もうMARCHとは呼ばせない? 日本初「ヒューマンライツ学科」が話題の「青山学院大学」とはどのような大学なのか

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もうMARCHとは呼ばせない? 日本初「ヒューマンライツ学科」が話題の「青山学院大学」とはどのような大学なのか

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中山まち子

教育ジャーナリスト

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2022年度に「ヒューマンライツ学科」を設置予定の青山学院大学。そんな同大について、教育ジャーナリストの中山まち子さんが解説します。

珍しい法学部の学科新設

 青山学院大学(渋谷区渋谷)は2021年4月、法学部に「ヒューマンライツ学科」を設置予定(2022年度)であることを発表しました。

渋谷区渋谷にある青山学院大学(画像:(C)Google)



 日本初となる人権(ヒューマンライツ)問題に特化した学科で、学科名としては一見すると突拍子もないように見えますが、実は時代のニーズをきっちりつかんでいます。

 法学部と言えば、

・中央大学(八王子市東中野)
・明治大学(千代田区神田駿河台)
・法政大学(千代田区富士見)
・専修大学(千代田区神田神保町)

のように法律学校を起源とする伝統校も多く、日本の私立大学の歴史を語る上では外せません。また他学部と比べて改組や学科新設は珍しく、中央大学の

・法律学科
・政治学科
・国際企業関係法学科

のように「法律」「政治」「国際」、また慶応大学(港区三田)や専修大学の

・法律学科
・政治学科

のように「法律」「政治」と分けているところがメインです。

 一方、青山学院大学の法学部は1963(昭和38)年度から2009(平成21)年度まで、

・私法学科
・公法学科(ともに生徒募集停止は2001年4月)

となっていましたが、現在は法学科のみです。

 法学部が3学科または2学科構成としている大学が多いなか、国際でも政治でもないヒューマンライツ学科設置の構想を打ち出した青山学院大学の取り組みは画期的と言えます。

人権問題の現場に身をおいた教育も

 ヒューマンライツ学科の特設ウェブサイトには、今後の取り組みについて、

「差別、貧困、暴力など、社会の中で起きている多様な人権問題を理解し解決していくためには、法学を学ぶだけでなく、より広い視点から多角的にアプローチしていくことも大切です。(中略)政治学、経済学、社会学、公共政策など、隣接の社会科学の分野の科目も設置し、人権にかかわる社会問題や制度を学際的に扱う能力を身につけます」

「人権問題を可視化したドキュメンタリー映像による授業『ヒューマンライツの現場』のほか、実際に人権問題の現場に身をおいて考える『ヒューマンライツ・フィールドワーク』、省庁などの政策が立案・実施される現場に参加する『公共政策実習』、人権問題の現状を把握するためにデータの分析手法を学ぶ『社会調査論』などの授業で、現実の状況を分析する能力を身につけます」

「人権問題と法の関係性について、諸外国・地域における課題や取り組みを英語で学ぶ授業のほか、諸外国・地域の文化や歴史を学ぶ授業、長期休暇を利用してアメリカ・イギリス・オーストラリア等の大学で学ぶ海外研修などを設置しています。日本国内だけに視点を絞ることなく、より広い視野から主体的、積極的に行動できる能力を身につけます」

と記載されており、その意気込みが伝わってきます。

コースから学科へ

 青山学院大学の法学部法学科の募集人員は現在500人で、

・ビジネス法コース
・公共政策コース
・司法コース
・ヒューマンライツコース

の4コースから成っています。それを2022年度から、法学科とヒューマンライツ学科に分け、前者の人員を380人、後者を120人とする予定です。

ヒューマンライツ学科の特設ウェブサイト(画像:青山学院大学)



 ヒューマンライツコースが存在しているため、学科新設がゼロから始まるわけではなく、すでに専門分野の教職員が大学に在籍しています。

 ヒューマンライツ学科が掲げるのは、グローバル社会でニーズが高まる専門知識を学び、社会に還元する人材育成です。

 近年、海外で作られている商品の労働環境などがインターネット上でも大きく取り上げられるなど、人権問題の認知度も高まりつつあります。そのようなことから、これらの専門的な知識を持つ人材は今後さらに重要度を増していくでしょう。

21世紀に入り学部学科新設や再編に積極的

 さて、青山学院大学は青山キャンパスと相模原キャンパス(神奈川県相模原市)の2キャンパス体制を敷いており、青山キャンパスには人文系学部が、相模原キャンパスには理系学部や文理融合の社会情報学部などが集まっています。

 またミッション系の教育機関として長い歴史を持ち、文学部の英米文学科や国際政治経済学部は特に有名です。

渋谷区渋谷にある青山学院大学(画像:(C)Google)



 2003年度から2012年度までの間、全学部の1年次と2年次の学生は相模原キャンパスで学んでいましたが、青山キャンパスの施設拡張などを行った結果、人文系学部は2013年度より、青山キャンパスで入学から卒業まで学生生活を送れるようになりました。

 2000年代以降は新学部設置を積極的に行っており、2008年度には総合文化政策部と社会情報学部、2009年度には教育人間科学部、2015年度には地球社会共生学部を設置。そして2019年度には、コミュニティ人間科学部を新設しました。

 2021年度からは理工学部の物理・数理学科を物理科学科と数理サイエンス学科に改編。こうした動きはMARCH(明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学)のなかでも飛びぬけています。

時代のニーズをつかめるかがカギ

 前述のヒューマンライツ学科の正式認可は、今夏発表される見通しです。

神奈川県相模原市にある青山学院大学の相模原キャンパス(画像:(C)Google)



 受験生への情報発信も今後積極的に行われていくでしょう。今後も時代に沿った学部学科新設、学生にとって魅力的な学科編成に期待が寄せられます。

 2021年度入試は入試内容の刷新もあり、青山学院大学の志願者は減少しました。しかし、長い目で見れば「この大学で学びたい」と希望する学生が集まり、大学のブランド力向上につながります。ヒューマンライツ学科も同様の流れにあると言えるのです。

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