セレブな港区にわざわざ住むのはなぜ?――ドラマ『ウチカレ』から見る「東京で暮らす意味」とは

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セレブな港区にわざわざ住むのはなぜ?――ドラマ『ウチカレ』から見る「東京で暮らす意味」とは

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ふくだりょうこ

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放送中の人気ドラマ『ウチの娘は、彼氏ができない!!』(日本テレビ系)は東京が舞台。港区のタワーマンションに暮らす母と娘の物語です。このふたりを通して見えてくる「東京で暮らす意味」について、ライターのふくだりょうこさんが解説します。

「ロンバケ」北川悦吏子の脚本作品

 北川悦吏子さんが脚本を手がけていることでも話題になっているドラマ『ウチの娘は、彼氏ができない!!』(日本テレビ系、「ウチカレ」)。

 自由奔放な小説家・水無瀬碧(みなせ あおい)を菅野美穂さんが、その娘でオタクな大学生・水無瀬空(みなせ そら)を浜辺美波さんが演じています。そのほかにも空の同級生・入野光に岡田健史さん、碧の担当編集者・橘漱石に人気バンド[Alexandros]のボーカル川上洋平さんと、豪華なラインナップです。

 そんな「ウチカレ」の舞台となっているのが東京です。

ここじゃないと「母ちゃんはダメになる」

 かつては「恋愛小説の女王」として一世を風靡(ふうび)していた碧ですが、最近はイマイチのよう。連載小説は打ち切られ、さまざまな出版社に持ち込むものの冷たい対応をとられてしまいます。

港区にそびえるタワーマンション。高い賃料を払っても住み続ける人の多い街、そこにはどんな理由が?(画像:写真AC)



 碧と空がふたりで暮らしてきた思い出の住まい。碧は生活をしていくためにも引っ越しを考えますが、それを止めるのが空でした。

 母ちゃんはここでないとダメになる、水無瀬碧がダメになる! と止めるのです。

 そんなふたりが暮らしているのはなんと港区にあるタワーマンション。広々とした室内はふたりで使うには広すぎるほどです。

在住地は自分を鼓舞する重要ファクター

 港区は2020年全国の住みたい街ランキングでも横浜、札幌に続き第3位にランクインしています。家賃相場ランキング全国1位の東京で、23区内でのランキングでも港区は3位です。

 空は心配します。別の土地に行ったらこのまま母ちゃんはダメになってしまうかもしれない。生活ができるようになったからと書かなくなるかもしれない、と。

日本テレビ系ドラマ『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』。毎週水曜22時から。動画配信サービス「GYAO」でも無料見逃し配信中(画像:(C)NTV、GYAO)



 この家から引っ越さなくてすむように、良い作品を書こう、そのためにならなんでも協力する! オタクの自分が恋をしてネタにしてくれたって構わない! そう、物語のスタートは、東京の、この場所で暮らし続けることだったのです。

 どこに住んでも同じ、という人もいますが、その一方で「ここでないとダメだ」という場合もあります。それが、東京の港区であれば、並大抵の努力でかなうものではありません。

 住んでいる場所は、ひとつのステータスであり、自分を鼓舞するためには重要なものなのです。

オタ活をがっちり支える東京暮らし

 娘の空はオタクです。第1話でも、同人誌の即売会に行ってきたことが分かる描写があります。

 地方にも即売会はありますが、やはり大きなイベントと言えばコミケ! コミケと言えば、東京ビッグサイト(江東区有明)!

東京ビッグサイト。オタクの祭典「コミケ」の会場としても有名(画像:写真AC)



 地方在住者であればコミケに行くのは一大イベントです。関東住まいだとしても決して近いとは言えない場所に位置しており、港区という立地はオタクにとっても願ってもないことなのかもしれません。

 オタクとしてはビッグサイトに行きやすい、そのほかにも秋葉原や池袋、中野、上野などにもアクセスがよかったりすると、あっという間に頭のてっぺんまで“沼”に浸ることができます。

 今や、日本のアニメやマンガが好きな外国人にとっても、東京は最高の観光スポットです。

 グッズやゲーム、マンガを購入するだけでなく、聖地に訪れることもできる。オタクにとって最高の場所だと自覚さえしていないかもしれません。東京を離れてみて初めて充実している場所だと気がつくのではないでしょうか。

自由奔放な母娘ふたりライフ

 空のオタク活動について、碧が何か口出しをするということもありません。気になるのは空が3次元で恋をしていないことぐらい。むしろ、ちょっと浮世離れしている母をしっかり者の娘が心配しているぐらいです。

 とても仲の良い母と娘。いわゆる友達親子というものですね。

 娘が買ってきた限定アイスをどちらが食べるか大騒ぎしながらジャンケンで決めたり、広いベッドでふたりで寝転がりながら他愛もないおしゃべりをしたり……。その姿は親友同士のよう。

親友のように仲が良い母と娘。自由なライフスタイルは東京に合っていると言えるかもしれない(画像:写真AC)



 母親しかいないから、と周りに何か言われることもなく、空も母親しかいないからと暗くなることはありません。母親である碧のことが大好きであると同時に寂しくないから。

 また、周りからああだこうだと口を出されないのも良いのではないでしょうか。

 そばには碧の幼なじみ父子がいることもあり、ふたりきりの世界に閉じこもることはありません。ほどよく、周りに頼って助けてもらえる関係。このほどよい距離感というのは東京という都会だからこそかもしれません。

東京という街の寛大さ

 生活をする場所を選ぶにはさまざまな条件があります。その条件が必ずしも東京に合致するとは限りません。

 碧と空のような親子は珍しいパターンです。ただ、東京には選択肢が多くあります。環境面だけではなく、その土地の人たちとどれだけ関わっていくかも重要になるはず。

 近所の人たちと仲良くなることが幸福な場合もありますし、ほどよい距離を取っていることが幸福な場合もあります。

 そういった人と人との関わりを踏まえて、住む場所を決めることができる、選択できるというのは東京ならではの良さなのかもしれません。

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