「食べていけない」 東京の難関大学で“博士号”を取った女性が、いまも派遣社員を続ける現状

博士号を取ったものの、大学の教員にはなれず企業への就職も難しい「ポスドク問題」。渦中にいる当事者は、どのようなことを経験し、何を感じているのでしょうか。現在、派遣社員として生計を立てる女性の話から、ポスドクの現状を考えます。


変化していった目標とハードル

 2000年代に入ると異変が起こります。大学院のレベルに満たない学力の学生は、たとえ定員割れしていても受け入れないとしていた国立大学が、文部科学省の指導で定員いっぱいまで入学させるようになったのです。

 そのため、例えば他の大学を卒業して東京大学の大学院に進学するといった例もあります。彼らの最終学歴は「東大大学院」であり沢田さんより上。役職を得て、月々の助成金を受けることもあります。

「大学院に進学すれば」が「博士になれば」に変わり、やがて「博士論文を出版すれば」に変わりました。しかし、人文系の研究書は1冊1万円ほど。自費出版的な側面も強く、買取100冊が一般的です。要するに、100万円ないと本は出せないのです。それでもお金を出しさえすれば本を出してくれる出版社があるうちはよかったかもしれませんが、出版不況のあおりで専門書の出版社は廃業が相次いでいるのが現状です。

研究に明け暮れた大学院時代のイメージ(画像:写真AC)

 課程博士になって、自分のこれからを考えたとき「とにかく働かねばならない」と沢田さんは考えました。研究室ではどれだけ学年が上がっても雑用は自分の担当でした。それは性別関係なく、性格なので仕方がないと割り切っていました。しかし、それは教授から自分への評価が“その程度”ということなのだろうと考えました。

 もっとも、雑用をこなすために事務的な技術を身につけていたので、派遣で働くようになった現在は皮肉にも役立つスキルもあると言います。

ニュースになったポスドク問題

 数年前、派遣社員と非常勤講師として働くなか、同じような「ポスドク問題」「高学歴ワーキングプア」で苦しむ人を取り上げたニュースを見ました。共感し、思わず放送局にメールを送ったところ、取材依頼が入ります。

 二度、三度と断りましたが食い下がられ、「先方もお仕事だから」と受け入れました。しかし「ポスドクで収入がないので結婚できない」というストーリーが作られており、それに沿ってインタビューを受けなければなりませんでした。

 放送は見ませんでしたが、再編集されて特集化された番組を少しだけ見ました。自分の姿を珍しいもののように見ながらしゃべる評論家や大学教授を見ることが苦痛で、すぐにテレビを消したと沢田さんは言います。

 取材ディレクターから感想を求めるメールが来ましたが、返信はしませんでした。

リケジョにスポットが当たる裏で


【調査】大学生・大学院生の最新「内定率」

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