都会のカフェチェーンで「勉強する人」をやたら見かける理由

東京を始めとする大都会のカフェチェーンに行くと、必ず見かけるのがパソコンで勉強をしている人たちの姿です。彼らはなぜカフェチェーンにわざわざ行っているのでしょうか。日本女子大学人間社会学部准教授の田中大介さんが解説します。


セルフ方式という空間

 それならば、無料で利用でき、集中して勉強や読書をする人がたくさんいる図書館に行けばいいと思いますが、図書館はマナーに厳しい、振る舞いが抑制された空間です。真面目に勉強や読書をしなければ、という緊張感や拘束力があります。

 自宅だと人目を気にせず緩んでしまうし、図書館はマナーを意識するあまり抑制が強い――もう少し気楽に「スマートに勉強する自分」になるにはどうしたらいいのか。そんなとき、カフェだったらリラックスとテンションをほどよくあんばいできる空間になり、カフェチェーンであれば都市に多数存在するため、すぐにアクセスできます。

カフェで勉強・仕事をする人のイメージ(画像:写真AC)

 また、近年のカフェチェーンの多くがセルフ方式である点も重要です。

 昔ながらのフルサービス方式の喫茶店だと、店員が注文を取るために店内を見回し、案内・給仕で店内を動き回っています。その役割がオーナーや店長であれば、いつも同じ人がその空間を管理することになります。

 一方、セルフ方式の場合、最初に飲食物を購入すれば、あとはおおむね放っておいてくれますから、自分のやりたいことに集中できます。カフェチェーンの店員はアルバイトも多く、比較的入れ替わりが頻繁です。そのため、同じ人がいつも見ているという緊張感も相対的に少なく、長居しやすくなります。

 ちなみに1980年代に喫茶店の事業所数は15万店舗台でしたが、2010年代後半以降になると6万店舗台に減少しています。ただし減少したのは個人経営の喫茶店で、カフェチェーンの店舗数は1位から10位までの企業で計約6000店舗以上となり、カフェチェーンの占有率が高くなっています。

 近年のカフェは「流動性の高い匿名的な空間」になることで、長時間、自分のことに集中する人たちを自ら呼び込んでいるともいえそうです。最近ではWi-Fiやコンセントを設置するお店も多いため、長時間滞在と回転率のバランスは永遠の課題なのかもしれません。

「有料」が及ぼす効果

 さらに、こうしたカフェが飲食代を先に支払う必要がある「有料」の空間であることにも意味がありそうです。

 自宅や図書館のように無料の空間なら、飲食代は支払う必要のないお金です。払わなくてもいいのに払っているというのは、心理学でいう「認知的不協和(個人が持つふたつの認知の間に不一致、不調和が生じること)」の状況です。

図書館に勉強・仕事をしにきた人のイメージ(画像:写真AC)

 しかし、その認知的不協和を解消すべく、

「せっかくお金を払ったのだから、そのコストを無駄にしないよう集中しよう」

と考えるようになったらどうでしょうか。それもまた、積極的に勉強する理由になりそうです。

 一般的に勉強は「やりたくないこと」ですし、そのモチベーションを上げることも簡単ではありません。なにか理由を求めてしまうものです。

 だとすれば、その理由やモチベーションのリソースとして、先ほど書いたカフェの「演劇性」や先払いのコストが使われているのではないでしょうか。やりたくないことに、ちょっとだけ「やりたい理由」「やる言い訳」を付け加えてくれる空間でもあるわけです。

現代社会に潜む快適さへの欲望


【図表】カフェのブランド調査、1位は「スターバックス」だった!

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