昨年ツイッターでバズりまくった「スイカ専用バッグ」が11万円で商品化された理由

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昨年ツイッターでバズりまくった「スイカ専用バッグ」が11万円で商品化された理由

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スイカを入れて運ぶため“だけ”に作られた、何ともぜいたくな専用バッグ。2020年夏にツイッターで数万もの「いいね」を獲得した幻の商品がこのたび発売されました。企画・製造した土屋鞄製造所の狙いとは? 担当者を取材しました。

今まで無かった、スイカのための専用バッグ

 1年前の2020年7月27日(月)、「スイカの日」に併せて投稿されたある画像が、ツイッター上で大いに話題となりました。革製品ブランドの土屋鞄製造所(足立区西新井)がコンセプト商品(非売品)として発表した「スイカ専用バッグ」です。

 上質な本革を使い、大玉のスイカをすっぽり収めて運ぶため“だけ”に作られた、何ともぜいたくな専用バッグ。公式アカウントの発信やそれを見つけたファン、メディアなどによって拡散されて、総計で数万もの“いいね”を集めました。

 あれから季節がひと回りして2021年夏、同社はなんと「スイカ専用バッグ」を実際の商品として製造。7月9日(金)から店頭で、15日(木)からはオンラインでも販売を開始します。

お値段は税込み11万円。驚きの高級「スイカ専用バッグ」を商品化した、土屋鞄の狙いとは?(画像:土屋鞄製造所)



 お値段は11万円(税込み)、2021年にちなんで「21個限定」です。

 相当に高級な値段に驚きを禁じ得ませんが、同社はなぜ商品化に踏み切ったのでしょうか。担当者に話を聞きに、千代田区外神田のオフィスを訪ねました。

8kgのスイカを入れても大丈夫!

 まずは「スイカ専用バッグ」の詳しい説明を。

 縦21cm、横25cm。持ち手は幅1.7~3.9cm、長さ38.5cm。本体・持ち手ともにイタリア産の最高級品質の牛革「バケッタ・ミリングレザー」を使用して、柔らかな質感と耐久性を両立しているといいます。

 もちろん肝心の機能面も文句なし。L~2Lサイズの大玉スイカがぴたりと収まる寸法で、6~8kgまでOKというからその丈夫さにあらためて感心させられます。ちなみにバッグそのものの重さは約700gと、大変軽いのも特長なのだそう。

 真ん丸のスイカの輪郭に沿う球体は、本革製バッグではまず見たことのないフォルム。バッグ上部から少しだけのぞくスイカの頭が、革のブラウンカラーとよくマッチしています。

単なる“面白商品”ではないこだわり

 本品は、1965(昭和40)年の創業以来、数多くのカバン製品を手掛けてきた同社が「『運ぶ』を楽しむ」を掲げて展開しているコンセプト商品の第1弾。

 昨夏ツイッターなどで発表した当初はあくまで非売品との位置付けでしたが、「かわいい」「欲しい!」という反響が次々と寄せられたことを受けて1年がかりで改良を重ね、今回の実売に至りました。

 同社KABAN事業部部長の山田智子さんいわく、本品を通して伝えたいのは「職人の遊び心と、培ってきた確かな技術」。単なる“面白商品”ではなく、随所に技量が光る逸品に仕上がっています。

 たとえば、ひとつのバッグを作り上げるのに使うパーツの数。全部で約60にも上る複雑さです。そのうち楕円(だえん)のような形に切り抜いた8枚レザーを丁寧につなぎ合わせることによって、かつてない滑らかな球体型を表現しました。

職人の精緻な技術により商品化が実現した(画像:土屋鞄製造所)



 8枚にはそれぞれスナップ式のボタンが取り付けられていて、スイカの出し入れのしやすさにも配慮が行き届いています。

「長年カバン作りに取り組んできた当社として、細部にまで丁寧に丁寧にこだわって作りました。主に大人世代の方が購入してくださることを想定していますから、長く愛用できて時間とともに風合いの変化も楽しめるよう、素材選びから工夫を凝らしています」(山田さん)

 9日(金)から開始した実店舗での販売では、すでに六本木店(港区赤坂)などで購入した人がいるとのこと。

「どんな風にお使いいただけるのか、私たちもとてもワクワクしています」(山田さん)

スイカ以外も 土屋鞄の専用バッグシリーズ

 スイカ専用バッグを皮切りに始まった同社の「『運ぶ』を楽しむ」シリーズは、すでに2作目、3作目も発表されています。

 第2弾は「雪だるま専用バッグ」。

 手のひらに載るほどの大きさの雪だるまが入れられる曲線シルエットのバッグは、内装に保冷用として用いられるポリエステル素材を使用。水が浸み込まないようファスナーも止水タイプを選んでいます。雪だるまの出し入れに便利な革製の「台座」もセットといううれしい心遣いも。

 そして第3弾は「オリジナルワイングラス & 専用バッグ」。

 老舗ガラスブランド菅原工芸硝子(千葉県九十九里町)と共同で、オリジナルのワイングラスとそれをぴったり収納できるレザーバッグを開発。バッグの中央部に“ひねり”を加えることによりバッグ内でグラスの柄の部分が固定されて、持ち運びの際の揺れを防いでくれる優れものです。

 ワイングラスのセットは、税込み7万7000円で購入もできます。

「『運ぶ』を楽しむ」シリーズの作品を手にする山田さん(中央)と、同社の守内さん(右)、山登さん(2021年7月13日、遠藤綾乃撮影)



「『運ぶ』を楽しむ」シリーズはいずれも、ありそうでない、あったらうれしい・面白い、専用バッグ。さらに、海外展開も行っていることを踏まえて、

「日本独特の感性を表現できる作品を作りたいと考え、スイカや雪だるまなど日本の四季の移ろいを感じさせる題材を選んでいます」(山田さん)

とのこと。

バッグが持つ「根本的な魅力」とは?

 もうひとつ3作に共通するのは、バッグのコンセプトを知りその実物を眺めていると、ふいに使う人や使う場面の“ストーリー”が立ち現れてくる情緒感。

 わざわざ専用のバッグに入れて持っていくスイカは、いったい誰と食べるんだろう――?
 降り積もった雪で作った大切な雪だるまは、持って帰って誰に見せたいんだろう――?

「雪だるま専用バッグ」。あなたは誰のために雪だるまを持って帰りますか?(画像:土屋鞄製造所)



 バッグに入れてモノを運ぶという行為は、誰かと何かを共有する、大切な何かを本当に大切にするという行為と密接に関連しているのだということに、あらためて気づかされる作品群です。

 同シリーズは、追って第4弾以降も企画予定とのこと。「ぜひ楽しみにしていていただけたらと思います」(山田さん)

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