渋谷の落書きはどう再現してる? プロしか知らない「都内ロケ」の世界とは

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渋谷の落書きはどう再現してる? プロしか知らない「都内ロケ」の世界とは

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夏野久万

フリーライター

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明治神宮外苑のイチョウ並木、新宿アイランドタワー前の「LOVEオブジェ」、目黒川沿いなど、東京都内には数々の有名ロケ地があります。でも、もっとディープでプロしか知らない穴場スポットを知りたいという人に、フリーライターの夏野久万さんが「東京ロケーションボックス」を取材しました。

穴場スポット、教えちゃいます

 東京都内で有名な撮影スポットはたくさんありますが、たびたび撮影に使われているにもかかわらずあまり知られていないロケ地もあります。

 そこで都内ロケ地での円滑な撮影をサポートする、東京観光財団「東京ロケーションボックス」に、穴場のロケ地情報を聞きました。

「東京ロケーションボックス」とは?

 東京ロケーションボックスは、映画やドラマなどを制作する際に、映像制作会社などがロケ地での撮影を円滑にできるように幅広くサポートしている組織です。東京都が公益財団法人の東京観光財団に委託し運営しています。

“本物”と見まがうほど再現度の高い、渋谷という設定の撮影シーン。実際の場所は?(画像:東京ロケーションボックス)



 主なサービス内容は、都内ロケ地に関する情報提供のほか、撮影許可に関する業務、ロケ当日の立ち会いなど、都内ロケ地に関わる業務をトータルでおこなうプロフェッショナルです。

 さらにロケ支援した作品を活用して、東京の観光振興や地域活性化を目指した活動も行っています。

 そんな都内ロケ地の専門家である、東京ロケーションボックスに聞いた、興味深い穴場ロケ地を紹介します。

渋谷と化した「隅田川テラス」

 隅田川沿いの水辺空間として多くの人に親しまれている「隅田川テラス」。隅田川の両岸約47kmのうち、約28kmの区間が隅田川テラスとして利用されています。

 このエリアは、東京ロケーションボックスが支援した作品以外にも、数多くの映画やドラマ、CMなどで使用されているのをよく見かける、人気のロケ地です。

 2021年に公開の映画『東京リベンジャーズ』でも、隅田川テラスが利用されています。

スカイツリーが映り込まないように

 大勢のヤンキーが広い階段に集まる、けんか賭博のシーン。劇中の設定は渋谷でした。

 しかし渋谷の街中でのけんかシーンの撮影は現実的でないということで、隅田川テラスの墨田区首都高速道路高架下のエリアを飾り込んで、不良の集まる荒廃した広場に仕立てて、撮影が行われれました。

 カメラを川側に向けると、スカイツリーがドーンと映りイメージと違うため、あくまでも首都高速の下の階段部分を中心に撮影されたそうです。

「いざ映画を見てみると隅田川沿いで撮影されたとは到底思えないところが、映画の“嘘の力”。世界観を構築する役者を含め、制作陣の力を感じました」

と、東京ロケーションボックスの佐藤さんは語ります。

数々の有名作品で登場する人気スポット

 また映画の世界観にあった「渋谷の雰囲気」を演出するため、壁には落書きが描かれました。そこに美術装飾の技が炸裂! 

 コンクリートに似た壁を用意し、そこに落書きアートを施すことで、実際の壁を汚すことなく落書きを演出。壁の設置が難しい場所には、簡単に剥がしやすいステッカーが使われました。

ロケ地として人気の高い「隅田川テラス」(画像:東京ロケーションボックス)



 しかも撮影時期は2020年3月・翌年1月という寒い季節にもかかわらず、撮ったのは夏のシーン。

 俳優さんの大変さはもちろんですが、ロケ地にある施設を守りつつ、映画の世界観を再現している制作者の姿勢にも、心打たれました。

 このほかにも隅田川テラスは、映画『3月のライオン』(2017年)で、零(神木隆之介さん)の前でひなた(清原果耶さん)が涙するシーンや、木村拓哉さんと上戸彩さんの共演で話題となったドラマ『アイムホーム』(2015年、テレビ朝日系)などの撮影でも利用されています。

中央区が水戸に変身「下水道専用道路」

 中央区浜町から同区岩本町まで続く、下水道専用道路。かつては用水路でしたが、現在は暗渠(あんきょ)となっています。ビルとビルのすき間を通る細い道で、何も知らなければ見過ごしてしまいそうな路地です。

見落としてしまいそうなビルのすき間の細い路地も、たびたび使用される重要なロケ地(画像:東京ロケーションボックス)



