双子パンダ誕生で盛り上がる「上野動物園」 たくましき便乗商品と繁殖の歴史をたどる

上野動物園のシンシンが6月23日、双子の赤ちゃんを出産しました。今回はこの出産を契機に上野動物園のパンダの歴史を振り返ります。解説してくれるのはフリーライターの犬神瞳子さんです。


人工授精に再度挑戦

 それでも、挑戦は止まりませんでした。

 翌年には再び人工授精が試みられ、1986(昭和61)年1月に行われた人工授精の結果、5月8日に妊娠の兆候が見られるようになります。今度こそ成功をという期待のなか、ついに6月1日、メスの赤ちゃんが誕生します。

 最初に公開されたのは静止画だけ。その背景にはパンダをなるべく刺激しないようにという配慮がありました。そして、赤ちゃんパンダの成長を祈る声は東京だけでなく全国に広まります(ビデオ公開は6月5日)。

 同時にパンダブームで新たな商戦も始まります。6月6日には上野動物園の協力を得たNTTが、誕生直後の鳴き声を聞くことのできる「パンダの赤ちゃん・テレホンサービス」を開始します。

上野動物園の入り口(画像:写真AC)

 その後もパンダの赤ちゃんが水を飲んだ、歩いたというニュースは数日に一度、必ず報じられていました。11月下旬には伊豆大島の三原山が噴火。21日には全島避難が実施され東京には暗いムードが漂いましたが、パンダブームはそれをフォローするほどの熱気を帯びていました。

 12月1日には名前がトントンに決定。公開に向けた準備が始まったことで、ブームはさらに加熱します。

 なお、トントンという名前は約2万に上る命名候補のなかで14位でした。命名式では名付け親代表として応募者のなかから府中市在住のSさんが選ばれ、鈴木都知事から賞品を授与されています。

便乗商品、続々と

 なんといってもパンダの命名で沸いたのは上野の街でした。

『朝日新聞』1986年12月1日付夕刊の記事によると、周辺の商店街や露店では、

・パンダ焼き
・パンダパン
・パンダあめ

とパンダにあやかった商品が多く売られ、松坂屋上野店(台東区上野)では、店内に

・赤ちゃんパンダ体重当てクイズ
・パンダコーナー記念写真

を用意。特設コーナーでは

・パンダケーキ
・パンダパン
・パンダせんべい
・パンダカステラ
・パンダアイスクリーム
・パンダめがね
・パンダ手袋

と、ありとあらゆるパンダ商品が並びました。

パンダのイラストがデザインされた銀座線のホームドア(画像:写真AC)

 鉄道会社もこの流れに乗り、営団地下鉄(現・東京メトロ)では記念乗車券を4万5000枚販売。京成電鉄でも1万枚を販売しています。もちろん上野動物園でも、公開記念の前売り券販売が行われました。

 レコード会社もこのブームに乗り、

・日本コロムビア『パンダの赤ちゃん』
・ジャミックプロモーション『赤ちゃんパンダはかわいいね』
・クラウンレコード『パンダの赤ちゃんこんにちわ』
・ビクター『こんにちはトントン』

と便乗作品を次々と発売しました。

現れたトントンに観客たちは……


【画像】パンダ誕生を祝う「松坂屋上野店」

画像ギャラリー

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