大人気のガチャガチャに「シュールなアイテム」が増え始めている理由

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大人気のガチャガチャに「シュールなアイテム」が増え始めている理由

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中村圭

文殊リサーチワークス・リサーチャー&プランナー

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現在、老若男女問わず人気のガチャガチャ。その人気の秘密について、文殊リサーチワークス・リサーチャー&プランナーの中村圭さんが解説します。

普及は1970年代から

 都内各所でガチャガチャ、ガシャポン(商標などの関係上、メーカーで呼び名が異なるため、本稿ではガチャガチャで統一)の設置が増加しています。

 ガチャガチャとは、お金を入れてレバーやハンドルを回すと何種類かあるプライズ(景品)のひとつがランダムに出てくるベンダー機(自動販売機)のこと。多く普及しているものは球形のカプセルに小さなおもちゃが入ったカプセルトイです。

 くじ引き的な楽しさと子どもでも手軽に購入できる価格のおもちゃとして、昔から子どもの身近にあったものと言えます。

大人や女性への人気は2000年代から

 ガチャガチャが大きく注目されたのが1980年代の「キン肉マン消しゴム」(通称・キン消し)の大ブームです。

 この頃は食玩など、小・中学生男子の収集癖を刺激するような商品が次々に販売され、大ヒットを記録していました。キン消しもそのひとつです。当時の男子はこぞってキン消し目当てにガチャガチャを回していました。

ガチャガチャのイメージ(画像:写真AC)



 さらに2000年代に入って、海洋堂フィギュアのボトルキャップがコレクションアイテムとして幅広い層にブームになると、ガチャガチャにも動物や海洋生物などのフィギュアシリーズが投入され、大人や女性など幅広い層へ利用が拡大しました。

 そのため、プライズ開発が活発になり、女性が好みそうなミニチュアシリーズや、人気アニメキャラクターのフィギュアシリーズなど、種類が一気に増加していきます。

 それまでは隙間の空きスペースに数台設置される程度でしたが、種類が増え、利用が拡大したことから、ガチャガチャの利用自体を目的にした、何百台も設置して大きな面積を占める専門店が開発されるようになります。

都内に増えるガチャガチャ専門店

 2019年、原宿にオープンしたガチャガチャの森原宿アルタ店(渋谷区神宮前)は、アミューズメント施設オペレーター(運営事業者)のルルアーク(福岡市)が運営するガチャガチャ専門店です。

ガチャガチャの森(画像:中村圭)



 同社は2014年からガチャガチャ専門店を運営しはじめ、現在は「ガチャガチャの森」を全国に47店舗展開(6月28日現在の公式ウェブサイト情報、以下同じ)。「ガチャガチャの森池袋 サンシャインシティ店」(豊島区東池袋)では1240台を擁する同社最大級の大型店で、都内には原宿、池袋を含めて4店舗が出店しています。

 ガシャポンとカプセルトイを開発しているバンダイ(台東区駒形)は2017年、東京駅構内の東京キャラクターストリートに100面規模(同社のカウント方式で1面2台設置)の「TOKYO GASHAPON STREET」(千代田区丸の内)をオープン。

 2021年にはサンシャインシティワールドインポートマート内に「ガシャポンのデパート 池袋総本店」(豊島区東池袋)をオープンしました。全国に26店舗展開している「ガシャポンのデパート」の旗艦店で、世界最大の3000面をうたっています。

フィギュアをお土産に買う現象も

 専門店でなくとも最近は商業施設のエントランスなどに何百台規模のガチャガチャを設置している光景も見られます。

ヤマダ電機のエントランス(画像:中村圭)

 ガチャガチャはおおむね1回100円~500円と比較的安価ですが、気に入ったプライズがあるとコンプリートするまでコインを投入したくなるものです。インカム(収入)を得やすく、商業施設やレジャー施設などの空きスペース活用として積極的に導入されるようになってきたと言えるでしょう。

 また、動物や海洋生物などのフィギュアシリーズの人気から、水族館や動物園ではお土産として飼育生物のガチャガチャを設置する動きが活発化しました。価格が手ごろで小型で持ち帰りやすいことからお土産に適しており、ゲーム感覚で購入できることもうれしいところです。

 アメリカのガム自動販売機を模した大きな球形のベンダーはアイキャッチにもなり、のぞいてなかにいろいろな生物が入っているのを想像するのも楽しいでしょう。最近は水族館や動物園だけでなく、観光地の名物や象徴的な景観のミニチュアを入れたご当地ガチャも増えています。

 本物のお土産ではなく、フィギュアになったお土産を持って帰るのも不思議ですが。「フィギュアみやげ」は日本各地の名所、食、自然、文化、風俗など、さまざまなジャンルの“ご当地名物”をミニチュアにしたおみやげカプセルフィギュアシリーズ。JR駅構内や空港に設置してあります。

シュールでインパクトのあるものが人気

 前述のように、近年は女性でガチャガチャのファンが増えています。またコロナ以前はインバウンドの利用も見られました。

 さらに需要が増えて開発が活発化し、多数のガチャガチャが一同に設置されるようになったことから、最近のプライズは多くのなかで埋没しないように、

・シュールでインパクトのある面白いもの
・シュールでインパクトのあるかわいいもの

が開発されるようになりました。サイズが小さいこともインパクト重視の要因となっているのでしょう。

ガシャポンのデパート(画像:中村圭)



 例えば、呼び出しブザーはちゃんと音と振動が出ます。なぜか人気があってシリーズ化しており、バス、ファミリーレストラン、フードコートの本物そっくりの呼び出しブザー・呼び出しボタンが入っています。

 ひとつのカテゴリーとして女性に人気なのがポーチ。かわいいデザインのものもありますが、給食のジャムポーチや山手線ポーチ、中が開きになっている魚介ポーチ、など変なポーチシリーズが揃っています。

 動物のフィギュアシリーズは根強い人気で、最近は猫が手を合わせて拝んでいる「合掌猫拝」、猫がペンをもちあげる「ネコのペンおき」、文鳥のリアルな造形が人気の「文鳥コレクション」、色々な種類が連結できてギアと回すとチンアナゴがニョキニョキ動く「チンアナゴニョキニョキ」などのシリーズがかわいいと評判。

 食品サンプル系のミニチュアも人気が続いています。おにぎり型のケースに具材(鮭いくら、ツナマヨ、天むすなど)の指輪が入った「おにぎりん具」(現在は販売終了)など、やはりシュールなものが増えています。

 ミニチュアはかわいいものだけでなく、「池のゴミ」といった訳のわからないシリーズも出ています。汚いタイヤや壊れた自転車、薄汚れたフライパンや金庫など、本当にただのゴミです。

 飾っても楽しいものではなく、お店で売っていたらわざわざお金を払って買うことはないものなのですが、不思議なことにガチャガチャで見かけるとなぜかネタにしたくて、筆者はコインを投入しています。

 このようなガチャガチャのプライズ独特の世界が、またファンを増やしていると言えるでしょう。

 近年はYouTuberがガチャガチャで対戦したりする動画をよく流しており、それまで遊んだことのない人も興味を持つようになっています。今後もガチャガチャは都内に増殖していきそうです。

 誰でも意外と楽しめるのが今のガチャガチャ。ぜひ数の多い専門店にも足を運んでみてください。

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