90年代を彩った音楽「渋谷系」 アーティストを網羅した力作マップにSNSユーザー4000人が驚嘆「とてつもない意義」

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90年代を彩った音楽「渋谷系」 アーティストを網羅した力作マップにSNSユーザー4000人が驚嘆「とてつもない意義」

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あっと驚く衝撃の場面、感心させられる発見や豆知識、思わず涙を誘う感動の出来事……。SNS上では毎日、新鮮な話題がいくつも発信されています。そのなかから「東京」に関連するものを厳選してご紹介します。

90年代、若者を魅了した音楽ジャンル

 1990年代、東京・渋谷を発信地として若者たちの注目を集めたJポップのジャンル「渋谷系」。

1992年9月に発売されたピチカート・ファイヴ『スウィート・ピチカート・ファイヴ』(画像:日本コロンビア)



 フリッパーズ・ギターやピチカート・ファイヴなどのアーティストたちを指し、渋谷に軒を連ねたレコード店で世界中の音楽を聴いた世代による、おしゃれでほどよい脱力感のあるサウンドが特徴とされました。

 90年代後半以降、流行の第一線からは徐々にフェードアウトしていきましたが、その独特な魅力に引き付けられるリスナーは今なお多く存在します。

 このたび、関西在住の大学生ど~でん(@WUG_dodensei)さんが制作してツイッターにアップしたのは、「渋谷系マップ」と名付けた数々のアーティストたちの分布図です。

時代を超えて系譜を表現したマップ

「渋谷系マップ」の図上には、

・打ち込み
・ロック
・ギターポップ
・アキバ系
・ラウンジポップ
・Jazz funk

と六つの系統が表記され、それぞれの色分けのなかに該当するアーティストたちが細かに記載されています。

「渋谷系マップ」(画像:ど~でん さんのツイート)

 小沢健二と小山田圭吾によるフリッパーズ・ギターは「ギターポップ」の領域に、ピチカート・ファイヴやその3代目ボーカル野宮真貴は「打ち込み」と「Jazz funk」の重なる位置に。

 また、きゃりーぱみゅぱみゅ や でんぱ組.Incなど、渋谷系の興隆以降に登場したアーティストたちも数多く記載され、時代を超えてそれぞれの系譜をうかがい知ることができます。

制作者が「渋谷系」に目覚めたきっかけ

 ツイッターに集う音楽好きたちも ど~でん さんの力作に共感し、

「本当すごい!! 製作者さんの熱意を感じました!!! 渋谷系最高!!」
「自分の好きな日本の音楽の半分くらいこの表に入ってる」
「素晴らしい図です! 新しいアーティストさんに出会えるきっかけをくれて感謝」
「このマップ、元来の渋谷系観とは異なる曖昧(あいまい)な音楽ジャンルとしての渋谷系観を一つの形として出した、って点でとてつもない意義があるんじゃないか」

……と、称賛の声を寄せました。コアな音楽ファンを中心に、2021年10月29日16時までに4000件近い いいね が集まっています。

※ ※ ※

 ど~でん さん自身に制作意図などを尋ねました。

――音楽鑑賞に目覚めたのはいつ頃からですか。

「小さい頃から親の影響もあり、ポルノグラフィティ、平井堅、m-floなどのJポップをよく聴いていました。中学生の頃はKポップにハマり、東方神起、少女時代、KARAなど韓国発のアイドルの音楽をよく聴いていました。高校生では、合唱曲をよく聴いていました」

「その当時は音楽ジャンルという枠組みを全く意識していませんでした。意識的に音楽を聴き始めたのは大学生になってからです。高校生の頃アニメに少しハマっていたこともあって、大学生でアニソンをよく聴くようになり、そこから音楽の内容を意識して聴くようになりました」

