東京or神奈川の大学? 19学部設置で日本一「東海大学」とはどのような大学なのか

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東京or神奈川の大学? 19学部設置で日本一「東海大学」とはどのような大学なのか

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中山まち子

教育ジャーナリスト

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スポーツ強豪校でありながら、学部数日本一を誇る東海大学。そんな同大の歴史と近況について、教育ジャーナリストの中山まち子さんが解説します。

2022年春に大規模リニューアルを予定

 お正月の風物詩でもある箱根駅伝で優勝候補に挙がることの多い東海大学(渋谷区富ヶ谷)。同大はスポーツ強豪校として知られている一方、19学部75学科を擁する学部数日本一の大学でもあります。また、大学群の通称「大東亜帝国」ののひとつに入る有名大学です。

渋谷区富ヶ谷にある東海大学(画像:(C)Google)



 2022年度には6学部新設などを含め、「23学部62学科・専攻」と大規模リニューアルを予定しています。学部新設とそれに伴う改組改編のため、イチから学部を立ち上げるわけではありませんが、既存の学部学科の見直しを行い、受験生のニーズをつかむ狙いがうかがえます。

 19学部から23学部へと4学部増の結果、文系学部が強化されます。そのため、体育学部を除くと全体的に理系と文系学部のバランスがとれ、総合学部としてパワーアップ。幅広い分野の志願者を集めることが期待されます。

 前述の通り、東海大学は大学スポーツの強豪校として知られており、寮生活や団体行動などが避けられません。そのため、新型コロナウイルスの感染対策がより一層求められます。その一環として、2021年4月から、学生だけでなく教職員に「コロナ検定」を実施し、感染予防の知識を増やす取り組みも行われています。

 しかし、変異型の拡大もあり感染リスクは依然高いまま。そのようなこともあり希望する学生に対し、唾液PCR検査を実施することを5月22日(土)に発表しています。内閣府や東京都、神奈川県による大規模モニタリング調査ということもあり、検査は無償で行われます。

 首都圏の大規模大学ではすでに早稲田大学(新宿区戸塚町)で実施されていますが、それに次ぐ形となっています。

技術学校としての歴史

 近年、総合大学として存在感を増している東海大学の起源となった学校はふたつあります。

 ひとつ目は創立者であり、工学博士や政治家としての顔を持つ松前重義が自身の教育理念を実現するため、戦前に設立した望星学塾(戦争の激化により活動停止)、ふたつ目は戦時中の1942(昭和17)年に松前が中心となって立ち上げられた財団法人国防理工学園(航空科学専門学校と電波科学専門学校)です。

 東海大学と直接的な関係性を持つのはこれらの専門学校ですが、松前の教育者として学校を設立した経験がなければ、専門学校も誕生していなかった可能性もあり、「望星学塾」は無視できないほど大きな存在といえます。

 さて戦後すぐに専門学校は合併し、東海科学専門学校として生まれ変わります。終戦翌年の1946年には大学令により大学に昇格。そして法律改正のため1950年に改めて大学として認可され、現在に至っています。

東海大学の札幌キャンパス(画像:(C)Google)



 2022年度大幅リニューアルが控えていますが、これまで理系学部の学部数が多かったのも、技術系の人材育成の教育機関から発展した経緯があるためです。学部数が多い東海大学は北は北海道、南は熊本にキャンパスを持つ大学でもあります。

学生数は2万7404人

 2021年度の学部と配置されているキャンパスは一は、次の通りになっています。

●湘南キャンパス(神奈川県平塚市)
・文学部
・文化社会学部
・政治経済学部
・法学部
・教養学部
・体育学部
・健康学部
・理学部
・情報理工学部
・工学部
・観光学部(1年次)

●伊勢原キャンパス(同県伊勢原市)
・医学部

●代々木キャンパス(渋谷区富ケ谷)
・観光学部(2年次から4年次)

●高輪キャンパス(港区高輪)
・情報通信学部

●清水キャンパス(静岡県静岡市)
・海洋学部

●熊本キャンパス(熊本市)
・経営学部
・基盤工学部
・農学部

●札幌キャンパス(札幌市)
・国際文化学部
・生物学部

 神奈川県と東京都を中心に全国のキャンパスに合計19学部があります。2020年5月1日時点の学生数は2万7404人です。私立大学では非常に珍しい海洋学専門の学部があり、他の大学にはない分野が学べます。

港区高輪にある高輪キャンパス(画像:(C)Google)



 2022年度はキャンパスも東京キャンパス(高輪校舎・渋谷校舎)、湘南キャンパス(湘南校舎・伊勢原校舎)、静岡キャンパス(清水校舎)、熊本キャンパスと札幌キャンパスとキャンパスの編成も含んだ大がかりな改組改編を行う予定です。

東京の大学か、神奈川の大学か

 首都圏の大学では都市回帰の動きがみられますが、東海大学では熊本や札幌のキャンパスを持ち、清水キャンパスは海洋学部のみと地域に根付いた学校運営を行っています。専門分野に合わせ、キャンパス縮小や集約しない姿勢は目を見張るものがあります。

 その一方で、本部となっているのは渋谷区の代々木キャンパスですが、多くの学部が集中しているのは神奈川県平塚市にある湘南キャンパスです。また、来年度から23学部体制となりますが、そのうち5学部では1年次と2年次は湘南キャンパスで学ぶ方針を打ち出しています。

神奈川県平塚市にある湘南キャンパス(画像:(C)Google)

 多くの学生が在籍し、規模の大きい湘南キャンパスがあるため「東海大学 = 神奈川の大学」というイメージが強くなるのは否めません。

 実際、2021年度学力選抜の志願者の出身校別人数をみてみると、神奈川県の学校出身者が1万2091人に対し東京都出身者は8007人です。志願者の総数が4万227人のため、3割が神奈川県の学校出身者なのです。

 こうしたデータをみると分かる通り、東海大学は「東京の大学」ではあるものの、神奈川の高校生の受験校として非常に人気が高い大学となっています。

リニューアル後に注目

 少子化に伴い、受験生の人数は先細りすることは避けられません。安定した学校運営を維持するためにも、受験生や社会のニーズを読み取りつつ学部の改組改編をしていくことが今まで以上に求められています。

東海大学のウェブサイト(画像:東海大学)



 東海大学が予定している大規模リニューアルの結果次第によっては、「既存学部学科の改組改編」が私立大学のトレンドになる可能性を秘めています。

 一大学の単なるリニューアルではなく、今後の大学運営の在り方や方向性を問う大きな改革になりそうです。

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