金メダルも追い風に? テニス・ゴルフより、今や「スケボー」が人気となった納得の社会背景

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金メダルも追い風に? テニス・ゴルフより、今や「スケボー」が人気となった納得の社会背景

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中村圭

文殊リサーチワークス・リサーチャー&プランナー

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東京オリンピックで男女の日本人選手がそろって初代金メダルを獲得し、一躍世間の注目を集めた新競技、スケートボードのストリート。昨今、こうした「アーバンスポーツ」が徐々に広がりを見せています。そこにはどういった理由があるのでしょうか。文殊リサーチワークス・リサーチャー&プランナーの中村圭さんが解説します。

都市での開催が可能なスポーツ、人気の変遷

 2021年7月に開幕した東京オリンピックには「アーバンスポーツ」が新たな種目として加えられました。ここでは施設開発の視点でアーバンスポーツを見ていきたいと思います。

 アーバンスポーツとは、エクストリームスポーツの中で都市での開催が可能なものと定義づけられています。

 一方、エクストリームスポーツの定義はあいまいな部分もありますが、速さ・高さ・危険さ・華麗さなどで過激(extreme)な離れ業を競うスポーツのこととされ、さらにファッションや音楽など現代の若者文化と融合性があってエンターテインメント性が高いことが言われています。

 エクストリームスポーツの「Xgames」は日本でも人気があり、見たことや名前を聞いたことのある人もいるでしょう。アーバンスポーツに該当するものはスケートボード、インラインスケート、スポーツクライミング、3×3、BMX、パルクール、ブレイクダンスなど。

東京オリンピックで男女とも日本人が金メダルを獲得し、一気に注目を集めたスケートボード(画像:写真AC)



 これらは大きなスペースがなかなかない都市の街中でも始められる、ひとりでも始められるなど、自由度が大きいことが特徴とされています。また、SNSにアップしたプレー動画がきっかけで大きな海外大会へ招待されたり、若年層でもプロになれたり、国内プロスポーツとは異なる自由さもあります。

 今回からオリンピック種目に加えられたスケボーでは、男子ストリートで堀米雄斗選手(22歳)が初代金メダルを獲得し、さらに女子では若干13歳の西矢椛(もみじ)選手が初代金メダルを、中山楓奈選手(16歳)が初代銅メダルを獲得。そのプレーがさまざまなメディアに取り上げられました。

多様化し、増加する都市のスポーツ施設

 今回、スケボーのストリート競技を初めて見たという人も多かったのではないでしょうか。世界を代表する選手に10歳代前半の若年層が多かったことも驚きで、その選手たちがすでにプロで活躍していることも、同世代の子どもたちの刺激になったでしょう。

 既存のスポーツではあまり見られない、ゆるい解説もネットで話題になりました。すでに施設の利用者希望者が急増しているようですが、今後もスケボーを始めたり、競技を観戦したりする人が増えていくことが期待されます。

 こうした状況を背景に、近年アーバンスポーツ系の施設が増加しています。

フィットネスジム(画像:写真AC)



 都市でのスポーツ施設といえばスポーツクラブやフィットネスジムなどが代表的なものですが、いずれも健康増進やボディーメイキングが主な利用目的です。

 一方、都市のレジャー的なスポーツ施設というと、かつてはテニスやボウリング、ゴルフ練習場、もしくは体育館やグラウンドを使用したチームスポーツなどでした。

 しかし、これらの本格的なブームは1980年代以前であり、メインの利用者層の年齢が上がったことに加え、道具が高額だったり、場所を取るのが手間だったり、一緒にプレーする仲間が必要だったり、ファッションセンスが合わなかったりと、2000年代以降の若者のライフスタイルや感性にそぐわない面がありました。

 都市でより手軽に楽しめる新たなスポーツが希求されていたと言えます。

ボルダリングという先駆事例から分かること

 ボルダリング施設は2000年代から増え始め、近年のアーバンスポーツの中でも比較的早くから施設開発が進展しました。

 当時は、大きくてカラフルで不思議なデザインのウォールがアイキャッチになり、「あれは何だ?」と興味を持つ人も多かったでしょう。ボルダリングはスポーツで体を動かして遊びたいという都市の潜在的なマーケットを巧みにつかんでいきます。

ボルダリング(画像:写真AC)



 国内でもイベントが開催されるようになり、日本人選手の活躍もあって、一気に知名度が上がっていきました。レジャー性を高めたウォールや子ども用のウォールがプレーグラウンドに導入されて利用層が拡大しています。

 さらにスポーツ施設としては比較的場所をとらないこともあって、デベロッパーが大型商業施設にプレイグラウンドを含めて積極的に導入したことも、数が増えた一因でしょう。最近では2020年8月にオープンしたミヤシタパーク(渋谷区神宮前)にもボルダリングウォールが設置されています。

 2010年代にはスケボーがオリンピックで新種目として認定されたのを機に、スケボーパークも増加しました。

 もともとスケボーは古くからブームがあり、1990年代からはストリートで若者に人気があったスポーツなのです。しかし地域でのトラブルもあり、健全性が問われることもありました。

 本来のアーバンスポーツの形からややはずれているのかもしれませんが、専用施設が整備されることで幅広い層に共感されることが期待されます。

スケボーに慣れ親しんだ世代が今、親に

 当時、ストリートでスケボーを遊んでいた若者世代が今は親世代になっており、子どもがスケボーに挑戦することへの理解が以前より深まっていることも、施設開発の追い風でしょう。

 親が子どもにスケボーを教えるパターンも見られ、利用しやすい専用施設が求められています。

 スポーツショップ大手チェーンのムラサキスポーツ(台東区上野)は積極的に施設を展開しています。ムラサキパーク東京(足立区千住関屋町)は、同社が運営する都内最大級のスケボーパーク。

 スケボー・ストリートの堀米選手や白井空良(そら)選手はムラサキパーク東京で幼少期に練習していたこともあり、特に注目の施設となっています。

 RAIZIN SKY GARDEN by H.L.N.A(江東区青海)はお台場の大型商業施設ダイバーシティ東京プラザ7階のオープンエア空間に位置し、眺望の良さを誇るスケボーパーク。

ダイバーシティ東京プラザ(画像:(C)Google)



 未就学児がスケボーに挑戦できるカリキュラムなど次世代の育成に注力しています。もちろん、今回のオリンピックで使用された青海アーバンスポーツパーク(同区青海)もなんらかの形で残して、今後のスケボーの聖地となることが期待されます。

 その他に、パルクールも注目です。

大人も子どもも挑戦しやすい環境を整備

 パルクールはフランスの軍事訓練を元にし、登る・走る・跳ぶ・バランスをとるといった基本的な身体能力で、障害物があるコースを素早く通り抜けるスポーツ。

 忍者のようなアクロバティックなプレーが魅力です。MISSION PARKOUR PARK TOKYO(江戸川区松江)は2018年6月にオープンした国内最大級のパルクールトレーニングスペース。

 国内トッププレイヤーのレッスンから、施設内を自由に楽しめるオープンジムなど、大人から子ども、経験未経験を問わずパルクールを楽しむことができます。

 また子どものインドアプレイグランド、ボーネルンドあそびのせかい有明ガーデン店(江東区有明)は、MISSION PARKOUR PARK TOKYOの監修でパルクールを取り入れたゾーン「アーバン・ランナー」を初導入。

 同施設ではプレーリーダーと一緒にパルクール体験が楽しめる「ボーネルンドパルクール教室」も開校しています。

 興味のある人は、このような施設でアーバンスポーツを体験したり、プレーを見てみたりしてはいかがでしょうか。

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