――今回の「渋谷系マップ」を作った動機・理由を教えてください。

「アニソンにハマり、田中秀和さんという作曲家さんの作る音楽が好きなことに気づきました。田中さんの音楽のルーツに渋谷系があることを知り、渋谷系という言葉に興味を持ち、ほかに渋谷系と呼ばれるアーティストの音楽を聴いてみようということで聴き始めました」

「少し調べてみると、渋谷系と呼ばれるアーティストは多ジャンルにわたって存在し、自分のなかで渋谷系が指す音楽的な特徴が分からなくなりました。しかし、その多様性とあいまいさが心ひかれる一因でもありました」

「調べれば調べるほど『これも渋谷系であれも渋谷系なのか』と発見があり、自分の渋谷系観が少しずつ明確になっていくのが楽しかったです。ある程度渋谷系について調べきって、渋谷系にある何かぼんやりとしてあいまいなイメージを形にしたいなという気持ちが強くなり、この画像を作る流れとなりました」

最も好きな渋谷系アーティストは?

――多数のアーティストが記載されていますが、ピックアップの基準を教えてください。

「私が思いつく限りのアーティストと作曲家、またアキバ系についてはコンテンツとして渋谷系をポイントにしているものがあるため、コンテンツの名前を挙げました。1~2曲程度しか渋谷系に当てはまるような音楽をリリースしていないアーティストも含めています」

「入れることを忘れていたアーティストさんもいらっしゃって、申し訳ない気持ちがあります」

――マップの制作時間と、作る際の苦労した点、工夫した点を教えてください。

「要した時間は5時間程度です。大変だったのは、どこにどの音楽性のアーティストを置くかというところです。複数の音楽ジャンルをやってのけるような幅の広いアーティストが多数いらっしゃるので、そのニュアンスを一番出せるような配置を考えました」

――最も好きな渋谷系アーティストと、ご自身の思い出を教えてください。

「マップ上に挙げているアーティストならば、右上の田中秀和さんです。アーティストというより作曲家さんなのですが、田中さんの作られる音楽で今の私が作られているといっても過言ではありません」

「私が田中秀和さんを意識したのは、Wake Up, Girls!さん(以下、WUG)という声優アイドルにハマってからで、WUGのなかで特に好きな音楽の作曲がことごとく田中さんの音楽でした。WUGは2019年3月に解散してしまったのですが、その解散に向けて書いた曲『土曜日のフライト』は私のなかで一番大切な曲になっています(そちらの音楽は渋谷系のような要素がない曲ですが……)」

「田中さんは『アイドルマスター』シリーズのアニメ作品の劇伴(テレビドラマの放送などで場面の背景に流される音楽)や『アイカツ!』シリーズでの劇伴、歌モノにおいて、渋谷系ミュージシャンをリスペクトしたような曲をたくさん書かれていて、そのポップさ、キュートさ、オシャレさに衝撃を覚えました。アキバ系のアイドルらしいキュートさと、渋谷系アーティストの音楽のいいとこどりに、田中さん特有のメロディー、コードワークが合わさって、唯一無二の曲がたくさんリリースされています」

系譜を受け継ぎ変化する「渋谷系」

――最後に読者にひとことお願いします。

「渋谷系という言葉は非常にデリケートな言葉で、画像で挙げたアーティストのなかには、渋谷系という言葉で語るのはふさわしくないのではないかと考えている方もいらっしゃるとは思います。しかし、時代の移り変わりで言葉が変容するように、渋谷系という言葉が表す内容も時代の流れとともに刻々と変化しているように感じています」

「私自身はアニソンから渋谷系を知った人間で、そういった人間からは渋谷系がこういう風に見えているというひとつの例として見ていただければと思います。ぜひ、見てくださった方もご自身の観点からマップを作ってみてほしいなと思います」

※ ※ ※

 脈々と系譜を受け継ぎながらも変化し続ける「渋谷系」音楽と、アーティストたち。時代を超えて自分の好みに合った作品を出会うきっかけを、ど~でん さんのマップは提供してくれそうです。

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