安易な地方移住に喝! 地域の伝統文化を「面白い」と思えない人は東京で暮らしたほうがいい【連載】現実主義者の東京脱出論(3)
2021年5月25日
ライフ新型コロナウイルスの感染拡大で、今まで以上に注目を浴びる「東京脱出」「地方移住」。そんな世の中のトレンドに対して、一年の半分近く全国各地を巡る地方系ライターの碓井益男さんが警鐘を鳴らします。
「祭りに興味なし」は通用せず
同じ長野県で言えば、南信地方の諏訪では7年に一度、4月初めから6月半ばにかけて御柱祭(おんばしらまつり)という諏訪神社の大祭が行われます。諏訪大社の四方に建てられる御柱と呼ばれる巨木を山から運び出して練り歩き、建てる――ときにはけが人や死者が出る勇壮な祭りとして有名です。なお、諏訪大社を構成する上社と下社のお祭りは担当する地域が固定されています。
ここまではよく知られているのですが、肝心なのは御柱祭が終わった後です。
同じ年の秋には諏訪湖周辺に広がる地域の各神社で、同様の祭りが行われます。諏訪湖周辺の神社を歩いてみると一目瞭然ですが、どの神社にも御柱が立っています。路傍の祠(ほこら)も例外なく御柱が立ち、祭りの年に新しいものに変えられます。風光明媚(めいび)な風景は、地方への移住を考える人を引きつけると言って間違いありません。
しかし、地方に移住するということはその地域に根付いた信仰、またはそれに基づく行事と隣り合わせになることです。「祭りには興味がない」「わが家は無宗教」なんてことを言ったら、自らアウェーに突き進んでいるようなものです。

東京23区でも歴史の古いエリアに住むと、町内会の勧誘とともに「おみこしを担ぎませんか」という誘いを受けることがありますが、それとはレベルが全く異なります。
東京では「ここは仮の住まい」という意識で暮らしていても、地域住民との関係性が希薄でも何ら問題ありません。しかし地方ではそうではないのです。繰り返しになりますが、独特の伝統文化・風習を自ら好きになったり、楽しんだり、同じ色に染まったりしようとすること(例えそれがうまくいかなくても)は欠かせません。
伝統文化・風習と向き合う気概
一方、独特の伝統文化・風習というのはハードな一面も持っています。地域よりさらに狭いエリアやコミュニティーのなかでだけ培われてきたものも存在するからです。
熊本県内の伝統ある某高校は、独特のバンカラ伝統を持つことで知られています。新入生全員が応援団に校歌を歌わされるなどなど、上級生による「シメ」と呼ばれる伝統が根付いています。

数年前には「シメ」が原因で退学を余儀なくされた元生徒が県を訴えて注目されました。これを「まるで軍隊」「戦前か」と批判する声もありますが、大半の生徒はもともとそうした伝統のある気風であることを承知しているため、あまり問題になりません。
筆者は以前、在学中の生徒の話を聞いたこともありますが「シメと言われても殴られるわけじゃないですし」と、高校の伝統を当たり前のものとして受け止めていました。
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