コンクリート地獄だと思ったら大間違い! 東京の「緑地面積」は全国3位だった

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コンクリート地獄だと思ったら大間違い! 東京の「緑地面積」は全国3位だった

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タキダカケル

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自然のない、ビルばかりのイメージがある東京。しかし、意外にも広い緑地面積を誇る都市であるのをご存じでしょうか。その背景と理由について解説します。

都市の緑地面積で東京は全国3位

 東京のイメージは「高層ビル群」「洗練された街並み」ですが、外を歩いていると意外にも緑が多いことに気づかされます。

 先日、日比谷公園(千代田区日比谷公園)を訪れたときのことです。日比谷公園は新橋、有楽町のビジネス街に囲まれた都市公園ですが、園内一体はイチョウの木やアジサイ、サルスベリなどの植物であふれており、東京にいることを一瞬忘れてしまうくらいの風景でした。そこで今回、東京と緑の関係性について紹介します。

千代田区日比谷公園にある日比谷公園(画像:写真AC)



 まず、東京の緑の多さを知ることから始めましょう。緑の多さを表す指標として都市緑地面積(緑化面積)があります。これは植物や木々により緑化した土地の広さを示す値です。

 ウェブ事業を展開するLBBのGraphToChart(グラフとチャート)によると、東京の都市緑地面積は2021年時点で1210haとなっており、北海道と兵庫県に次いで全国第3位にあたります。また大阪府(557ha)と比べて、約2倍も広い都市緑地を有しています。

 都市部に緑が多いと感じるのはもはや体感的なものではなく、数字の上からも明確です。面積や都市部という観点で、大阪と東京は似た条件でありながらも、これほどまでに緑地面積に大きな差が生まれた背景には東京都の緑地化計画が寄与しています。

都市公園の総面積は全国7位

 東京の緑地面積が大きい理由として考えられるのが、都市公園の多さです。国土交通省の資料によれば令和1年時点における東京の都市公園数は3954か所で全国6位、また都市公園の総面積でいうと3137haで全国7位になっています。

 東京都は2013年に「公園まちづくり制度」を創設し、民間敷地の60%以上かつ1ha以上を緑地空間として確保するという要件で、公園および緑地の整備に力を入れてきました。

 また東京都は独自に「みどりの取り組み」という緑化計画を進めており、都市公園を整備することで東京都全体の緑の総量をこれ以上減らさないという施策を打ち出しています。この取り組みによって、2038haの公園面積(2020年6月時点)に加えて、2030年までに130ha増やす長期間の開発目標が掲げられています。

 東京都は以上の政策のもと、都市公園の整備強化という形で緑を確保に着手してきました。これらの取り組みによる緑の変化は目に見えてわかるものではないものの、小さな東京で1210haもの都市緑地面積を支える土台となっています。

渋谷区代々木神園町にある明治神宮(画像:写真AC)



 東京都の都市緑地面積の大きさのもうひとつの理由として考えられるのが、天皇にゆかりの深い土地の存在です。皇居(千代田区千代田)や明治神宮(渋谷区代々木神園町)、新宿御苑(ぎょえん、新宿区内藤町)は民間事業による開発がほとんど行われおらず、これら敷地内にはいまだ多くの緑が残されており、周りから見ても木々の茂みが深いことがよくわかります。

年々進む法と条例の整備

 東京都の緑が多くある背景には都市公園設備だけでなく、法や条例といった整備、また民間企業の取り組みも触れておく必要があります。

 東京都の「東京における自然の保護と回復に関する条例」(2000年)や国による「都市緑地法の改正」(2017年)によって、街づくりと緑の共存を可能にする法と条例の整備が行われてきました。

 より私たちの生活に近いところでいえば、建物の壁面緑化があげられます。国土交通省は壁面・屋上緑化に関する取り組みを推進することで、街中の緑創出を後押ししています。バスタ新宿(渋谷区千駄ヶ谷)は、入り口前の壁面を緑で覆う壁面緑化や屋上に緑化庭園を設置した緑化建築物の代表です。実際に訪れて緑の多さに感心する見物人も少なくありません。

渋谷区千駄ヶ谷にあるバスタ新宿(画像:写真AC)



 東京オリンピックのメイン舞台となった新国立競技場(新宿区霞ヶ丘町)にも、実は緑化が浸透しています。新国立競技場は明治神宮外苑(がいえん)に隣接していることから、その自然景観と融合するよう、また、新宿区と東京都が規定する必要緑地面積にのっとってつくられました。テレビ画面越しで、壁面に植物が植えてあることに気づいた人もいるでしょう。

 国と都の旗振りの元で民間による自主的な緑化も顕著で、不動産会社を中心とした協力事業も目立っています。

 大手町を象徴する高層ビルである大手町ファーストスクエア(千代田区大手町)では、テラススペースに緑化スペースを配置することで、くつろぎと癒やしの空間を演出しています。

 また新宿にある住友不動産新宿ガーデンタワー(新宿区大久保)は周辺に新宿区立大久保きんもくせい公園、三角公園を要しているため、その景観を壊さず町に溶け込むようビル周辺の緑地整備が実施されました。

ヒートアイランド現象対策が急務

 これほどまでに東京都で緑が強調された街づくりが展開されているのには、大きくふたつの理由があります。

 ひとつ目は「都市の防災機能の強化」です。都市公園は緑化の側面を持ちながら一方で自然災害発生時の避難場所としても役立ちます。東京都が2006(平成18)年に策定した「都市計画公園・緑地の整備方針」では防災の観点で公園整備を強化することが決定され、以来地震や大雨の災害発生時の避難所として有効活用がされてきました。

 ふたつ目は「温暖化への対策」です。東京都のヒートアイランド現象による都市の局地的温暖化は近年悪化の一途をたどっています。その証拠として東京都では熱帯夜となる日数が年々増加しており、過去40年間で2倍にまで増加してきました。

 都市の温暖化は都市型集中豪雨の原因ともされており、自然災害緩和のためにも緑地化によるヒートアイランド現象対策が急務とされています。先にご紹介した建物の壁面緑化もヒートアイランド現象の対策の一環です。

夏の東京駅丸の内駅前広場(画像:写真AC)



 東京は緑がない街ではなく、むしろ密接な関係性を育んでいます。先に紹介した「みどりの取り組み」は今後10年単位で進むため、東京の緑化はこれから一層の盛り上がりが期待できます。

 近い将来、東京にあふれんばかりの緑が再生し、江戸時代の「庭園都市」の名を取り戻す時代はそう遠くはないのかもしれません。

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