繁忙か閑散か――東京五輪の拠点「晴海選手村」周辺を歩く

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繁忙か閑散か――東京五輪の拠点「晴海選手村」周辺を歩く

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山本肇

フリーライター

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7月23日(金)の東京五輪開幕まで1か月を切りました。拠点のひとつであり、選手村のある晴海周辺は現在どのような状況なのでしょうか。フリーライターの山本肇さんが歩きました。

6月1日から始まった交通規制

 7月23日(金)の東京五輪開幕まであと24日となりました。コロナ禍での開催がどのような結果をもたらすのか、メディア上ではさまざまな意見が繰り広げられています。

 そんな東京五輪ですが、大会関係者の集まる施設周辺は現在、どういった雰囲気になっているのでしょうか。

勝どきから選手村までの様子(画像:山本肇)



 開催の高まりをもっとも味わえるのは都営バス路線です。東京五輪の選手村が設置される晴海埠頭(ふとう)に向かう系統では、早くも6月1日(火)から交通規制が始まっています。

 この交通規制では、

・東京国際フォーラム(千代田区丸の内)
・有楽町駅前
・ほっとプラザはるみ(中央区晴海5)
・晴海埠頭

の停留所が利用休止となっています。

 東京国際フォーラムと有楽町駅前については、数寄屋橋・日比谷に臨時の停留所が設置されています。行き先表示は臨時の終点であるホテルマリナーズコート東京(晴海4)となっており、9月30日(木)の交通規制期間までしか見られません。

 また晴海エリアは、地域のランドマークである晴海トリトンスクエア(晴海1)に組織委員会が入居するため、いわば東京五輪の拠点と言えます。大会開催に向けて、さまざまな整備もそろそろ本格化しているのではないでしょうか。

 その様子を確かめるべく、6月25日(金)の朝、日比谷線の築地駅から徒歩で勝どき橋を渡って晴海へ向かいました。

会場近くの人に声をかけてみたものの……

 勝どきはマンションが立ち並んでいるせいか、勝どき橋を渡る通勤・通学の人の姿が多く見られます。また、築地場外と豊洲市場を移動しているのか、自転車に乗った市場帰りのような服装の人たちも目立ちます。

 勝どき橋を渡って、さらに晴海通りを直進。黎明(れいめい)橋を渡って晴海トリトンスクエアの角、晴海三丁目交差点を右に曲がって約900m直進すると、選手村にたどりつきます。

勝どきから選手村までの様子(画像:山本肇)



 勝どき橋を渡った晴海通りは銀座から選手村へのメインルートです。勝どき橋の築地側、築地市場跡地には大会関係の車両の駐車場もあります。しかし、「お祭り気分」はあまりありません。

 例えば、築地市場跡の駐車場。もう開催も間近ですから、さまざまなディスプレーで開催を盛り上げているかと思ったら、そんなことはありませんでした。日中は出入りする車両をガードマンが誘導していますが、駐車場の奥に五輪のデザインをあしらった車がなければ、単なる駐車場にしか見えないほど。

 このひっそりとした感じは、勝どき橋から黎明橋を渡って選手村まで一貫しています。都内の繁華街には「2020」と書かれた垂れ幕が街頭を飾っていますが、そのようなものはありません。

 勝どき駅近くの公園を散歩していた人に話を聞くと、次のように答えてくれました。

「選手村も近いし、以前は一生の思い出になると思っていたんですけどね……環状2号線が交通規制されるので、今は晴海通りが渋滞してバスが遅れると困ることくらいしか考えていません」

 勝どき・晴海で何人かに話を聞いてみましたが、誰もが五輪よりも大会期間中の交通規制のほうが関心事という様子でした。

漂う閑散とした、物寂しい雰囲気

 さて、選手村へ向かう途中にある晴海トリトンスクエアは、組織委員会も入居するオフィスビルです。ここには道路に面したディスプレーがあると思いきや、皆無でした。

 本当にここは選手村のお膝元なのか――と疑問を覚えるくらい、五輪関連の雰囲気が感じられない勝どき・晴海。昨年まで晴海トリトンスクエアの向かいにあったCLTパビリオンももうありません。

