岡本太郎の傑作『明日の神話』は、なぜ東京の「渋谷駅」に展示されているのか?
2021年8月24日
お出かけ東京の巨大ターミナル・渋谷駅へ行くと必ず目に飛び込んでくるのが、芸術家・岡本太郎の壁画<明日の神話>です。この作品が渋谷駅にある意味について、チアライターの成田愛恵さんがあらためて問い直します。
描かれたのは第五福竜丸の被ばく
この絵が描いているのは原爆が炸裂(さくれつ)する瞬間と第五福竜丸の被ばくです。
1945(昭和20)年8月に広島、長崎で人に対して原子爆弾が炸裂。その後第2次世界大戦は終戦を迎えますが、米ソの緊張状態は続きます。1950年代はアメリカ、旧ソ連が盛んに核実験を実施。核兵器の威力と核戦争勃発の緊張が高まった冷戦時代でした。
一連の核実験の被害のひとつが第五福竜丸の被ばくです。

1954(昭和29)年3月1日、マーシャル諸島ビキニ環礁でアメリカが水爆実験を実施。爆発によって砕けた珊瑚はキノコ雲に吸い上げられ、放射能を含んだ「死の灰」となり周辺の海や島に降り注ぎました。爆心地から160km東にいた第五福竜丸にも死の灰が降り、乗組員23人が被ばくしました。
<明日の神話>に描かれているのは核兵器の炸裂の瞬間と、それにより放射能や炎に貫かれた人々です。画面上部の一連の不気味な灰色の渦は爆発により発生したキノコ雲。画面右下の擬人化された船は、マグロ漁をしていた第五福竜丸なのです。
岡本太郎は他にも核や原子爆弾の炸裂をテーマにした作品を制作しています。同じく第五福竜丸の被爆を描いた<燃える人>(1955年)や<瞬間>(1955年)、<死の灰>(1956年)など、反核を芸術で発信し続けました。
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