人のいない巣鴨の裏路地にポツンと存在 小さなアメリカンカフェがコロナ禍でもへっちゃら繁盛な理由

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人のいない巣鴨の裏路地にポツンと存在 小さなアメリカンカフェがコロナ禍でもへっちゃら繁盛な理由

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たまきち川たまきち

都市文化探検隊員

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コロナ禍で多くの外食店が苦しい状況にあるなか、西巣鴨のとあるアメリカンカフェは裏路地にあるにもかかわらず、経営が順調そのもの。いったいなぜでしょうか。都市文化探検隊員のたまきち川たまきちさんが紹介します。

路地裏にあるたった1軒のカフェ

 大正大学と巣鴨北中学校の間の路地に、「AMBER PLACE(アンバープレイス)」(豊島区西巣鴨)というオールドファッションでアメリカンなカフェがひっそりたたずんでいます。

豊島区西巣鴨にある「AMBER PLACE」の外観(画像:たまきち川たまきち)



 2017年11月11日に開業した同店では、若いご夫婦がこだわりのコーヒーと手作りのサンドイッチ、ハンバーガーなどを提供しています。

 ただ、この路地には店が1軒もなく、近所の人が通りすぎるだけで人通りはほとんどありません。普通に考えても「なぜこんなところに……」といった印象です。

 しかしコロナ渦の厳しい状況下でも、お店は健闘しています。一体なぜでしょうか。

手作りへのこだわり

 健闘の背景――そこには主に三つの理由があります。

 そのひとつめの理由は、ひとつひとつ丁寧に手作りされたサンドイッチとハンバーガーです。サンドイッチはクラブサンドイッチやチリビーンズなどの種類があり、筆者は毎回迷います。クラブサンドイッチはアボカドや目玉焼きなどでアレンジできます。

「AMBER PLACE」のクラブサンドイッチ(画像:たまきち川たまきち)

 ハンバーガーは土日しか提供されていませんが、季節限定のメニューなどもあり、ボリューム満点です。ハンバーガーの肉はアメリカ産の赤身にこだわり、バンズも特定のパン屋に特注。付け合わせのフライドポテトも揚げたてで、ジャガイモ本来の味を堪能できます。

 またスイーツも魅力的です。アップルパイやチェリーパイ、季節によってはパンプキンパイなども本場さながらの味。筆者は若い頃、アメリカのカリフォルニアに住んでいたことがあり、これらのパイは当時を思い出させてくれます。特筆すべき再現度ですが、なんと独学で作り上げたといいます。

 そんな手作りメニューが、近所の人を引きつけているのです。

オールドファッションな内装と空間

 手作りなのはメニューだけではありません、お店自体も手作りなのです。これがふたつめの理由です。

 お店は元々倉庫だったため、ご夫婦で相談しながら、棚から家具までデザイン。そしてひとりの大工さんの手によって作られました。ソファにはスタッズ(金属の鋲)が打ち付けてあり、これもさまざまな喫茶店やお店をまわって参考にしました。いわば「物語のある空間」です。

「AMBER PLACE」の内観(画像:たまきち川たまきち)



 ご夫婦は、近所の人がゆっくりくつろげるお店にしたかったそうで、大通りに店舗を出すことは最初から考えていませんでした。実際にコロナ以前は、近隣の小さい子どものいるお母さんたちがおしゃべりしていたり、近所に勤めている人たちがランチをしていたりする光景をよく見かけました。

 アメリカのオールドファッションなデザインと、くつろげる空間作りがこの店の大きな魅力のひとつです。

 そして最後の理由は、店のホスピタリティです。ハンバーガーが提供される土日は、ご夫婦だけでなくバイトスタッフたちが数人いますが、皆それぞれ自然体な接客をするため、すがすがしく気持ちよく過ごせます。

 単なるマニュアル対応ではなく、訪れた人に居心地の良いときを過ごしてもらおうという心遣いが伝わってきます。そうしたことが店の信用や信頼にもつながるのです。

ピンチをチャンスに

 このように、ひとつひとつ丁寧に手作りされたメニューのおいしさはもとより、ゆっくりくつろげる店内の雰囲気や自然体な接客が近隣の人たちに愛されるようになっていったのです。

「AMBER PLACE」の所在地(画像:(C)Google)



 前述のように、コロナ渦のような状況下では、消費者にとって安心感や信頼性は特に重要な選択基準になります。

 現在は残念ながら、平日はサンドイッチのテイクアウトのみで、土日に限り店内でハンバーガーを食べられる状況です。一時は休業していましたが、平日のテイクアウトを本格的に始めたことで、近隣の新たな顧客が開拓できました。お店はコロナ渦というピンチを、今後のチャンスに転換できたといえるでしょう。

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