アニメ「さらざんまい」の舞台! かっぱ・合羽・河童が混在する台東区・合羽橋エリアを読み解く

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アニメ「さらざんまい」の舞台! かっぱ・合羽・河童が混在する台東区・合羽橋エリアを読み解く

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有馬里美

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食器具の宝庫・かっぱ橋道具街などで知られる台東区の合羽橋エリア。そんな同エリアについてアニメ「さらざんまい」を通して考えます。

合羽橋周辺や浅草地域が丁寧に描かれたアニメ「さらざんまい」

 2019年4月に放送された「さらざんまい」は、合羽(かっぱ)橋周辺や浅草地域を主な舞台とするアニメです。河童(かっぱ)型の謎の生物「ケッピ」に出会った3人の少年が、無理やり河童に変身させられてしまうというところから物語が始まります。

 作中では、浅草のシンボル・雷門や隅田川にかかる吾妻橋、合羽橋交差点など、浅草の各地の風景が登場します。「さらざんまい」の特徴のひとつは、実際の風景と比べても遜色ない丁寧な風景描写。アニメファンも登場した場所を巡りやすく、アニメや浅草の盛り上げに貢献しています。

かっぱ橋商店街の入り口(画像:写真AC)



 台東区は2021年春、「さらざんまい」とコラボし、キャラクター装飾がされた緑色の郵便ポストや、イラストが描かれたマンホールを浅草地域に設置。アニメファンがさらに楽しく浅草を回れる観光スポットのひとつとなっています。

 そんな河童がテーマの「さらざんまい」ですが、浅草には実際河童にちなんだ場所がいくつもあります。そこでこの記事では、合羽橋と日本有数の観光地・浅草地域を、「かっぱ」をテーマにその見どころを探ってみます。

「合羽橋」地域の「かっぱ」の由来は?

 浅草地域や合羽橋周辺が登場する「さらざんまい」は河童が登場しますが、実際、合羽橋周辺では、各所に妖怪の河童の像やイラストを見ることができます。しかし、ここで疑問なのが、地名表記は「河童橋」ではなく雨具の方の「合羽橋」であること。この「合羽橋」の「かっぱ」は何が由来なのでしょうか。

「さらざんまい」のウェブサイト



 由来を探ってみると、ふたつの説があるようです。ひとつは、「雨合羽(あまがっぱ)」を由来とする説。昔この地域に住んでいた下級武士たちが、内職として雨合羽を作っており、それを晴れた日には近くの橋に並べてかけておいたとのこと。

 もうひとつは、合羽橋のキャラクターと同じ妖怪の河童説。江戸時代、この地に住んでいた雨合羽商が私財を投じ、水はけの悪いこの地域の治水工事を行い、それを河童が手伝ったという逸話です。

 ふたつの説を総合すると、この地域はかつて雨合羽の商いが行われていたこと、さらに隅田川にほど近く、水と縁が深い土地なので河童伝説が生まれたのでしょう。

 そこから、現在は「合羽」の地名が残り、さらに伝説に基づいて河童を商店街のキャラクターに取り入れ、いたるところで河童を見ることができる町となっていったと考えられます。

黄金の河童像が商売繁盛をかなえてくれる

 浅草・合羽橋周辺のエリアで高い人気を誇るのが「かっぱ橋道具街」。浅草と上野の中間に位置する、調理器具や食器類の専門店が軒を連ねる問屋街です。

 現在は約170店舗あり、大型のずんどう鍋や用途別にたくさんの種類がある包丁、多彩な食器類など、飲食店向けの多彩な品々が販売されています。普通のお店ではなかなか目にしない物が取り扱われているため、観光客にとっては街歩きが楽しいスポットでもあります。

 このかっぱ橋道具街にも、河童がいます。それが、黄金に光り輝く「かっぱ河太郎」像。かっぱ橋本通りとかっぱ橋道具街通りが交差する場所の近くにあり、建物と建物の間のスペースに鎮座しています。

「かっぱ河太郎」像(画像:写真AC)



 2003(平成15)年、合羽橋道具街の誕生90周年を記念し、商売繁盛の願いを込めて建てられました。この河童は、この地域の水利工事を手伝ったという河童がモチーフで、左手にタイ、右手に釣りざおを持つ、めでたい姿で表現されています。

 実は「さらざんまい」にもこの河童像をモチーフにした像が登場。「さらざんまい」では、河童型生物「ケッピ」に顔が似た、躍動感あるポーズの黄金の河童像で、「ケッピ」と主人公たちが遭遇した場所でした。

 実物の河童像はアニメとは趣がまったく異なり、たくましくリアルな像となっています。アニメを見た人はもちろん、かっぱ橋道具街を訪れた際はぜひ立ち寄って見てほしいスポットです。

ユーモラスな河童がたくさん

 浅草の国際通りから上野駅近くの昭和通りにかけて続く通りが「かっぱ橋本通り」です。スカイツリーが通りからまっすぐ正面に見えるのが特徴で、「さらざんまい」でも通りから見えるスカイツリーが描かれています。

 かっぱ橋本通りで有名なのが、例年7月に開催される「下町七夕まつり」。華やかな七夕飾りや、阿波(あわ)踊りといった多彩な踊りなどが催され、1年で最もにぎわうお祭りとなっています。

「下町七夕まつり」のウェブサイト(画像:下町七夕まつり実行委員会)



 こちらの通りでは、かっぱ橋道具街のかっぱ河太郎のリアルな河童とは異なり、ユーモラスにデフォルメされた河童の像が通りのあちこちに見られます

「さらざんまい」でも、かっぱ橋本通りにある逆立ちした河童像が登場。通りを散策しながら、設置されている場所を探してみると楽しめるはずです。

 立体の河童以外にも、通りのお店の看板やメニューなどに、河童のイラストを描いているお店も数多く見られます。かっぱ橋本通りでは、立体の河童像はさることながら、各店舗にいる河童のイラストにも着目して、お店ごとの多彩な河童を楽しんでも面白いかもしれません。

合羽橋の河童伝説の本場・「かっぱ寺」

 最後に、合羽橋周辺で直接、河童伝説を伝えている場所をご紹介します。それは、かっぱ橋本通りそばにある曹源寺(台東区松が谷)、別名「かっぱ寺」。河童が手伝ったという治水工事を行った雨合羽商・喜八が葬られたため、かっぱ寺と呼ばれるようになったそうです。

台東区松が谷にある曹源寺(画像:(C)Google)



 境内には、なんと河童が「かっぱ大明神」として祭られており、商売繁盛や火難・水難よけのご利益があります。

 お寺をお参りしてみると、境内には河童像やお供えされたきゅうり、お堂の河童の天井絵など、河童にちなんだ奉納品で埋め尽くされています。まさにかっぱ寺と呼ばれるにふさわしいお寺です。

 合羽橋周辺を訪れて河童伝説に興味を持った人は、かっぱ寺も訪れてみるとさらにその面白さが深まるはず。

 日本屈指の観光地・浅草地域と飲食店向けの専門店が軒を連ねる・合羽橋周辺。この地域は、江戸時代から伝わる河童伝説をもとに、現在ではあちこちで河童とつながれるスポットとなっています。この地域に遊びに来たら、治水工事を助けた河童に思いをはせながら、随所にいる現代の河童に会いに行ってみてはいかがでしょうか。

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