店主が貫く頑固一徹ラーメン道 高田馬場の伝説「べんてん」の鮮烈な記憶【連載】ラーメンは読み物。(4)

雨後のタケノコのごとく生まれ、そして消えてゆく都内のラーメン店。そんな激しい競争を勝ち抜いた名店を支える知られざる「エネルギー」「人間力」をフードライターの小野員裕さんが描きます。


自家製麺ブームを作った

 開店当初、田中さんは製麺所の麺を使用していましたが、どうしても納得がいかず製麺機を購入して自家製麺を始めました。

 当時、べんてんが自家製麺を作っているとうわさが拡散。新旧のラーメン店が同社の製麺機を購入するブームが起こり、店主の田中さんは製麺機会社に感謝されたとの話もあります。

べんてんの製麺機。写真は移転後のもの(画像:小野員裕)

 中太の多加水麺はツルツルで滑らか。ゆで上がりもラーメン、つけ麺などメニューに合わせてドンピシャです。自家製麺は並盛りで350g、中盛りで600g、大盛りで1kgと、大食漢や学生、サラリーマンの胃袋をわしづかみにしていました。

 また特別メニューが月1で披露され、甲殻類などでダシを取ったラーメンを提供。べんてんファンにとってそのイベントは、ひとつの楽しみでした。

ラーメンのが持つ四つの魅力

 べんてんのラーメンは

・大ぶりな肩ロースのチャーシュー
・下味のしっかりしたメンマ
・力強いスープ
・滑らかな麺

がよく絡み、特に奥深いスープは思わず飲み干してしまうほど。

 つけ麺は長めにゆでた麺がさらに滑らかで、つけスープは酸味とほどよい甘味があり、食欲が加速します。塩ラーメンはやや固めにゆでた麺の上に、ネギやショウガを乗せ熱々の油をかけて仕上げます。貝類の元ダレとスープが合わさり、さっぱりとしながら底力のあるおいしさです。

 現在人気のラーメン店の店主も多く訪れていました。よく見かけたのが千歳船橋「勢得」(世田谷区桜丘)のご夫婦。松戸「とみ田」( 千葉県松戸市)の店主。東池袋「大勝軒」の店主。上板橋「魂の中華そば」(板橋区上板橋)の店主などです。

 どの店主もべんてんの味の謎を探ろうと、具材やスープの具合、田中さんの一挙手一投足を逃さず観察していました。

 ファンからの人気もさることながら、ラーメン専門店からも一目置かれる存在となり

「高田馬場で抜群においしいラーメンはべんてんしかない」

と誰もが口をそろえて言うほどでした。

べんてんのスープ。写真は移転後のもの(画像:小野員裕)

 さまざまなメディアからの取材申し込みも多かったのですが、田中さんは頑固な職人を絵に描いたような人で、電話の応対や態度が悪いと即座に取材を断るかたくなさでした。

 そんな人気絶頂の最中、田中さんは体調不良などの影響から閉店を決意。うわさを聞いたラーメン屋の店主、ラーメンフリーク、べんてんファンが連日訪れ、いつも以上の長蛇の列となりました。

 閉店日のカウントダウンとともに行列の長さは増し、閉店日の前日には夕方から並び始め、翌日は160人強の大行列となり、各種メディアに取り上げられるほどでした。そして2014年6月28日をもって閉店。高田馬場でおよそ十数年の営業でした。

閉店2年で復活


【画像】高田馬場時代の「べんてん」

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