おむすび1日18個も食べて破門に 泣き虫お相撲さんの「倍返し」物語【連載】東京すたこら落語マップ(14)

落語と聞くと、なんとなく敷居が高いイメージがありませんか? いやいや、そんなことないんです。落語は笑えて、泣けて、感動できる庶民の文化。落語・伝統話芸ライターの櫻庭由紀子さんが江戸にまつわる話を毎回やさしく解説します。


最後にたらふく飯を食いたい

 とって返して平尾の橘屋善兵衛の旅籠(はたご)を宿に決め、宿代に25銭を前払いし、残りで飯をもういいというだけ出してくれと頼んだ。

 女中も、面白い客が来たと飯を出していたが、お鉢を3度取り替えても継続中というのだからたまげた。帰ってきた宿の主に話をすると、こちらも驚きながらも「おかずが足りないだろうから、お菜を差し上げて。あたしも見学に行くから」と、大食い見物になる始末。

 宿の主が部屋に行ってみると、若い者が涙を流しながら飯を食べている。これは訳ありかと主が促してみると、「恥をお話しするようですが」と話し始めた。

「相撲取りになろうと、京橋の武隈文右衛門という親方に弟子入りして小車という名前をもらいましたが、大飯食う奴は相撲取りになれないから国へ帰れと、一分の金を持たされて暇を出されました。大飯で破門されたなんて、国にも帰れねえ。ならば、渡しの川に身を投げて死のうと思い、こうやって飯を食っております。1杯食べるごとに、寿命が縮まるってわけで……」

 話を聞いた主は、無類の相撲好き。この若者がこの旅籠に泊まったのも何かの縁だ。

「そりゃ気の毒な話だ。ってぇことは、あなたが相撲取りになったら死ななくて良いんでしょう。懇意にしている部屋があるから、お世話しようじゃないか。お前さんが一人前になるまで、月に5斗俵を2俵の米を仕送りしてあげよう」

 主は、根津七軒町の親方、錣山(しころやま)喜平次の名を伝えた。

「この人は、強くて情もある良い親方だ。人間ってのは、勇気を出さなくちゃならない。明日連れてってやるから、しっかりおやり」

「ありがとうございます……!」

 生きる希望が出てくると飯もおいしい。その晩はゆっくり枕についた。

ご恩忘れず、みるみる出世力士に


【画像】お相撲さんの浮世絵

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