キャンパスの日常を取り戻せ! 明日21日、慶大・日大「集団接種」は他大の青写真となるか

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キャンパスの日常を取り戻せ! 明日21日、慶大・日大「集団接種」は他大の青写真となるか

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中山まち子

教育ジャーナリスト

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全国の17大学が6月21日から大学での集団接種をスタートさせます。都内ではどの大学が先陣を切るのでしょうか。教育ジャーナリストの中山まち子さんが解説します。

集団接種は大学まで拡大

 ワクチン予約の混乱はメディアで大きく取り上げられていましたが、現在は落ち着き、大規模集団接種会場での接種に向けてかじを切っています。

 また、大企業を中心とした職場接種も6月21日から全国でスタートするなどワクチン接種が広まりつつあります。

 こうしたなか文部科学省に申請し、接種会場を大学に設け、教職員や学生にワクチン接種を行う動きも加速しています。文部科学省のウェブサイトでは大学の接種会場設置に関して、次のように説明しています。

「新型コロナワクチンの接種に関する地域の負担を軽減するとともに、接種の加速化を図るため、自治体接種に影響を与えないよう、医療従事者や会場などを自ら確保することを前提に、自大学の教職員や学生のみならず、近隣の教育関係者等に対してもワクチン接種を行う大学等におけるワクチン接種(大学拠点接種)を進めています」

 このように、大学で集団接種を行う場合は自前でワクチンの打ち手を確保しつつ、教職員や学生に限定せず、地域貢献を行うことも求めています。

対面授業再開への道筋を探る大学

 文部科学省から提示されている条件をみれば実施のハードルは高いことがわかります。しかし萩生田光一文部科学大臣は6月18日(金)の定例記者会見で、接種会場として全国174大学から実施申請が届いていることを公表しました。

 打ち手となる医療従事者を確保するのは大学であるため、クリアするのも簡単ではありませんが、大学側も早期にワクチン接種を行うことで、対面授業再開への道筋を作った狙いが垣間見えてきます。

 そんななか、6月21日(月)から順次、大学での集団接種をスタートさせる大学が全国で17大学あります(6月18日時点)。

港区三田にある慶応義塾大学(画像:(C)Google)



 そのうちのひとつが慶応義塾大学(港区三田)です。三田キャンパスに接種会場を設置し、初日となる6月21日に接種を開始します。

都内の大規模大学では1番手の慶応

 17大学のうち、東京都内にある大学は慶応義塾大学、日本大学(千代田区神田三崎町)、日本体育大学(世田谷区深沢)の3校です。

 慶応義塾大学は非常勤講師を含む教職員や学生を始め、キャンパスに携わる警備員や清掃スタッフなど、合計5万人の接種を予定。接種は任意かつ、接種の有無による構内の活動制限は行わないとしています。

コロナワクチンのイメージ(画像:写真AC)

 大学関係者のワクチン接種予約者数は6月18日午後17時現在で2万5970人を超えており、すでに予定人数の半数を超えました。慶応義塾大学では1日1600人のペースでの接種計画を立てています。また、在籍する大学に関わらず留学予定者への接種も予定しています。

 一方、日本大学は接種を任意にし、理工学部の駿河台キャンパスを「お茶の水接種会場」、芸術学部の江古田キャンパス(練馬区旭丘)を「芸術学部接種会場」とし、2会場を設置。今のところ2万4000人の接種を予定しています。今後、会場を増設する方向で動いており、日本有数の学生数を誇る大学として注目を集めそうです。

 慶応義塾大学や日本大学の場合、付属病院の存在が大きいのはもちろんのこと、医学部や看護学部、看護専門学校、そして薬学部といった医療系学部を持ち、多くの医療従事者を輩出しています。卒業生の力も借りつつ自前で人材確保できる体制が整っていることから、文部科学省の条件を早期にクリアした形になりました。

 慶応義塾大学と日本大学の集団接種は他の大規模大学のひな型になると期待されます。節度ある行動を伴えば、対面授業やサークル活動も全面的に再開へと前進するため、ワクチン接種が通常のキャンパスに戻る大きな切り札になっています。

キャンパスライフを取り戻すと期待されるが

 ワクチン接種が幅広い世代で進むことで、感染拡大を抑えられると期待されていますが、その一方で、全人口当たりのワクチン接種率が高いイギリスでは、再拡大も懸念されています。

 こうした海外の状況を踏まえると、いつになればコロナ禍以前のような生活に完全に戻れるのかは依然として不透明なままです。

 また、変異種の脅威もありこれから大学生での接種が順調に進んでも、マスクを外して大勢で集まり飲食する行動の即時解禁は難しく、時間を要するのは明らかです。

 また、以前の生活に近づくには、マスク着用や大勢との会食を避けるといったこれまでの予防対策を継続しなければなりません。

 大学には講堂や体育館といった広い施設もあり、会場確保の問題はクリアできます。打ち手の確保は医学部や病院のある大学が有利ですが、都内には医療系学部のない大学も少なくありません。

練馬区旭丘にある日本大学芸術学部江古田キャンパス(画像:(C)Google)



 大学接種が進んでいく課程でさまざまな課題が浮かんできますが、先行実施の大学の計画を手本にし、接種に携わる医療従事者の確保面では協力し合うことも必要となります。

 ワクチンは激変したキャンパスライフを正常に戻す「最強のカード」という見方はありますが、残念ながら万能ではありません。そして副反応への正しい理解、任意で予防接種を打たない人への偏見や差別をなくす啓発活動を進めていくことも忘れてはいけないでしょう。

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