 CLTパビリオンとは、2019年11月に建築家・隈(くま)研吾のデザイン監修で作られた国産材を用いた展示施設です。本来は、2020年の五輪期間中に展示する予定で建設されましたが、五輪は延期に。展示期間も満了してしまったため、五輪開催前に解体されてしまったのです。なおその後、岡山県真庭市の国立公園蒜山(ひるぜん)へ移築され7月15日(木)より公開予定となっています。

勝どきから選手村までの様子(画像:山本肇)



 晴海三丁目交差点を右に曲がると、選手村の入り口まで一直線の目抜き通りです。しかし、そこにあるのもいつもの晴海です。開催まであと1か月という雰囲気はありません。中央区清掃工場(晴海5)の煙突、東京鰹節センター(晴海3)など、昔からの施設やコンビニエンスストアも変化なし。ここもまた、ディスプレーは驚くほどありませんでした。

 晴海郵便局(晴海4)のあたりに来ると、ようやく準備が始まっている光景に出会いました。晴海郵便局から道路を挟んだ向かいには、臨時の都営バス操車場が開設されています。操車場には、既に大会の際に使うであろう案内版が運び込まれ、本番を待っています。

 とはいえ、操車場周辺も若干の寂しさを感じます。その理由は、きっと背後の建物でしょう。

 操車場の背後に目立つのは、独特のデザインが印象的なホテルフクラシア晴海(以前の晴海グランドホテル)だった建物です。これは東京鰹節センターとともに晴海の歴史を語る建物でしたが、残念ながら2021年3月に閉館してしました。

 とにかく選手村に近づくほどにぎわいはなく、人の姿も減るばかりか、空きビルまで。それらが重なり合って寂しさを醸成しているのです。

高級マンションの最寄りのバス停は閉鎖中

 晴海郵便局から先、ホテルマリナーズコート東京(晴海4)付近からは交通規制が行われており、道路上にはカラーコーンが設置され、警備員が誘導を行っています。

 選手村周辺には感染対策のためにフェンスが設置される予定があるものの、ぱっと見、ほとんど工事現場と同じです。

 選手村周辺はかつて東京湾大花火のメイン会場でしたが、同じ準備でもあのときの方が盛り上がっていたように感じます。

 ここで、周辺住民が五輪への不安を感じそうなものを見つけました。五輪期間中は晴海と豊洲をつなぐ豊洲大橋が交通規制により歩道も閉鎖されることが掲示されていたのです。取材したのがちょうど通勤時間帯だったためか、自転車で豊洲方面から走ってくる人を多く見かけました。彼らが五輪を挟んで2か月ほど遠回りしなければならない現実はかなり酷と言えるでしょう。

勝どきから選手村までの様子(画像:山本肇)



 さらにこの交通規制でもっと不便を強いられているのは、中央区清掃工場に隣接する朝潮運河沿いの、晴海テラスとザ・晴海レジデンス(ともに晴海5)の住人でしょう。なにしろ、最寄りのバス停であるほっとプラザはるみが閉鎖状態だからです。

 このふたつのマンションは、朝潮運河の対岸にあるザ・東京タワーズ(勝どき)の公開空地と人道橋の朝潮小橋でつながっていますが、交通規制の最中はちょっとした出島感があります。

 当然、住民車両は交通規制の対象外になっていますが、出入りは不便そうです。そして、これらのマンションはもちろんのこと、清掃工場も五輪開催間近の雰囲気ありません。とりわけ清掃工場には、中央区の運営するプールなどを備えた温浴施設・ほっとプラザはるみがあるのですが、こちらは2020年4月から大規模改修のため閉館中です。

 選手村は洗練された建物が並ぶエリアですが、周囲はもう少しどうにかならないものでしょうか。開催初日までにはお祭りムードが高まることを期待しています。

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