アナログレコードがCD真っ盛りの「90年代」に消滅しなかったワケ
2021年8月3日
ライフ音楽配信サービスが日々加速するなか、その対極とも言える音楽レコードにも注目が集まっています。その歴史について、20世紀研究家の星野正子さんが解説します。
安価なCDラジカセの登場
CDが普及した理由はもちろん音質もありますが、スペースをとらないという点を抜きには語れません。『読売新聞』1987年1月15日付朝刊は、ミニコンポについて
「最近では、一家に2台目のオーディオセットとして、中、高校生が小遣いをためて買っていく」
と書いています。
CDだけのミニコンポなら、自分の部屋で音楽をひとりで楽しめる――この点が、大きな利点だったことは言えうまでもありません。
普及をさらに進めたのは、より安価なCDラジカセの登場でした。1987(昭和62)年頃、ミニコンポはおおむね10~20万円台だったこともあり、中高生にはなかなか買えない代物でした。

ところが、1986年に各社がラインアップを増やしたCDラジカセは当初10万円台だったものの、競争が行われるなか、1987年に入ると5万円台の製品も目立つようになりました。
ミニコンポとCDラジカセの普及で、レコードプレーヤーは時代遅れと見なされるようになっていきます。発売される音楽ソフトも1990年頃には9割がCDとなりました。
1992(平成4)年には、ソニーがMD(ミニディスク)の発売を開始。テープレコーダーもMDに置き換わると言えわれるなか、レコードも過去の遺産となると考えられていました。
1990年代後半から始まったレコード復権
ところが、1990年代後半になるとレコードの復権が始まります。
『東京新聞』1997年7月23日付朝刊では「CD全盛なのに 今中古レコードが人気」として、レコードの人気が再燃していることを報じています。
記事によれば、後楽園ホールで開催された中古レコード市は高校生も行列に並ぶほどの盛況で、ビートルズのLP盤(1分間に33回3分の1回転するレコード)には10万円で売れるものもあるとしています。

さらに記事では、高額で販売されているレコードの例として、アイドルの元祖・梅木マリのシングル盤2枚は72万円。デビュー前のビートルズがバックバンドを務めていたシングル『マイ・ボニー・ツイスト』は100万円で売れたとしています。CDに押されて低迷していたレコードプレーヤーの販売台数も
「出荷量の下がった92年の5万2000台に比べ、昨年は13万8000台と倍以上に増えた」
と、回復を見せていました。
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