徹底比較! シェアサイクルと自家用自転車、結局どっちがオトクなのか?【連載】シェアサイクルだよ人生は(4)

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徹底比較! シェアサイクルと自家用自転車、結局どっちがオトクなのか?【連載】シェアサイクルだよ人生は(4)

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石坪マナミ

シェアサイクル愛好家

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都心部を中心に注目を集め始めている新たな交通手段、シェアサイクル。その魅力をもっと多くの人に広めたいと意気込むシェアサイクル愛好家の石坪マナミさんが、東京の街をシェアサイクルで華麗に駆け抜け、現状や課題、そして将来展望についてリポートします。

シェアサイクルの普及と付随する問題

 コロナ禍の影響で、シェアサイクルが普及するようになってから1年以上がたちました。今では、東京のあちこちでシェアサイクルを利用している人の姿を見かけます。

ちょっとした移動に便利なシェアサイクルは、コロナ禍も背景に急速に需要が伸びている(画像:写真AC)



 しかし大きな問題があります。シェアサイクルを導入している自治体は、需要に対して台数を増やしていますが、エリアによっては供給が追いついていないところもあります。そのため、スマートフォンでサイクルポート(自転車置き場)を探して、現地に行っても

・自転車がない
・自転車のバッテリーが切れている

という状況に遭遇することも増えています。

 そんなこともあり、シェアではなく、いっそ自前の自転車を買ってしまおうと考える人も少なくありません。実際、わざわざサイクルポートまで移動することがなくなるため、自転車を買えば利便性は高まります。

 ということで今回は、シェアサイクルを使い続けるのと、自転車を買ってしまうのと、どちらがお得なのか考えてみました。

月額プランのあるシェアサイクル

 まず気になるのは費用です。

 通勤通学で週に5日以上利用すると考えれば、シェアサイクルの場合、月額プランを利用するでしょう。都内でよく見かける赤い車体の「ドコモ・バイクシェア」の月額料金は2200円で、何度利用しても30分以内は定額。30分以上の超過料金は、30分ごとに110円となっています。

 1年(12か月)利用するとして、電動自転車の人気車種の価格と比較してみます。なお参考にしたのは、各種サイトの実勢価格(実際に市場で取引される価格)です。

・ブリヂストン「アシスタU STD」:8万5591円(税込み)
・パナソニッ「ビビ・SX」:8万9889円(税込み)
・ブリヂストン「ビッケモブdd」:13万8600円(税込み)
・シェアサイクル:2万6400円(1年)

「アシスタU STD」「ビビ・SX」は、両メーカーの最安価格帯して人気の車種。「ビッケモブdd」は、子どもを乗せることを前提とした人気車種です。

「アシスタU STD 26型 内装3段変速 F.Xカラメルブラウン」(画像:ブリヂストン)

 電動自転車は普及によって低価格化が進んでいますが、購入するにはまだ決断が必要な価格です。

バッテリー交換を考慮に

 ここで気になるのは自転車の耐用年数です。

 8万円台の車種であれば3年ちょっとの使用で、シェアサイクルの月額料金に並びます。耐用年数は使用状況によっても変わりますが、一般的に8~10年です。雨風に打たれる状態で放置しなければ、これくらいの期間は問題なく使えます。

 ただ電動自転車のため、バッテリーは使うたびに劣化します。こちらの寿命も状況によって変わってきますが、2~5年です。そのため、10年使えたとして、自転車のボディーは問題なくても、バッテリー交換は最低一度行うと考えたほうがよいでしょう。なお、バッテリー価格は3万円台後半~4万円です。

 上記で示した車種のうちもっとも高価な「ビッケモブdd」を参考にしてみましょう。

「ビッケモブdd ブルーグレー」(画像:ブリヂストン)



 本体価格にバッテリー価格の4万円を上乗せして、17万8600円。シェアサイクルの月額料金は変わらないとして、6年以上乗ればシェアサイクルよりも得する計算です。となると、10年乗ったら、シェアサイクルよりも4年分(10万5600円)がそのまま得になると考えてよいのでしょうか。

使い続けると意外なところが壊れる

 しかし実際に使っていれば、もう少し費用がかかると予想できます。

 まずはタイヤです。都心のアスファルトの上を走っていれば、パンクはめったにありません。上記に示した車種はカタログに「パンクに強いタイヤ」といった表現を使っています。実際、かなり頑丈な素材を使っていて、10年は問題ないともいわれています。

 これらの車種について、筆者はパンク修理・タイヤ交換の話をあまり聞いたことがないので、ついでにインターネットで検索してみましたが、パンク修理を持ち込まれて驚いている自転車店のブログが見つかったくらいです。そのため、タイヤ交換はよっぽどのことがなければ発生しないと思ってよいでしょう。

都内のサイクルポート(画像:写真AC)

 ただ、自転車で毎日通勤・通学しているとトラブルはつきものです。筆者も長らく自転車を愛用していますが、意外なところが壊れます。

 筆者の場合、頻繁に利用していたらサドルが割れて、なかのスポンジが見えるようになってしまいました。そのような前例もあるため、電動自転車を購入してからの10年間で、メンテナンス費用は数万円かかると考えたほうがよいでしょう。

「シェアか購入か」のカギとなるもの

 ここまで、金額を基に比較してきましたが、実際の利用についても考えてみましょう。

 シェアサイクルのメリットは、出先で「さほど長くないが、歩きたくはない距離」で手軽に使える点です。自前の自転車ではこのメリットを得られません。「銀座から新宿まで自転車で移動」なんてことは、時間と体力がなければありえません。

 もちろん、電車に自転車を持ち込めるなら解決するのですが、持ち込む際は折りたたむか、分解して収納するのがルールです。自転車をそのまま持ち込める「サイクルトレイン」は現在、西武鉄道が多摩川線で実証実験を行っていますが(10月1日から本実施に移行)、時間と台数に制限があります。

 折りたたみ自転車であれば難なく電車内に持ち込めますが、ここにも問題があります。ママチャリ以上に走る折りたたみ自転車は「高価」か「重い」、もしくはその両方を備えているからです。パナソニックの電動折りたたみ自転車「オフタイム」シリーズは最新モデルが14万3000円で、重量は20.6kgとなっています。

「オフタイム 18/20型 外装7段変速 マットオリーブ×デザートイエロー]」(画像:パナソニック)



 メーカーが専用の輪行袋(電車内に持ち込む際に自転車を包む袋)を販売しているのですが、20kgの金属の塊を抱えて都内の駅を上り下りするのは簡単ではありません。

 公共交通機関で自転車を楽に持ち運びたいなら、イギリスから輸入されているブロンプトンという車種もあります。コロナ禍以降、都内で見かける機会が増えましたが、最安価格でも20万円前後。そして電動アシストはありません。

 シェアサイクルの需要急増によって、不便が出ていることを考えると、自前の自転車を買ったほうがよいのは確かです。ただ、ここまで書いてきたように、ランニングコストを考えると、10年近く使うのでなければ、損をした気分になるかも知れません。

 シェアか購入かは、使う人のライフプランとともに検討したほうがよいでしょう。

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