒー」での朝食や、愛犬を連れての滞在ができるのも特徴と言えます。

日本ならではのテーマのホテルが増加中

 既存のホテルチェーンにも、おなじみのブランドに日本らしい「テーマ」を加えた魅力を発信する動きが見られます。これは東京を訪れる訪日客に、ホテル滞在においても「日本らしさ」を感じてもらえるよう、その魅力を付加しようとした傾向が表れた結果と考えられます。

●中央区「アゴーラ 東京銀座」

 2021年4月開業の「アゴーラ 東京銀座」(中央区銀座)は、コンセプトが「まちごころにふれる茶邸 わたしの中の“粋”と出逢う場所」です。ホテルの場所は、東銀座駅から徒歩約2分。

和のムードをたたえた「アゴーラ 東京銀座」(画像:アゴーラ・ホスピタリティーズ)



 館内の1階「Ichie・Lounge(いちえ・ラウンジ)」は、茶の湯の邸宅で知られる「茶邸」の居間をイメージしたラウンジ。茶窯の湯で点てた抹茶が味わえます。

 銀座をはじめ街の地図「まちごころマップ」には、利用客やホテルスタッフがおすすめの情報を書き記し、日々更新されるのが魅力です。ホテル屋上12階アウトドアラウンジでは星空観賞も。いちえ・ラウンジは宿泊客以外も利用可能です。

●新橋「ホテル1899東京」 

 東京にある「お茶」がテーマのホテルと言えば、新橋に2018年1月開業した「ホテル1899東京」(港区新橋)。茶室をイメージした4本の柱が特徴的なフロント、ウェルカムドリンクはスタッフ「茶バリエ」が淹れる抹茶または煎茶というこだわりようです。

 客室は庵と縁側をモダンにデザインし、茶筅(ちゃせん)のような照明や、バスアメニティーも緑茶成分入りです。客室でオリジナルの茶葉も急須で味わえ、ホテルオリジナルの茶菓子付き。

 ホテルには、日本茶専門カフェも併設され、「お茶」の良さを、身も心も体感できるホテルとして定着しています。

●神田「MANGA ART HOTEL,TOKYO」

 テーマに特化したホテルはほかに、「漫泊(まんぱく)」体験をうたい多くの漫画を読みながら滞在できる「MANGA ART HOTEL, TOKYO」(千代田区神田錦町)が人気です。

 他にも、滞在中にマンガが読めるホテルは増えており、日本が誇る文化として漫画は国内外の利用者ともに好評なのがうかがえます。

高尾山の最寄り駅に「体験型ホテル」

 東京から遠く離れた地方に多く見られる体験型のホテルも、東京都内かつ鉄道駅の近くに登場しています。

●「タカオネ」

 2021年7月にオープンした高尾山口駅前ホテル「タカオネ」(八王子市高尾町)は、もともとあった古いホテルを京王電鉄が新たに開発。「駅から徒歩数分以内」という便利な場所へのホテル開業は、近年都市部に多い傾向がありましたが、この郊外版と言えるのがタカオネです。

高尾山の登山やテレワークにもぴったりや「タカオネ」(画像:京王電鉄)



 京王線の駅から徒歩1分と最高の立地。館内のカフェ&ダイニングでは八王子産の地元食材を使った料理や焚火を使ったメニュー、ショップではハイキング靴の無料レンタルもあります。

 高尾山登山の際だけでなく、テレワークプランもあって、レジャーとビジネスともに利用できるのもメリット。都会の喧騒(けんそう)からしばし離れ、日帰りだけでなく数日滞在してリフレッシュするのも良いでしょう。

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 デザインに加え、テーマやコンセプトを持ち、時代のニーズにも合わせた新規開業するホテルの数々。東京に今あるホテルは間違いなく、世界をリードする魅力にあふれている施設が多くあります。

 近場だからこそぜひ今、体験してみてはいかがでしょうか。

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