観光地化で弊害も 深刻な水不足と戦った伊豆諸島「式根島」の歴史とは

伊豆諸島北部にある周囲約12kmの式根島は長年、水不足に悩まされていました。その困難と奮闘の歴史について、フリーライターの大島とおるさんが解説します。


3年間の大工事で完成した井戸

 前述のとおり、式根島は水に苦労した島です。新島に住む人たちは式根島の海岸近くの土手に涌(わ)くわずかな水を集めたり、「雨水川」と呼ばれる岩場に雨水が集まるように溝を掘ったり、施設を設けたりして、水を集めました。

 そうしたなか、井戸を掘る計画が立てられます。厳密にいえば、式根島には水がないわけではなく、水がある層が深かったのです。海岸近くの土手から涌く水は、約17km離れた神津島の天上山が噴火した際に堆積した粘土層の上を流れる伏流水です。ようは、この層まで掘り進むことができれば、井戸で水を得ることができたのです。

 これは後に「井戸を掘ると三年の不作」という言葉ができたほどの一大事業でした。とにかく島の人たちが生活を犠牲にしなければならないくらいの重労働だったのです。

式根島の航空写真(画像:国土地理院)

 1890(明治23)年から始まった工事では「まいまいず井戸」がつくられました。これは武蔵野台地で多く存在した井戸で、すり鉢状に掘り下げて、グルグルとらせん状の道を付けながら下へと向かってつくられました。

 式根島のまいまいず井戸は、まず18m四方を約7.5m掘り下げ、そこから垂直に直径1.2m、深さ6m掘って、ようやく水に達しました。全て人力のため、式根島17戸の世帯に、島を訪れた新島の漁師が手伝っても、3年の月日を費やしたほどの大工事でした。

井戸は完成したものの……

 こうして水を確保したものの、井戸で水をくみ、家にためておくのは重労働でした。家の水がめをいっぱいにするにはおけを頭に乗せて井戸と家とを40~50回は移動しなければならなかったのです。

 当時の式根島では、水おけとダントウおけ(墓参り用のおけ)は嫁入り道具に欠かせない品とされていました。水くみは女性の仕事で、「嫁は家の水がめをいっぱいしておかなくてはならない」とされていたようです。

式根島の鳥瞰(ちょうかん)図(画像:海上保安庁)

 その後、いくつかの井戸ができたものの、水を得るには苦労するのが式根島の日常でした。それでも風光明媚(めいび)で温泉もあることから次第に観光地としてにぎわうようになります。

 東京と伊豆諸島間などを運航する東海汽船(港区海岸)の前身・東京湾汽船が1938(昭和13)年、島に「式根島温泉ホテル」を開業しています。このホテルは自家発電で電気を供給し、電動ポンプで井戸から水をくむ最新の設備を備えていました。

観光客の増加が生んだ結果とその対策


【地図】式根島の位置

画像ギャラリー

/wp-content/uploads/2021/03/210325_shikine_05-150x150.jpg
/wp-content/uploads/2021/03/210325_shikine_06-150x150.jpg
/wp-content/uploads/2021/03/210325_shikine_07-150x150.jpg
/wp-content/uploads/2021/03/210325_shikine_08-150x150.jpg
/wp-content/uploads/2021/03/210325_shikine_09-150x150.jpg
/wp-content/uploads/2021/03/210325_shikine_10-150x150.jpg
/wp-content/uploads/2021/03/210325_shikine_11-150x150.jpg
/wp-content/uploads/2021/03/210325_shikine_12-150x150.jpg
/wp-content/uploads/2021/03/210325_shikine_13-150x150.jpg
/wp-content/uploads/2021/03/210325_shikine_14-150x150.jpg
/wp-content/uploads/2021/03/210325_shikine_01-150x150.jpg
/wp-content/uploads/2021/03/210325_shikine_02-150x150.jpg
/wp-content/uploads/2021/03/210325_shikine_03-150x150.jpg
/wp-content/uploads/2021/03/210325_shikine_04-150x150.jpg

New Article

新着記事

Weekly Ranking

ランキング

  • 知る!
    TOKYO
  • お出かけ
  • ライフ
  • オリジナル
    漫画