今や予約は1年待ち 常識破りの「赤ちゃん顏人形」で業界を問う、元出版マン社長の苦悩と希望

人形問屋が軒を連ねる台東区・浅草橋。このエリアから南へ1kmほど行ったところに一風変わった人形店があります。商い未来研究所代表で、小売流通専門誌「商業界」元編集長の笹井清範さんが解説します。


「消費者への迎合ではなく、ニーズに応える」

 問題の根源には「伝統の呪縛」があると原さんは言います。7段飾りのひな人形に象徴されるように、節句人形を飾るには広いスペースが必要です。しかし従来の商品は、マンション住まいの核家族夫婦の家には大きすぎるサイズなのです。

 人形の顔はうりざね顔をもって良しとされ、そうしたものをつくれるのが腕の立つ職人とされてきました。しかし、そのデザインは今の子育て世代の好みにはほど遠いものです。

 大きさとデザイン、このふたつが顧客ニーズからかけ離れてしまっています。だから、いくら親からの贈り物でも「気に入らないからキャンセル」となるのでしょう。

 こうした需要減少の結果、さらには製造と販売が完全に分離した業界構造ゆえに、値引き販売競争が横行しました。価格は下がり続け、そのしわ寄せはつくり手である職人に及び、日本の伝統文化は危機的な状況にあります。

人形職人から受けとった人形を細やかに点検し、大切なわが子を送りだす気持ちで丁寧に仕上げる(画像:笹井清範)




 複雑な構造を持つことも、変化への対応を邪魔しました。節句人形業界は、人形の各パーツをつくる職人、組み立てる職人、それらを差配する卸、そして販売店という分業多層的な構造から成り立っています。顧客ニーズがつくり手に届きにくい構造なのです。

 毎年開かれる新作展示会で、販売業者が各パーツを買いつけ、組み合わせて商品にして販売します。それゆえ、消費者が「どの店も同じような人形」という印象を持つのです。結果、その選択基準は値段にならざるを得ません。

 そこで原さんは、消費者のニーズに沿うようなコンパクトな人形の企画を考案、「小さい人形は安物」というイメージが強いところを、「それならば“小さな高級品”をつくればいい」と周囲を説得して商品化に踏み切りました。その取り組みは徐々に軌道に乗り、全販売数の7割を占めるまでになりました。

 そこで次に、赤ちゃん顔の人形づくりを提案。けれども「品がない」と社内で強く反対され、ある職人からは「お客さまに迎合するのですか?」と言われたのを、原さんは今もはっきりと覚えているそうです。

「私は『迎合ではなく、お客さまのニーズに応えるためです』と答えたのですが、まったく聞き入れてもらえませんでした」

伝統を創造的に破壊、商品「1年待ち」の人気に


【地図】「ふらここ」の場所

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