飲食店を数字で評価――「グルメサイト」は食べ歩きの味方か敵か

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飲食店を数字で評価――「グルメサイト」は食べ歩きの味方か敵か

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下関マグロ

サンポマスター、食べ歩き評論家

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今や外食で欠かせなくなったグルメサイト。その功罪について、サンポマスターの下関マグロさんが解説します。

点数の悪いお店巡りをするつもりが……

 2021年の年明け、筆者(下関マグロ、サンポマスター)が大手グルメサイトを見ていると、大きな変化に気がつきました。コロナ禍の飲食店を応援するためでしょうか、以前は少なくなかった「2点台」のお店がまったく見当たらなくなっていました。

 とはいえ、4点台のお店に比べて3点台のお店は評価が低いといったように、「相対的」に低いお店は存在するので、足を運んでみようと思ったのです。

 しかし1月8日に緊急事態宣言が発令されて、不要不急の外出を控えなくてはならなくなりました。しょうがないので宣言が明ける2月7日以降に行こうと気持ちを新たにしたら、結局3月まで延長……というわけで、過去の記憶を基に原稿を書くことに。

周辺情報も充実、存在に驚いた15年前

 筆者が散歩記事を書き始めたのは2005(平成17)年頃。大手グルメサイトもちょうど同じ頃にスタートしたので、よく覚えています。

グルメサイトの点数が低くても自分にとっていいお店はある。写真はイメージ(画像:下関マグロ)



 このサイトが登場する以前にも、似たようなサイトはいくつも存在していました。大手サイトが画期的だったのは、ユーザーがレビューを投稿し、点数もつけられること。それ以外にも、お店の住所や定休日、営業時間などの周辺情報がとても充実しており、うれしかった記憶があります。

 散歩に同行する担当編集者とのやり取りでも、途中で寄る店について、サイトに載ったお店のアドレスを送るなどしていました。

あいさつをしない店主への賛否

 そんなこんなで、サイトを利用するうちに次第とお店の点数が気になり始めました。なぜなら、採点しているのが一般人であるため、信頼できると思ったからです。

 今から思えば単純な発想ですが、当時は散歩の途中で気になるお店を見つけたら、すぐにサイトで点数を調べて、「入る」「入らない」を決めていました。

 ちなみに当時はレビュー数そのものが少なく、一店舗の全レビューを読むのはさほど大変ではありませんでした。

料理はおいしくても悪い点数がつけられるお店もある。写真はイメージ(画像:下関マグロ)



 ある日、点数が低くて入らなかったお店のレビューを読んでいると、際立って低い点数をつけている人を見つけました。

 その人のレビューを読むと、お店に入ったとき、スタッフから「いらっしゃいませ」のあいさつがなかったと書いてあります。食事はおいしかったが、お会計のときも「ありがとうございます」がなかったので低い点数にした……と。

 筆者はそのような気持ちになったことはありません。「そんなことで低い点をつけるのか」と、がくぜんとしました。

 後日、そのお店のあるエリアに行く用事があったので、様子見がてら入ってみることに。店主ひとりでやっている、カウンターだけの小さなお店でした。

 なるほど、確かに店主は無口なようで、注文しても返事がありません。少し心配でしたが、程なくして注文したメニューが目の前に置かれました。おいしくいただき、お会計をするとき、店主は「うぅい」と小さな声を出しました。

 筆者はお店のサービスに不満はありませんでしたが、一方で、他人の評価基準の多様さも痛感しました。

基準は人それぞれ

 また、別のお店のレビューを読んでいると、店内が衛生的かどうかという視点でお店を評価している人もいました。出されたコップが汚いなど、もちろん程度にもよりますが、筆者はあまり気になりません。

料理はおいしくても悪い点数がつけられるお店もある。写真はイメージ(画像:下関マグロ)

 そのほかも例をあげるときりがありませんが、とにかく評価基準は人によってさまざまです。個人的に外観が古く、何十年も営業しているお店は無条件で好きです。長年やっているからには、何かしらの魅力があるからです。

 サイトが大半のお店を網羅し始めた頃、それでもまだ掲載されていないお店を探すことを楽しんでいた時期もあります。

グルメサイト、あり?なし?

 グルメサイトがあるのは、とてもいいことです。なぜなら、筆者はそういったものがない時代を長く知っているから。

グルメサイトの点数が低くても自分にとっていいお店はある。写真はイメージ(画像:下関マグロ)



 80年代に荻窪に住んでいたとき、駅前の青梅街道沿いには人気ラーメン店が軒を連ねていましたが、ひとつだけまったく客が入っていないお店がありました。今ならむしろ行ってみようと思いますが、当時20代半ばだった筆者はそうしませんでした。

 その後、そのお店はテレビ番組に取り上げられ、一躍行列店になりました。そうして初めてのれんをくぐりました。

 確かにおいしかったのですが、なんだかマスコミに翻弄(ほんろう)されているようで、複雑な気持ちになりました。

 あのころグルメサイトがあったら、行列のでき方が違っていたかもしれません。

 現在はさまざまな評価基準ができて、食べ歩きをする人にとって幸せな時代でしょう。グルメサイトをうのみにするのはよくありませんが、うまく活用していくことが大切なのかなと、今では思っています。

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