理性か本能かーーこってりラーメン愛好者が「ベジタリアンブーム」到来で思うこと

健康・環境意識などの高まりから近年、動物由来の成分を使わない植物性食品がブームとなっています。そんななか、ラーメンやカレーなどを愛するフードライターの小野員裕さんがブームについて持論を展開します。


肉しか受け付けなかった昭和の小説家

 かつて、「山窩(さんか)」(少数集団で山あいを漂泊して暮らした民)を題材にした小説で知られた三角寛(みすみかん、1903~1971年)という作家がいました。三角は野菜を一切受け付けない体質で、八百屋の前を通るだけで吐き気がこみ上げてくるほどだったそうです。

三角寛『山窩は生きている』(画像:河出書房新社)

 当時(大正~昭和初頭)の日本は肉をさほど食べられる環境ではなかったこともあり、「肉を思いのまま食べられるところはどこだろう」と思いついたのがモンゴルでした。友人から「仁丹(口中清涼剤)を持っていけ」と助言され、大量の仁丹をリュックサックに詰めて旅立ったと言います。

 昭和初頭のモンゴルには薬が普及していなかったため、体の弱った人に仁丹をなめさせたところ、たちまち元気になり、各地域のゲル(モンゴルの遊牧民が使用する移動式住居)で神様のような待遇を受けたそうです。

 三角はそこで羊肉を存分に堪能していましたが、ある日、欧米人の旅人に仁丹をすべて奪われてしまい、仕方なく帰国したのでした。

東京にあるベジタリアン対応レストラン

 さて、三角寛とは逆の、野菜しか受け付けない体質、もしくは宗教や信条で、ベジタリアンを志向する人がいます。真っ先に思いつくのがインドの人たちです。

 ベジタリアンと言ってもそのカテゴリーは広く、乳製品や卵は食べる人もいれば、野菜や果物、穀物以外はまったく口にしないビーガンと呼ばれる人たちもいます。

 インド料理屋「ゴヴィンダス」(江戸川区船堀)の店主から聞いた話ですが、同じベジタリアンでも、少数のインド人は土に埋まっているものは食べないそうです。つまり玉ネギやニンニク、ジャガイモすら食べないという厳格さです。

江戸川区船堀にあるインド料理屋「ゴヴィンダス」(画像:(C)Google)

 インド料理は玉ネギやニンニクを主材料にカレーを作りますが、そんな彼らは主に豆カレーを主食にしているようです。かつて私がヒンズー教の聖地・北インドのベナレス(バラナシ)を訪れたとき、ほとんどの食堂は野菜系カレーばかりで苦労したのを思い出しました。

「ナタラジ銀座店」(中央区銀座)ではインド伝承医学のアーユルヴェーダに基づいたカレーを提供しています。大豆ミートカレーの先駆けの店として知られています。

 また近年話題の大豆ミートで言えば、カフェチェーン「ドトール」に全粒粉入りパンに大豆ミートハンバーグはさんだ「全粒粉サンド 大豆ミート ~和風トマトのソース~」があります。

地球環境か己の欲望か


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