進化する都内「自販機グルメ」、あなたはいくつ知ってる?

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進化する都内「自販機グルメ」、あなたはいくつ知ってる?

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中村圭

文殊リサーチワークス・リサーチャー&プランナー

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2010年代なかごろからインターネット上で注目され始めた変わり種の自動販売機。都内のお薦めスポットについて、文殊リサーチワークス・リサーチャー&プランナーの中村圭さんが解説します。

自販機減少の背景にあるもの

 街のいたるところに存在する自動販売機は、私たちの生活に身近な存在です。自動販売機はわが国では明治時代から存在しており、経済成長や技術の向上に伴い2000(平成12)年までは普及台数は増加の一途をたどっていました。

 日本自動販売システム機械工業会(新宿区市谷田町)によれば、2020年の普及台数は404万5800台で、その内訳を見ると清涼飲料(缶・ボトル)が49.9%と半数近くを占めています。

 確かに街なかには大手飲料メーカーの自動販売機があふれており、毎日のように利用している人も多いでしょう。自動販売機の種類はさまざまですが、やはり日常生活に密着した飲料・食品関連が多くなっています。

 2000年以降、普及台数は徐々に減少しており、2020年は2019年から2.5%の減少となりました。減少の背景にはコンビニの24時間営業などが影響していると言われています。

多種多様な近年の自販機

 そんな自動販売機ですが、2010年代なかごろから静かに注目されるようになっています。

「肉の万世秋葉原本店」から徒歩数分にある万かつサンドの自動販売機(画像:文殊リサーチワークス)



 自動販売機の拡大期に子ども時代や学生時代を過ごし、大人になって若いころに利用した飲料や食品、菓子の自動販売機に郷愁を感じる人も少なくありません。

 自動調理できる(と言っても、冷凍された食品を加熱調理する程度ですが)自動販売機では、

・ラーメン
・そば
・うどん
・チャーハン
・カレー
・ハンバーガー

など、想像以上にしっかりしたものができることに驚きます。深夜でも営業しており、思わぬところにも存在する自動販売機。特にひとり暮らしの人は恩恵にあずかることも多かったのではないでしょうか。最近は変わり種の食品や地方の食品を扱う自動販売機も見られます。

 このようなことから、自販機グルメはコンビニグルメなどと同様に身近な食文化としての価値が出てきて、近年はYouTuberがネタとしてよく取り上げるようになっています。このコロナ禍では施設が利用しにくいことから、ネットやTVで自動販売機のネタが増えており、改めて注目されるようになった次第です。

都内の特色ある自販機

 いろいろな自動販売機が集積する自販機コーナーは、休憩所の感覚もあってほっとする存在です。想起されるのは会社内や高速道路のSA・PAなどですが、さまざまな場所に存在しており、名所化しているところも見られます。

 レトロ自販機で有名なのが「中古タイヤ市場 相模原店 自販機コーナー」(神奈川県相模原市)。100台近く設置されており、独特の雰囲気もあって、SNSにもよく取り上げられます。

 レトロ自販機は近年静かなブームが続いており、「鉄剣タロー」(埼玉県行田市)も有名でしたが、2020年5月31日に新型コロナウイルス感染拡大の影響で惜しまれつつも閉店しました。それ以外に東京都内の街なかにも特徴的な自販機コーナーが幾つも存在しています。

 面白い自動販売機を紹介すると、秋葉原の「肉の万世本店」(千代田区神田須田町)裏にはさまざまな商品を売っている自販機コーナーがあります。古いビルの1階に古いポップコーンの自販機が目印で、屋外、屋内に所狭しと自動販売機が立ち並んでいます。

 販売している商品も変わっており、通常の清涼飲料水に紛れて秋葉原で定番のおでん缶や焼き鳥缶が売られていたり、1缶2000円弱のエスカルゴやえぞ鹿カレーも売られていたりします。

秋葉原自販機コーナー。秋葉原の代名詞でもあるおでん缶も販売(画像:文殊リサーチワークス)



 また、食料品以外にカブトムシのおもちゃや鉄道模型などを扱ってエンターテインメント要素が高く、ネットでは自販機コーナーの名所と化しています。

 かつて電子部品店がひしめいていた「ラジオガァデン」(同)内には肉の万世の「万かつサンド」の自動販売機が設置されています。ここで販売しているのは定番の万かつサンドのほか、ハンバーグサンドやとんかつが2倍になっている弐万かつサンド。また、かつサンドのほかに清涼飲料、アイスクリームの自動販売機があり、立ち食い用のテーブルを使って、ここで食事からデザートまで済ますことができます。

「ベンダースタンド酔心」(港区東新橋)は広島県の酒蔵メーカーの関連会社である山根東京本社(同)が直営する自販機コーナーです。店内にはお酒やおつまみ、カップラーメンの自動販売機が並んでおり、中央にテーブルがあることから立ち飲み感覚で楽しむことができます。(5月23日時点で、東京都内は緊急事態宣言下であることからお酒の提供は自粛)。

 以前は銀座に自動販売機を集積させた「MALTI VENDING SHOP IN GINZA」が期間限定で出店していたことがあり、アゴ(トビウオ)がそのまま1本入っただしのペットボトル「だし道楽」や、焼き芋やかきのアヒージョの「カンナチュール」、ペットボトルに入ったお米「PeboRa」など、一風変わった商品を販売していました。ちなみに今ではだし道楽は各地の、カンナチュール、PeboRaは日本橋室町の自動販売機で購入することができます。

コロナ禍で自販機の価値は上昇するか

 ご当地自動販売機も面白いカテゴリーです。

 かつて有楽町線有楽町駅改札の近くには、富山県のご当地自動販売機が設置されており、「幸こわけ ほたるいかの燻製」や「富山ブラック黒醤油ラーメン」など富山県のご当地物産が購入できました。現在は羽田空港第2ターミナルビル(大田区羽田空港)に秋田県、福島県、福岡県、熊本県、山形県庄内市、岡山県総社市のご当地自動販売機と並んで設置されています。

 また、ニュー新橋ビル(港区新橋)1階に設置されている「湘南クッキー」は、通販もしくは湘南エリアで展開している自動販売機でしか購入できないものです。販売しているクッキーの種類が多く、クッキーにベリーのジャムを乗せた定番的なものから、「ひらつか名産品」のじゃことチーズを乗せたもの、サーフボードの形がしたものまであります。

「ニュー新橋ビル」に設置されている「湘南クッキー」の自動販売機(画像:文殊リサーチワークス)



 そのほかにも珍しい自動販売機は「MIYASHITA PARK」(渋谷区神宮前)にある「伊良コーラ総本店」(新宿区高田馬場)のクラフトコーラや、渋谷第一勧業共同ビル(渋谷区宇田川町)のDoleのバナナ、「カレーランド」(台東区西浅草)のご当地レトルトカレー、さらに町田市の豆腐や中目黒のシフォンケーキ、上野や中野の昆虫食など、枚挙にいとまがありません。

 コンビニに押されている自動販売機ですが、働き方改革でコンビニも24時間営業を取りやめる店舗が出てきており、大手飲食チェーンも深夜営業を短縮する動きが見られます。

 また、コロナ禍では飲食店や商業施設の営業時間が短縮され、徹底した感染対策が求められます。その点、自動販売機は時間外でも販売でき、対面販売ではないことが評価されます。自動販売機の価値が上昇し、面白い自動販売機が増えていくことを期待します。

 コロナ禍で飲食店の利用もままなりませんが、たまには自動販売機グルメを楽しんではいかがでしょうか。

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