 映画『図書館戦争 THE LAST MISSION』(2015年)では、千代田区東神田・中央区東日本橋周辺の下水道専門道路で撮影が行われました。

 堂上篤(岡田准一さん)と笠原郁(榮倉奈々さん)が攻撃を受けながらも目的地を目指す、あの終盤のシーンです。

 現地の掲示板は「水戸市からのお知らせ」と加工され、茨城県水戸市に関するポスターが貼られ、東京の路地を「水戸市」に仕立てていました。

 筆者も映画を見て確認してみましたが、確かに「水戸市からのお知らせ」掲示板が一瞬映っていました。

 正直なところ大きく映る場所ではなかったので、掲示板をわざわざ水戸仕様にしなくてもストーリーは成り立つような気がしました。それにもかかわらず、独自の世界観を出すために細部にまで気を配る映画制作者たちの姿勢は、脱帽です。

 ぜひ皆さんも、作品を見て確かめてみてください。 

 ほかにも、映画『東京喰種トーキョーグール』(2017年)、『麻雀放浪記2020』(2019年)、テレビドラマ『絶対零度~未然犯罪潜入捜査』(2018・2020年、フジテレビ系)と、名だたる作品のロケ地として使われているので要チェックです。

話題作『キャラクター』はアメ横で撮影

 菅田将暉さん、Fukaseさん(SEKAI NO OWARI)、高畑充希さん、中村獅童さん、小栗旬さん……と豪華俳優陣が集結することでも話題を呼んだ、ダークエンターテインメント映画『キャラクター』(2021年)。

 主要キャストである菅田さん、Fukaseさん、小栗さんが集った緊迫するシーンは、上野の人気スポット「アメ横商店街」の高架下で撮影されました。

菅田将暉さん、Fukaseさん、高畑充希さん、中村獅童さん、小栗旬さん、豪華俳優陣が集結した映画『キャラクター』はアメ横商店街で撮影(画像:東京ロケーションボックス)



 長時間におよぶ撮影が行われたそうです。大変な思いをして撮影されたシーン。ぜひ映画でチェックしてみてください。

羽村市内の商店街が「香港」に!

 羽村市富士見平にあるマミーショッピングセンター、日本住宅公団(現・UR都市機構)の羽村団地に隣接する商店街として、1974(昭和49)年にスタート。レトロな雰囲気が残る商店街のためか、さまざまな映像のロケ地としても愛されています。

 2019年に公開された映画『コンフィデンスマンJP ロマンス編』で、氷姫と呼ばれるラン・リウ(竹内結子)の元夫・孔海東を見つけたシーンをおぼえていますか?

 あのシーンに出てきた飲食店街は、羽村市内にあるマミーショッピングセンターで、香港の飲食店街に見立て、撮影が行われました。

 ちなみに、このほかにも、TBSテレビ系ドラマ『99.9 刑事専門弁護士 SEASON II』(2018年)の撮影や女性アイドルグループのミュージックビデオなど、多様な撮影に使われています。

大ヒット映画「花恋」の新宿地下道

 続いて紹介するのは、ロケ地に選ばれる頻度はあまり高くはないため超レアなロケ地情報です。

 東京都庁第1本庁舎から小田急ハルク前付近へ至る、約1kmの地下歩道「タイムズ・アベニュー(新宿歩行者専用道第2号線)」です。

2021年の大ヒット映画『花束みたいな恋をした』で使われた新宿地下道(画像:東京ロケーションボックス)



 こちらで撮影されたのは2021年、涙腺崩壊したファン続出の恋愛映画『花束みたいな恋をした』です。

 麦(菅田将暉さん)が、就職活動で疲れ切っている絹(有村架純さん)を迎えに行くシーンが撮影されました。

 撮影は2月の夜に行われましたが、シーンは夏の設定だったため、麦役の菅田さんはTシャツに短パン、ピーチサンダルという姿。なるべく役者さんに寒風があたらず、なおかつ人通りの少ない場所ということで、こちらの場所が選ばれたそうです。

 ロケ地選びひとつとっても、さまざまなことに配慮され選択されていることが垣間見える話です。

ロケ裏事情を知ると感動も倍増

 都内のロケ地はどんなところがあるのだろうと、興味本位で始めた取材。映画やドラマに関わる人たちの熱い思いに触れ、心が温かくなりました。

 新型コロナ禍ということもあり、撮影や制作は大変かもしれませんが、今後も東京でたくさんのストーリーを見せてほしいものです。

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