長引くコロナ禍、広まるネット通販――商業施設の「存在意義」がこそ問われている

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長引くコロナ禍、広まるネット通販――商業施設の「存在意義」がこそ問われている

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中村圭

文殊リサーチワークス・リサーチャー&プランナー

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3月21日、全都道府県で解除された緊急事態宣言。そんななか東京都を始めとする都市部の集客施設の需要見通しはどうなるのでしょうか。文殊リサーチワークス・リサーチャー&プランナーの中村圭さんが解説します。

これから需要は元通りに戻るのか

 新型コロナウイルスの感染拡大状況は、まだまだ先が見通せません。しかし国内においても2月17日(水)からワクチン接種が行われており、収束の歩みは少しずつはじまっています。

 コロナ禍が長期化したことで、社会構造や生活者の意識も変化してきました。コロナが収束した後に、果たして需要は元通りに戻るのかどうか? さまざまな業界でその問いかけがはじまっています。

 コロナの影響が大きかった業界では切実な問題です。また、都市と地方では様相が異なってきます。今回はコロナが完全収束することを前提として、東京都を始めとする都市部の集客施設の需要見通しについて見ていきます。

コロナ禍でも求められる訪日観光

 特にコロナの打撃を受けている都心部の飲食業、ホテルなどの観光業、ライブ・エンターテインメントはコロナ感染拡大前には国内の数少ない成長産業とされていました。近年は空前のホテル開発ラッシュで、劇場・ホールの開発も活発化しました。また、高級志向のレストランも次々にオープンしていました。

 言うまでもなく、その背景には近年のインバウンドの急増やオリンピック・パラリンピックの開催による集客拡大の期待があります。ホテルなどの宿泊施設はインバウンドの受け皿として需要が拡大しました。

 また、これからのシティーツーリズム(都市観光)では体験要素が重要視されており、付加価値の高い食を提供するレストランや劇場・ホールはまさにその体験要素を担う施設と言えます。訪日や国内観光が回復すれば、これらの業種は需要の戻りが期待されます。

 アジア圏では現在、コロナ禍でも訪日観光が希求されており、日本をイメージしたテーマパークのようなものが中国やタイなどにできるなど、人気の高さがうかがわれます。

コロナ禍の2020年6月にオープンした大規模複合街区「有明ガーデン」(画像:住友不動産商業マネジメント)



 近年都内では、

・有明ガーデン(江東区有明)
・東京ミズマチ(墨田区向島)
・RAYARD MIYASHITA PARK(渋谷区神宮前)
・ウォーターズ竹芝(港区海岸)

などの新しい大型商業施設がオープン。また、

・PARCO劇場(渋谷区宇田川町)
・東京ガーデンシアター(江東区有明)
・Hareza池袋(豊島区東池袋)
・四季劇場[春][秋](港区海岸)

といった新たな大型劇場やエンターテインメント施設も次々に生まれ、さらにシティーツーリズムの魅力が増していると言えます。

インバウンド回復の不安材料とは

 長い自粛期間によって、国内需要では旅行やイベント、ライブ・エンターテインメントを希求している人が多く、GoToトラベルの効果も期待できることから、収束直後は回復が期待されます。長期的には、景気回復のペース次第で価格志向が強まる可能性もあります。

「東京ミズマチ」のウェブサイト(画像:東武鉄道)



 インバウンドに関しては国の政策的にも重要な市場と位置付けられており、入国手続きの緩和、プロモーションの強化など、訪日の促進が期待されます。

 欧米ではコロナ収束後も、海外旅行を敬遠する高齢者などが出ると言われていますが、わが国のインバウンドの70%程度を占める中国・香港や台湾、韓国ではコロナの感染拡大が抑えられており、早い段階での訪日観光の回復が期待されます。

また、1日あたり数万人規模で感染拡大した欧米と比較すれば、「日本は安全」と言うイメージを持つ外国人も少なくありません。

 ただ、インバウンドの回復に不安材料がない訳ではありません。

 現在、アジア圏では暴動、デモ、クーデターと政情が不安定になっている国も見られます。訪日観光に全く影響を与えないとも限りません。また、オリンピック・パラリンピックの海外からの観客動員断念を決定したため、その需要を前提に開発された施設では存続の危機に陥るほどの大きな打撃が避けられません。

 急速に拡大した都内のシティーツーリズムの基盤がやや揺らいでいく可能性もあります。インバウンドはリスクのある市場には違いありません。しかし、国内においては成長が期待できる数少ない市場で、依存せざるを得ない状況であることも否めません。今回のコロナ禍を契機に、その可否を改めて検討する必要があります。

地域住民を対象にしたサービスの多様化

 一方、オフィス街の日常的な需要に対応し、低価格高回転のビジネススキームで運営している飲食店や居酒屋などは、コロナ感染拡大前の需要から減少する可能性があります。

 東京都の調査によると、都内の従業員30人以上の企業でテレワークを導入している企業は2020年6月時点で57.8%。コロナ感染拡大前の2019年では25.1%だったことと比較すると、導入した企業が30%程度増加したことになります。

テレワークの導入率(画像:東京都のデータを基に文殊リサーチワークスが作成)

 公的データから試算すると、コロナ感染拡大前の10~20%の社員が今後もテレワークを継続するため、その分の需要が減少する可能性があります。

 都心部では市場のパイが大きいため、実際の営業にはあまり影響を受けなかったり、営業努力でカバーできたりする範囲かもしれません。しかし限られたオフィスに依存しているエリアでは、周辺オフィスの動向に注意を払う必要があるでしょう。

 テレワークで出勤する社員が減ったことにより、より利便性の高い立地のコンパクトなオフィスを検討する企業がすでに出てきています。リスクヘッジのためには、地域住民を対象にしたサービスなど選択肢を多様化していくことも肝要です。気になるお店は、テイクアウトやデリバリーでぜひ応援したいところです。

問われる実店舗の存在意義

 ショッピングセンターなどの商業施設は、コロナ収束後に需要が減少する恐れのある業種のひとつです。

テレワークの継続・拡大意向(画像:東京都のデータを基に文殊リサーチワークスが作成)



 主力テナントであったアパレルはコロナ感染拡大以前からオンラインショッピングに需要を奪われていました。食関連は「最後の牙城」と言われ、デパ地下のような食物販、食関連の催事は集客の目玉となっていました。近年は食に重点を置く店舗も増えています。また生鮮食品は訳あり商品以外、オンラインでの販売は難しいと言われていました。

 しかし今回のコロナ禍で、生鮮品も含めた日常に使う商品のオンラインショッピングが幅広い年齢層に急速に普及・拡大し、コロナ収束後も一定数の人に根付いていくと考えられます。また、生産者のオンライン直販も拡大し、遠方の人気店、老舗店の商品を個人が直接購入できるようになってきています。

 大型ショッピングセンターはワンストップショッピングと豊富な比較購買が売りでしたが、ECが発達して商品構成も多彩になってきたことにより、その株を奪われてきている感は否めません。

 むしろ小売業大手自体がオンラインに力を入れる状況で、実店舗の存在意義が問われています。今後はレジャー・エンターテインメントや観光など、伸びしろのある時間消費業態に力を入れるなど、新たな方向性を模索している状況です。

 今後も、コロナ収束後をにらんだ新たな取り組みから目が離せません。

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