おむすび1日18個も食べて破門に 泣き虫お相撲さんの「倍返し」物語【連載】東京すたこら落語マップ(14)

落語と聞くと、なんとなく敷居が高いイメージがありませんか? いやいや、そんなことないんです。落語は笑えて、泣けて、感動できる庶民の文化。落語・伝統話芸ライターの櫻庭由紀子さんが江戸にまつわる話を毎回やさしく解説します。


ご恩忘れず、みるみる出世力士に

 あくる朝、宿の主に連れられて巣鴨の庚申塚、本郷追分けを通り、根津七軒町の親方、錣山親方の部屋に着いた。部屋のひいきの旦那だということで、すぐに中に通される。親方は、小さくなっている長吉を一目見て気に入った。

「お前さん、何が好きだ。ん? 酒も女も博打もやらない? それよりも飯が好き?」

 面食らう親方に、主が長吉に代わっていきさつを話した。

「あたしが月に5斗俵を2俵仕送りするんで、どうぞ世話をしてやってください」

「武隈関は勘違いをしてるようだな。相撲取りが飯を食えないなんてこたあ、あっちゃならねえ。にいさん、うちは飯の心配はいらねえよ。なんぼでも食ってくれ。旦那、仕送りの必要はありません。その代わり、この人が幕に入るようになった時に、印もんのひとつもこさえてくれたら結構です」

 錣山親方の温かい言葉に、長吉はまた涙。親方が前相撲をとっていた時の名前「小緑」をもらった。

「そりゃあ、ありがたいなあ。関取の出世名、小緑だ。しっかりおやんなさいよ!」
「へえ!」

 1815(文化12)年12月、麹町報恩寺の相撲番付に初めて名前が載り、序の口・スソから4枚目に小緑長吉、翌13年2月の芝西久八幡の番付に序の2段目、スソから24枚目と躍進。その間100日とたたない内、番付を60何枚と飛び越した古今に珍しい出世。

 いよいよの入幕は1822(文政5)年、蔵前八幡の大相撲だ。小緑あらため小柳長吉と改名し、初日、2日目、3日目と連勝。4日目の取り組みの中に、武隈と小柳があった。

「明日はお前の旧師匠、武隈関との割りが出たぞ。しっかり働け」
「明日の相撲にすべりましては、板橋の旦那に合わせる顔がございません」

 飯の敵・武隈文右衛門との取り組みは、双差しで小柳の勝ち。この取り組みが、長州侯のお目にとまった。阿武松緑之助と改名し六代目の横綱を張るという、出世力士のおめでたい噺。

ゆかりの地・板橋を巡る


【画像】お相撲さんの浮世絵

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