真夜中3時の品川で、かわいそうな「女の幽霊」が乗ってきた話【連載】東京タクシー雑記録(8)

タクシーの車内で乗客がつぶやく問わず語りは、まさに喜怒哀楽の人間模様。フリーライター、タクシー運転手の顔を持つ橋本英男さんが、乗客から聞いた奇妙きてれつな話の数々を紹介します。


「さ、斎場まで行ってください」

「き、ふぃがあさいぜう」

 女性は行き先を告げているようです。

「え、何て? もう一度お願いします」
「きりふぁがさうじょう」
「何て言っているのですか、もう一度お願いします」
「き、りぃ、が、や、さ、さい……」
「えーっと、桐ヶ谷斎場ですか?」
「そ、そう……です」

 髪の長い、何だか不気味な雰囲気の女性客です。なるべく目を合わさないようにしようと、第六感とも言うべき警戒心が働きました。

 指定された葬儀場へ、とにかく西大井の近道を走りました。住宅街も商店街も人っ子ひとりいない真夜中。それにしたって、あまりに静か過ぎます。走らせ走らせ、ようやく葬儀場の近くまで行ったとき、再び後部座席から声が。

こんな真夜中に「斎場まで」と言う女性。いったい何のために……(画像:写真AC)

「や、やっぱり乗った所まで、か、帰ります」
「えっ、何ですって?」
「か、火葬場が見たかったけれど、い、行かなくていいです」
「行かなくていいって、お客さん、ちょっと」
「も、もういいんです……。もう、私……」

 ふいに背筋が凍りつく。ルームミラー越しに初めて女性を見ました。

「お母さんに会いたかった……」


【画像】東京3大「心霊スポット」を見る

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