ゲームのうまいヤツがかっこいい! 子どもの序列をひっくり返した『スーパーマリオブラザーズ』の歴史
2021年5月23日
ライフ80年代に一世を風靡したファミコンカセット『スーパーマリオブラザーズ』。同作が子ども間に起こした変革とは? フリーライターの猫柳蓮さんが解説します。
他業界を巻き込んで社会現象に
この本の売れ行きはすさまじく、同年12月時点で46刷・63万部に達し、1985年のベストセラーになっています。
1985年の出版業界では、フォード社長やクライスラー会長を務めたリー・アイアコッカの自伝『アイアコッカ わが闘魂の経営』(ダイヤモンド社)が大ベストセラーとなっていました。
しかし、最終的に『スーパーマリオブラザーズ完全攻略本』が追い抜いて年間第1位になっています。『アイアコッカ わが闘魂の経営』は世界的なベストセラーでしたが、日本では『スーパーマリオブラザーズ』にかける子どもたちの情熱が勝っていたというわけです。
徳間書店では、同年7月に月刊誌『ファミリーコンピュータMagazine』を創刊していますが、当初18万部だったものが、12月発売の新年号では60万部に達しています。

この出版動向を報じた『朝日新聞』1985年12月14日付夕刊で、任天堂は
「ファミコン本体のここまでの人気も想像できなかったが、出版物は全く予想外」
と驚きの混じったコメントを寄せています。
既にゲームウオッチのブームも経験し、ファミコンの売り上げも上々だった任天堂をしても、『スーパーマリオブラザーズ』が他業界を巻き込んで社会現象になることを予測していなかったのです。
このことから『スーパーマリオブラザーズ』は、テレビゲームへの視点を子どものオモチャから、大人が真面目にビジネスに取り組む価値のあるものへと押し上げた作品だったといえます。
子どものヒエラルキーが変わった
『スーパーマリオブラザーズ』を社会現象と言い切れるのは、子どもたちの人間関係における価値観も変容させたことにあります。

1980年代中盤は、腕力に優れたガキ大将がクラスで威張るという風潮がまだ残っていました。そうした古い価値観は、ファミコンと『スーパーマリオブラザーズ』の登場によって終止符を打たれます。腕力や体育に優れていることより、ファミコンの
・ゲームソフトをたくさん持っている
・ゲームテクニックが優れている
という子どもがリーダー格となるようになったのです。これは社会の大きな変化といえるでしょう。
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